自分がこんなにも弱い人間だったのかと改めて、しかし圧倒的されるほどに感じている。 泣くか逃げるかしたい気分だが、まだこの場所に踏みとどまるだけの理由があるので留まっているのだが。
日ごと心が削られていくような気がする毎日だ。 一年前、僕はあんなにも期待に胸を膨らませて再びこの地に根を下ろそうとしたはずなのに。 ただ面白おかしく日々が過ぎていっただけにすぎないのか? 僕はただこの一年を遊んで過ごしただけで、だから今になってそのツケを払わされていて、手に入れたと思った様々を生きていくために手放していかなくちゃならないのか。
自分が一人では頑張れない人間なのだと、25年生きてきてようやく実感したのだろうか。
そして、僕はまた逃げ出すのだろうか? 真っ直ぐに自分の「好き」と向き合うことから逃げ出した高校時代。 工学部志望だったのに血迷って難関大の心理学系を目指し、けれど死に物狂いで受験勉強をするわけでもなく、逃げ道のような楽な道を探し出して逃げだ。 大学の勉強もろくにせずに院へ行きたいと言いながら、結局は何もせずに「趣味を仕事に」といって逃げた。
ゲームを作るんだと逃げた先でも、「金がないと生活も出来ない」と言い訳して実家へ逃げた。 バイトが楽しかったから、「仕事が忙しい」と書くことからも逃げて、最後にはバイトからも逃げて、受け入れてくれる場所へと、転々と。
つまり、このままいけば僕は再びどこかへ逃げなければならないわけだ。 たぶん今度の理由も「金」だろう。 一人暮らしのフリーターではほとんど貯まらないから、就職するにしてもまずは実家へ帰って金を貯める、と言って逃げるのだろう。
自分が望む環境が手に入らないから。 まるで子供のように駄々をこねて、散々迷惑をかけて掻き回して、居づらくなったら逃げ出して。
初めて生死の境に立ったとき、僕は「勝つために戦うこと」を放棄して逃げ出すことを選択した。 それでも生きていけることを知った。 逃げれば死なずにすむ。 そんな卑怯な生き方でも、ある程度は楽しく生きられる。 そう思っていた。 だって、他人に執着する事なんて一度もなかったから。
あの頃の僕なら迷わず実家で金を貯めて東京を目指しただろうに。 もちろん、このセリフも言い訳なのだ。 何もしない自分を正当化するための言い訳なのだ。
彼女のためなら何があっても耐えられると思っていた。 彼女のためならどんな我が侭も平気な顔で受け止められると思っていた。 そんな僕の決心は張子の虎でしかなく、ほんの少し優しくされただけで、ほんの少し許されただけで、あっと言う間に崩れ去って、意地汚い本性が隠すことも出来ないくらいにでしゃばってきたのだ。
ああ、もう我慢できない。 そのこらえ性のなさは、いままで沢山のものを壊してきたはずなのに、こいつは何一つ学習なんてしやしない。 やっぱ死んだほうがいいんじゃないのかと、ときどき本当に思う。 ふらりとあの時の感触が蘇るが、たぶん今ならもっと簡単に、そして苦しまずに逝ける方法はいくらでも考えられるだろう。
ほしい。 ほしい、何もかもほしい。 すべてをうめつくしたい。 ただ幸せにくるまれて穏やかな笑顔でいつまでもいつまでも眠っていたい。
でも、それを壊したのはお前じゃないか。 ならば報いはお前が受けろ。
誰にも迷惑をかけずに生きられたら。 それは不可能かもしれないけれど、ならばせめてひっそりと、少しは遠慮しながら生きていきたいと思ったのに。
僕は居るだけで迷惑を生み出す。 それならなるべく誰とも関わらないように生きていけばいいのだけど、僕ほどの寂しがり屋が独りで生きていけるはずがない。 それならどうする? つまり、僕が居なくなればいいのだ。
僕が居ることで発生する迷惑と、僕が居なくなることで発生する迷惑。 前者が後者を凌駕したとき、つまり僕が本当に死ぬべき時が訪れる。
こんな僕でもいいのだと、彼女のためなら変われるかもしれないと、そう思ったのだけど、そんな想いもいつの間にか何かに汚らしく塗り替えられていて、どんな色になってしまったのか自分でもわからない。
とにかく今は毎日が灰色で何をしたらいいのかわからないし、何もする気が起きずに、ただ目の前の道がどうやらどこにも繋がっていないらしいという感触に怯えるだけの日々なのだ。
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