Sun Set Days
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2004年03月01日(月) 冬の散歩

 今日の関東地方はとても寒くて、ここ数日の暖かさを吹き飛ばしてしまうような冷たい一日だった。朝方から断続的に降っていた雨も、昼過ぎにはみぞれのような雪に変わっていた。午後遅くに会社に寄ったときにも、寒い寒いと、いろいろな人が言っていた。

 今日は休日でちょっと用事があって出かけていた。何度か訪れたことのある駅から、初めて乗る電車に乗ってきた。窓からはたくさんの団地と(横浜は本当に団地が多い)、薄い緑と濃い茶色に沈む公園が見えていた。高架を走る電車の窓からはずっとみぞれが見えていて、やけに空間の広い空に、たくさんの雪はまるで冬が終わる前の最後の挨拶をしているみたいに見えた。

 用事が済んだ後(用事は思いのほか早くに終わってしまった)、せっかくだからと大きな公園を少し散歩した。もちろん結構(というか正直に言うとかなり)寒かったのだけれど、それでもてくてくと。小さな池があって、その水は壊れてしまった鏡の表面みたいに、随分と暗くくすんでいた。木々は寒さにうつむくように風にしなり、公園の横を走る道路の車は、スリップしないように慎重に速度を落としていた。

 肩からななめがけしているバックにデジタルカメラを入れていたので写真を撮ろうと思って取り出したら、なんとメモリースティックを入れ忘れていた。電源を入れて、「メモリースティックがありません」の文字が液晶ディスプレイに浮かぶ。あららと思った。関東で雪が降ることなんて珍しいのに。みぞれの中の人気のない閑散とした公園なんていい感じなのに。写真を撮ることができないなんて。
 でもまあいいかと、すぐに思い直す。あんまり執着心がないのももちろんちょっと考えものではあるのだけれど、それでもただの散歩をしていればいいだけのことだしと思ったのだ。

 そして、歩いているうちに調子が出てしまい、帰りは最初に降りた駅の隣の駅まで歩いた。

 隣の駅までの道は全然人気がなくて、なんだか間違った世界に出てしまったみたいだった。何もかも変わらないのに、ただ誰もいない世界。
 ちょうど歩きながら聴いていた柴咲コウの声も、そんな日常が少しだけずれてしまった世界にぴったりのような感じだったし。

 そして本当に誰ともすれ違わないまま隣の駅に着く。
 高架になっているので駅は歩道から階段をのぼっていかなければならないのだけれど、その階段の下にはたくさんの自転車が並んで停められていた。同じ方向に、ときどき倒れて停められているたくさんの自転車は、数時間もして夕方や夜になるとそのほとんどがなくなってしまう。そんなふうに思うと、飼い主を待っている忠実な犬みたいだとなんとなく思った。たとえば目を凝らしてみると、様々な種類の、主人を待っている犬がちゃんとおすわりをしているように見えないだろうか。
 変なことを考えてバカみたいだと思いながら、駅への階段を上る。ほとんど人気のない切符売り場で切符を購入して、自動改札機を抜ける。また階段を上って短いホームに出ると、僕のほかには2人しかいなかった。距離のわりに切符が高いけれど、それはやっぱり利用者が少ないからなのかもしれない。
 事故防止のためなのか、ホームはガラスの壁で覆われていた。電車がとまるところは自動ドアになっていて、電車が横付けされてはじめて扉が開く仕組みになっている。ゆりかもめや新しい地下鉄なんかでも使われているタイプのものだ。頭上の電光掲示板は電車がどの駅を出たのかを示していて、隣の駅を発車してこちらへ向かっていることがわかる。

 平日の午後1時少し過ぎ。
 窓の外はみぞれ。
 世界は広くて、いつだって斜めに傾いて少しだけ揺れている。
 そんなふうに錯覚してしまうには、ぴったりの月曜日の午後だった。


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 お知らせ

 サッカーアテネ五輪予選日本対バーレーンをずっとテレビで見ていました。
 残念……。


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