映画「リンダリンダリンダ」を観た。いやあ、若いっていいね。高校生の頃なんて恥ずかしいだけだし戻りたいとは全く思わないけど、いつまでも懐かしい。若気の至りもすべて含めて。
てめえが高校三年生の時。てめえの学校はとびっきりのアホ学校だった(今はさらに磨きがかかっている)にもかかわらず、三年生は「受験に差し障るから」という極めて下らない理由で文化祭は不参加だった。
正直な話、文化祭なんて下らないと思っていたのだが、上記の理由で参加しないというのには全く納得できなかった。そもそも受験する人数がどれだけいるっちゅうねんアホ校。だいたい、アホな学校こそそう言った余計な事をしたがる嫌いがあると思う。いわゆる進学校は、そういう行事も全力で楽しむよ。そういうアホ校の必死さはちょっと残念だし、自分の子供には同じ思いをさせたくないのでアホ校に入ってほしくないのはこれ本音。
同様の理由で修学旅行は1年生で行われたが、こちらもアホらしくててめえは参加せず、積み立てていた旅費が帰って来た母は「まあ好きにしなさい」と言いつつ少し喜んだ。もちろん母を喜ばすために不参加したわけでは決してない。修学旅行に参加しなかったのは、それがスキー旅行だったからということも関係していたが、それはまた別の話。
そんなわけで、てめえは文化祭に個人参加することになった。てめえの友人も同様の理由で個人参加した。彼は何人か友人を集めて自分で脚本を書き、たいそう面白い演劇を演じた。そんな彼は、その後そのメンバーで劇団を立ち上げたりとかその他いろいろあって今は売れない映画監督をしている。
てめえは他の人を集める才覚もなく、一人で参加することにした。簡単なオーディションもあったような気もするが、容易に通ったところを見ると形だけだったのだろう。
文化祭の当日。てめえはこの日のため(と言うのは嘘で、実はたまたま別の賭けに敗れて頭を丸めた笑)にきれいに髪を剃り上げ、愛用のK.Yairiのギターを持って学校に向かった。
それまではどちらかと言うと長髪で、長い髪を頭のてっぺんで結んで「パイナップルヘッド!」などと若気の至りでは済まないくらいのアホな事をしていたてめえが頭をつるんつるんに剃ったのを見てクラスメートたちはみな等しく驚いていたが、そんなことはどうでも良い。
三年生は文化祭に不参加ではあるが、なぜか登校して教室での待機となっていた。アホ校なので当然勉強しているものなど居らず、みんな退屈そうにマンガを読んだりしていた。どう見ても人生の無駄遣いだった。
クラスで一人だけ個人参加を決めたてめえにクラスメートは冷たかった。まあそんなこともどうでも良い。
実は「クラスで文化祭に参加しようや、内容は何でもいいやん。受験のために不参加ってアホすぎるやろ」という声をささやかながら上げてはみたのだが、さすがアホ校。今思うと単なるうざい奴だったのだろう、クラス会で散々罵倒された揚句、賛成2・反対45の圧倒的大差で否決された。ちなみにてめえ以外の賛成票が誰だったのかは知らないし、今後も知ることはないだろうと思う。
時間になり、てめえはステージに上った。どうせ誰も来ねえだろう、それもパンクロックらしくていいや、なんて思っていたのだが、実際はあり得ないくらいの観客がステージ前に集まっており、てめえの登場と共に一斉に歓声を上がった。
ステージ前に入りきらなかった高校生は渡り廊下にも溢れ、てめえがステージに上がった瞬間にたちまち渡り廊下にウエーブが生まれ、てめえの下の名前を呼ぶ黄色い歓声が上がった。これは本当に本当の話。学校では個性的過ぎたのか全く孤立していてクソ面白くなかったてめえの高校生活の最後に奇跡が起きたのだ。ちなみにその後奇跡が持続しなかったのはこれまた別の話。
ステージを始める前にふと空を見上げた。澄み渡った秋の空は、どこまでも青かった。
てめえは一呼吸して「A」のコードを押さえ、一気にギターの弦を弾いた。
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