【読書記録】浅倉卓弥「雪の夜話」 |
ストーリー:テスト勉強のため、深夜まで勉強していた僕はタバコを買いに行くために、ある雪の夜家を抜け出した。一服ついた僕は、ふと公園で少女の姿を目にする。――こんな夜中に、しかもこの大雪の中で何をしてるんだ?近づいていった僕に、少女は驚きと素敵な笑顔を浮かべた。
寒冷地方に住んでいた高校生の僕が、深夜の大雪の中で年端もさほど変わらない少女が雪と戯れているのを見つける。そんなシーンからお話は始まります。浅倉さんのお話は、ゆっくりゆっくり噛んで形がなくなってきた頃に飲み込むようなタイプだと思っているのですが、まさにそんな感じのお話だったと思います。ただ逆に言えば、私は途中で方向性がわからなくなって、何が主軸として語られるべきなのかなと感じたり、人間ドラマのほうが面白いんじゃないかと思ったりも…。しかしながら浅倉さんの描き出す空気感が好きです。文章からはとても丁寧でととのった印象を受けますし、このぴっちりした感じが好きだなぁ。ただ、言い回しで同じ表現が繰り返し使われていたりして、たまにもうちょっと工夫できるんじゃないかなぁなどと感じたりも。空気を壊さずに、言いたいことを伝えるための、雰囲気があるからこその難しさなのだと思います。
僕が高校生のままお話が展開するのかと思いきや、大学生になり、社会人へと成長していろいろな経験をしたというくだりが面白くて、そっちの方面での小説を読んでみたいなと思いました。また、主人公の僕はデザインを職業として扱っているので、そのアイディアの面白さなども光っていたと思います。この依頼にどうこたえてくるのか、それはとても見ていて面白かった。NO.70■p297/中央公論新社/05/01
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2008年11月29日(土)
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