【読書記録】鷺沢萠「F―落第生―」

ストーリー:7編の短編からなるお話。特に圧倒された「重たい色のコートを脱いで」をご紹介。
編集という仕事に魅力を感じた聡美は一流大学を優秀な成績で卒業し、「月間ヤングマン」という雑誌の編集をする今がある。大学卒業後から彼女が落ちてしまった穴。その中で彼女が体験したことは、想像以上の事だったけれど今がなければわからなかったやりがえ。

読みたいなと思っていた本。興味はあるけれど、以前躓いてから鷺沢さんの著書に手が伸びずにいたのですが、いい機会なので手を伸ばしてみました。
上でも書いたように、重たい色の〜は本当に圧巻。仕事に燃える努力家の女性で、ドラマにもなったとある漫画を連想するようなプライベートの忙殺振り、そしてそのときの彼女の対応に唖然としました。何でそこまでがんばってしまえるのか、私には出来ないな…と彼女のあまりにも完全無欠な根性に、キャラクターの強さを感じずにはいられないと思います。完璧すぎる内容なのに、どこかで何かが不意にかけていることに気がつき、そんなはっとするようなストーリーに思わず唸る。その繰り返し。
この作品の主人公たちは、みんなどこかでかけていて、だけどそんな主人公たちががとても人間味があって心地よいと感じるのです。展開もヴァラエティに富んでいて、鷺沢さんはいろいろなタイプの小説が書ける方だったのだろうなぁと思います。鷺沢さんが年をとったときの文章も読みたかったなぁと、今はただただそう思います。
NO.003■p195/角川書店/96/07
2008年02月23日(土)

ワタシイロ / 清崎
エンピツユニオン