解放区

2014年04月30日(水) 吃炒飯了?

今日はひどく疲れてしまった。

仕事で予想もしなかった事態が起こって後始末に追われ、気が付けばもうこんな時間だ。さすがにこんな時間になると自宅に帰ってから自分で料理する気力もない。

かと言ってコンビニで手頃な弁当を買う気にもならない。ちょっと前に、同じように疲れ切ったある日の出来事を思い出す。



あの日は今日よりも疲れていた。本当に精根尽き果てていた。ようやく仕事を終えて、その後どうやって職場から出てきたのかすら覚えていない。

気が付くと自宅近くのコンビニに居た。帰る道の途中にある飲食店に立ち寄って軽く食べて帰る、という選択肢すら思い浮かばなかった。そして、どうやってその自宅近くのコンビニまでたどり着いたのか全く覚えていない。

家に帰ったら、食べるものはないが飲むものはある。このまま飲んだくれるというのも悪くないが、肴も用意せずに空きっ腹にそのままアルコールを流し込むのはよくないだろうということくらいはさすがに理解していた。

コンビニの棚を一通り物色するが、いまいち食欲を刺激するものは見当たらない。冷え切った弁当はいくらチンしようが食欲を湧かせることはないだろうし、びろんびろんに伸び切った麺類を買う気もしない。

そんなことを考える余裕もないくらいに、徐々に意識も朦朧としてきた。疲れすぎたのだな。

そう、もう何も考えたくなかった。

とりあえず、何も考えずに適当に肴になりそうな缶詰をかごに放り込み、レジで会計を済ませた。後は帰ってから、一人この缶詰で今日の一日を乾杯しよう。そしてただ深く泥のように眠ろうと思った。


家に帰り、さっそく缶詰を開ける。ようやくやって来た至福の時だ。まずは家にあった缶ビールを開け、一人で空に向かって乾杯した。

ビールを一気に飲み干す。旨い! まるで砂漠に降る雨のように、乾ききった体に水分とアルコールが沁み渡る。至福の瞬間だ。

次いで缶詰を一口。さらなる至福の時が訪れるはずだった。そしててめえは旨いっ! と叫ぶはずだったが、あれ? 全く味がない。さっそくビールで舌が馬鹿になったか? 

恐る恐るもう一口。やっぱり全く味がない。どうした、てめえはあまりに疲れすぎているのか。

まあいいやと思い、味のない缶詰で晩酌をした。なんだか味気がなかったが、それ以上に食事ができているということに喜びを感じた。

そろそろ食べ終わる頃だった。てめえは初めて缶詰の表記に気が付いた。コンビニで出会ってから食べ終わるこの瞬間まで、全く気が付かなかった。

そう、缶詰にはしっかりと「犬用」と書かれていた。

(当然フィクションです、そして続く)


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