Sun Set Days
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2002年01月10日(木) ルール

 以下は、10日付けの「日経MJ」に掲載されていたコラムの一部分。


 東京ディズニーリゾートではルール的原則をマニュアル化しており、その一つに大人にはお子様ランチを出さないという決まりがある。ある時、一組のご夫婦が自分たちの注文のほかに、子供が居ないのにお子様ランチを注文した。そこでキャスト(従業員)はお子様ランチがなぜ必要なのか、理由を尋ねる。そのご夫婦は子供とディズニーランドに行く約束をしたが、交通事故で亡くなってしまう。約束が果たせなかったことを二人は悔やみ、来園して陰膳(かげぜん)として注文したことがわかる。これを聞いてキャストはためらうことなくお子様ランチを用意した。


 これは、顧客のためになることなら、ルールを変更する権限を現場に与えている事例として紹介されていたエピソードで、お涙頂戴的な話と言われてしまうむきもあるかもしれない。けれども、記憶にある限り新聞記事を読んで泣きそうになってしまったのは3回目で、混雑する朝の電車の中で、少しだけ困ってしまった。

「事実は小説よりも奇なり」という言葉があるけれど、それは本当にその通りだと思う。たとえば、このエピソードもO・ヘンリやカーヴァ―、あるいは浅田次郎の短編ではなく、現実に起こったことなのだ。現実の夫婦がお子様ランチを頼み、現実のキャストが注文を承った。そこには事実の持つ圧倒的な力のようなものがある。
 もちろん、僕は物語や想像力の持つ力を個人的には信じているけれど、事実はときにどうしようもないくらいの真摯さと奇矯さとで、生々しい姿を現してくるときがあるとも思う。そしてその事実は、ときに物語が遠く及ばないような大きな力を持っている。こういう話を見聞きしたときにはより強くそんなふうに思う。

 
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 お知らせ

『アメリ』の上映劇場数が、現在の11から、5月までに70程度に増えるそうです(フランスでは、全人口の14%にあたる800万人強の観客を動員)。
 首都圏では、いくつかのシネコンでも見ることができるようになるそうです。
 それはたのしみ。


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