闇の底に...Cuckoo

 

 

ほんの少しでも愛というものが見えたなら - 2004年02月19日(木)

遠い記憶が舞い降りて
そっと肌を撫でるように包む
それはまるで幻想のように
なぜだか美しくそして哀しい
記憶とは 人の中にある人生の記録
時々それは書き換えられて
重要な部分と残したい部分だけになっていく
約束は覚えているだろうか
それはアタシの中で重要な記憶として記録されている
けれどきっと
彼の中では削除の対象
そう
遠い昔の記録は色あせていく


ある日アタシは言った
『歴史に残る地震が来たら
 無事かどうか 絶対知らせて』と。

大きな地震が心配される地に彼はいる
何年も前から危惧されているその地震は
人々の周到な用意と恐怖とは裏腹に
いまだやってくる事は無い
避難場所や道具 待ち合わせ場所
いつか来るであろう地獄にアタシは
一つの用意をしていた
必ず無事だという確認の電話を入れること。
このたった一つの用意には
アタシの精一杯の愛情が含まれていた
わかったわかった
そう笑いながら言う彼に心配した
それはアタシ達のずっと先の約束だった。

地震を感じるとすぐテレビをつけた
キミの街で何かが起こっていないか
それだけを心配する
あれから二年
アタシは変わらずテレビをつける癖がある。

あの人は今どこで何をしているのだろうか

愛されたかった
だけど全てを語れなかった
怖かった
拒絶されるのが何より怖かった
いつもそうだ
だから結局アタシから離れていったんだろう
それでもキミを探す心がある
あの人がくれなかった『愛』を全力で示される
アタシと同じで貪欲に愛を求める彼氏
そんな彼氏をいとおしいと思いながらアタシは
そっと過去の記憶を引き出す
まだ時々携帯を眺めては
あの人にメールを送ろうとして止める
携帯のアドレス帳を開いては
発信出来ないで消す
これはきっとただの癖

もしあの人がアタシに愛を示してくれたら
アタシを求めてくれたら
アタシを抱きしめてくれたら
愛の言葉を囁いてくれたら

そんな事を考えるのはよそう


あの人の横で笑うコトは
もう無いのだと自覚しながら
そっと記憶を引き出す
財布の中には小さなリング
誰にも知られる事の無い
哀しいリングが隠れている


口に出しちゃいけないことがある。




                 水鳥。


...




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