Sun Set Days
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2001年10月04日(木) 昨日の朝

 昨日、「眠気祭り」開催中だった僕はベッドに横になった(ちなみに午前1時)。
 すぐにでも眠れるよと意識のスイッチをオフにしようとした瞬間、「ああああ」と起き上がった。
 ひとつやらなければならないことを忘れていたのだ。
 すっかり忘れていた。

「うううう……」

 僕はベッドにうつぶせになったままもそもそと左手を伸ばして(左利きなので)、スチール製のナイトテーブルの上に置いてある蛍光灯のリモコンスイッチをオンにする。
 隣の部屋が明るくなる。

「おおおお……」

 とか思いながらベッドから起き上がってとぼとぼと隣の部屋に行く。
『千と千尋の神隠し』に出てくるカオナシみたいな歩き方で。
 ダイニングテーブルの上に置いてあった、落としたばかりのノートパソコンの電源を再び入れる。

 パソコンが立ち上がるまでの間に、冷蔵庫の中に入っている缶コーヒーを取り出した。
 立ったままリングプルを開けて、一口飲む。
 缶をテーブルの上に置いて、今度はコンポの電源を入れる。
 とりあえずコンポに入っていたCDのお気に入りの曲(12曲目)にする。

「ねむいよう」と心の中でだけ呟く。声には出さない。
 口にした言葉はある種の強力な力を持つと『千と千尋の神隠し』でもやっていたしね(←影響を受けやすい奴)。
 そして、忘れていたことを終えたときには時計は午前3時を示していて、今度は頭がさえて逆に眠れなくなっている。
「なんだそりゃ」と心の中で呟く。
 とりあえず全部の部屋の明かりを消す。
 それから、カーテンをめくって窓の外を見る。
 まだ暗い。
 僕の部屋からは月は見えなかったのだけれど、きっとまだほぼ満月なんだろうなと思う。
 ベランダには、エアコンの室外機が見える。
 顔を上げると、夜の空だけが見えている。
 ちょっとだけ迷ってから、カーテンを少しだけ開けたままにしておく。
 布団をかぶって、あおむけになって、少しだけ開けた空の方を見えるようにしておく。
 眠ろうと思ったら眠れないんだよなあとか考える。
 ま、しばらくしたら眠れるだろうとか思っていたら、気がつくといつの間にか眠ってしまっていた。


―――――――――

 昨日の朝には、午前5時に散歩していた。
 あんまりにも早い時間で、まだ周囲は暗かった。
 空の中ほどにはまだ満月がちゃんと見えている。
 中秋の名月ってやつだとか思って、しばらく立ち止まって眺めていた。

 それから部屋の近くにある国道を渡って、新興住宅地の方に向かって歩いていった。
 途中のコンビニを越えてしまうと、新しい家やマンションがふいにまばらになる。
 街灯もちゃんとあるし、区画整理だってされているのだけれど、家だけがまだ建てられていない。
 これからちゃんとした新興住宅地になっていくのだ。
 たぶん山を切り崩して宅地造成したんだろうなと思う。
 この街は首都圏への通勤圏だから、家もマンションもどこかしらで常に建築中なのだ。
 幾つかの緩やかな坂道がのびていて、その内のひとつには柵が置かれて通行止めになっている。

「関係者以外立ち入り禁止」

 という文字がプレートに書かれている。
 その坂道を上りきった方角が東側なので、遠くの空が明るくなり始めているのが見える。
 手に持っていたデジカメで坂道全体の写真を撮る。
 背景は淡いオレンジと薄い青。
 それから柵を乗り越えて坂道に入る。
(関係者はまだ出勤してきてないからへいきだ)と思いながら。
 坂道を上っていく。
 途中で振り返ると、明るくなり始めた空に随分と白くなった満月が浮かんでいる。
 面白いのでまた一枚撮る。
 坂道の続きを上る。
 上までのぼってから何枚か写真を撮って、またもときた坂道を下っていく。
 そうこうしているうちにも周囲はどんどん朝になっていって、淡い境目の時間は簡単に過ぎ去ってしまう。
 あれ? といつものように思う。
 気がつくと完全に朝になっている。
 いつの間にやら夜明けが過ぎていて、いつ朝になったのかだけがわからない。はたと我に返ると、すでに空気は柔らかで涼しげな朝のそれになっている。鳥の鳴き声が聞こえてくる。

 そのまま、ついでだと思って駅の近くまで歩いていった。
 線路の上を渡っている陸橋があって、その途中から線路を見る。
 何本もレールが走っている。JRと私鉄が走っている駅なので、線路は複雑な人間関係みたいに重なったり別れたりしている。
 遠くに山々の稜線が見えて、その向こう側にちょうど満月が消え去るところだった。
 さっきよりももっと白く、もっと薄くなっている満月。
 消える前に、と思ってやっぱり何度かシャッターを切った。

 そうして、部屋に帰ったときにはようやく6時になるくらいだった。
 カーテンを閉めたままの薄暗い部屋。
 帰る途中にはデジカメの入ったカバンのチャックをしめながら、「平日の朝に朝焼けを撮りに行くのってあやしいよなー」と思っていた。
 ほとんどすれ違う人もいない朝の道なんだけれど、そう思っているせいかシャッターを押すたびになんとなく気恥ずかしくなってしまうのだ。
 それでも、
 たまにそういうことをするのはたのしい、
 と思うのも事実だったりして。

 ということで、今日からのTop写真は3日の早朝に撮ったものなのです。
 造成中の新興住宅地の朝の写真なのです。


―――――――――

 お知らせ

 昨晩ものすごく眠たかったのは、朝が早過ぎたからです。


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