突然だが週末には24歳になる。
世間の風当たりに対して受け流すか苛立つかは、つまりモヒかマサキかの違いらしい。 その点から言えば僕はキリンなのだろうと思う。
セイバーが憧れるようなライオンでもなく。 象のように何者も寄せつけぬ体があるわけでもなく。 バッファローのように突進できるわけでもなく。 ガゼルのように逃げ足があるわけでもなく。 ましてチーターのように一瞬のきらめきがあるわけでもなく。 そしてウサギのようにひたすらに弱いわけでもなく。 つまりはただ首が長いだけのキリンなのだ。
キリンは泣かない。 ライオンの気まぐれにわが子が食い殺されようとも。 ただ遠巻きにじっとそれを見つめることしか出来なくとも。
そして、キリンは見ているのだ。 ホリゾンタルグレイズを。 歩みは遅く、理不尽な力に食い殺されるかもしれない。 それでも首の長いキリンには地平線を走る銀馬が見える。
乗り手には天才がいる。 10年かけて速くなった奴もいるが、乗り始めていきなり速い奴もいる。 マサキはそう言った。 ならば、キリンの歳になるまでには。 それが10年か20年かはわからないが。 鼻で笑われ。 軽くあしらわれ。 だが、見失いたくない。 ホリゾンタルグレイズを見失いたくない。
それを見失った瞬間、僕は行き先をなくす。 それを見失った場所が終着地点になる。 そう、これはスタイルだ。 常に地平線を追い続ける男でありたい。 そうなるように仕向けてきたはずだ。 それに手が届く機会があれば迷わず走り出せるように。 それが出来るように仕向けてきた。 それは僕の矜持だ。 そのスタイルを貫いてきたはずだ。 キリンのようにありたい。
ニンジャの次に後方排気を選んだの正解だと思える。 僕はまた速くなったと思う。 僕はまだ速くなれる。 地平線を追うための、その再出発に相応しいマシンを手に入れたことを喜びたい。
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