||〜*…clover…*〜||
There are all in one.
◆cloverに出てくる人々◇|*|◇エンピツ書きに48の質問◆
文字というものは非常に不安定で一面的である。 紙という一枚の白に、筆跡、言葉、行間という情報が散りばめられ、ただしそれ以上にそれを書いた人物の気持ちを知る由はない。 在る者は大切な人を思い 在る者は遠き日を思い 在る者はまだ見ぬ明日を願い 其々の思いを込めて、人々は、誰かに伝えるために文字を綴る。
そして、誰かに伝えるためのその文字を、誰かに伝えるために持ち主から宛名の主へ。
届けるのが、Flappers"ユウビンヤサン"――ぼくらの仕事です。
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郵便、というのは遥か昔から親しまれてきた伝達手段である。 というのも昔の話。
カカン暦、827年。 世の中は発達していた。
ロボットは往来を行き来し、新しいエネルギーが開発され、通信手段は安全安泰安心を売りとした機械が主流の新時代。 それでも、白い機械に染められた市街地を道路3本も離れてしまえば一昔前の柔らかな色合いを残した風景が未だ形を残している。 例えば、川の流れ。 例えば、風の香り。 街中の喧騒とは対照的な穏やかな風景。まだ日の昇りきらぬ川沿いを年端の行かぬ少女と、その親の親―あるいは更にその親―と思しき老女が朗らかに散歩している様子は自然にその中に溶け込んでいると彼女は思う。 少女が跳ねる。老女が声をかけ、少女が其れに答えて笑う。 その和やかな雰囲気は半分眠りかけた耳には子守唄よりも心地よく、ただでさえ半開きだった眼は更に細くなる。
(んー・・・ねむ・・・……ん?)
もはや眠りの淵に落ちかけた彼女の耳が何かを捕らえたのはその時だった。 此の雰囲気には5cmも似合いそうにないノイズが何か近づいて来る。 ような気がする。 耳が捉える周波数は徐々に強くなる独特の振動。 そう、これは。
「ど、どいてどいてどいてどいてええええええええええ!!!!」 (何かきたーーーー!?)
予測どおりフェードインしてきたのは奇声とも言うべき悲鳴で、しかし予想外にも彼女めがけて突っ込んできた悲鳴に、半開きだった目は通常の5割増に見開かれた。 むしろ眠気なんて吹っ飛んだ。 だが幸いにも悲鳴は土手に寝転がっていた彼女を直撃することはなく、耳先をかすめるとそのまま川に向かって転がっていく。 「おねがいだからとまってーーー!!!ぎゃー!!」
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