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2003年08月06日(水) ■ |
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書きました。1 |
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『深淵より呼ぶもの』より…。
「助けてくれて、ありがとう。…あたしを助けてくれたんでしょ?」
HUcastは肯定も否定もせずに、それどころかあたしのことをろくに見もせずに、通路に目を戻してしまう。あたしはちょっとムッとした。絶体絶命の危機を救ってもらった相手にいきなりムッとするのもおかしな話だけれど、あんな風にあからさまに無視されてムッとしない人間なんているものだろうか。もしいたとしてもあたしにはそんな人の気持ちはわからない。
立ち上がる。足元にひたひたと波打つ海水を踏んで、HUcastに近づく。寝かされていたのはもちろん、水を被っていない部分。それくらいの気は遣ってくれたらしい、けれど。
あたしは間近でHUcastを見上げた。あたしの身長は彼の肩までもない。
「助けてくれて、ありがとう!」
イヤミなくらいの大声で言ってやったら、初めてあたしと視線を合わせた。
「あたしの名前は、Rizel。リゼって呼ばれてるわ。見ての通り、HUnewearl。ラボの依頼でプラントに来たの。下層部に降りたところで大量のモンスターに襲われて。その後はあなたの方がよく知ってるかも。助けてくれたんだもんね。ありがとう」
一気に畳みかけるように、言葉を投げる。
「それで、あなたは?」
勢いのままに問いかける。
あたしの早口につられて名前ぐらいはすんなり答えてくれるかと思ったのに、相手は無言のまま。アンドロイドには表情などないはずだけれど、どことなくその眼差しが呆れているような、軽蔑しているような。あたしはまた一段とムッとした。
「ちょっと、聞こえてるんでしょ? 返事くらいしてくれたっていいじゃない!」
知らず口調も尖ってしまう。
と、HUcastが大きな手のひらを上げてあたしの顔の前にかざした。黙れ、ということだろうか。あくまであたしと口をきく気はないということだろうか。それとも…、ふっと、冷静な思考が戻って来る。唐突に閃いた。
「もしかして…あなた、喋れないの?」
少しだけ声のトーンを落として訊いたあたしに、HUcastは…
「ワードセレクトを使って下さい>Rizel」 「ええッ…!?(衝撃)」
…ひろさんに言われたときからやってみたくって(遠い目を逸らしながら)。せっかくのシリアスな話を自らすすんでネタにしてる場合ではありません。
『ぐぅちゃん』(1)アップしました。全6回、毎日更新予定です。 …最初はほのぼのまったりなごみ系ストーリーを目指してたのに何故かどんどん黒く。あの赤いニュムのせいで黒く…。 HUcast皆勤賞記録順調更新中ですよ?
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