夕暮塔...夕暮

 

 

リターン - 2002年02月21日(木)

ターミナル駅構内の飲食店街、私がいつも1人で月曜の朝食を摂る喫茶店で、同僚が鞄を置き引きされた。勤務後に別の同僚と立ち寄った際、座席に鞄を置いたままカウンターで注文を済ませて帰ってきてみると、バッグが自分の分だけ無くなっていたらしい。財布や携帯、定期入れなど重要度の高いものはすべてポケットに入っていたのが不幸中の幸いだったものの、やはりショックは大きい。「あの店、しばらく行けない…行きたくない」 彼女は俯き気味に呟く。バッグは何故か飲食店街にある別の喫茶店で発見されて、手帳にはさまっていた保健証の電話番号を頼りに、店から忘れ物として連絡が来た。一緒に帰る途中、乗り換えの改札口で立ち止まる。「これから取りに寄るから、先に帰っていいよ」「すぐそこでしょう? ついて行きます」 
入っていた物は何もなくなっておらず、諦めていた新しいカメラもそのまま入っている。不安からか彼女は何度も中を確認する。無理もない、最悪のケースを考えれば、この業界で永遠に仕事を失うだけでなく、特定の他者に恐ろしい迷惑をかけかねなかった。「自分のことなんかより、そっちが余程恐ろしいよ…」誰にも見られてはいけない手帳。悪用されれば社会的な問題になるほどの。
「……よかった、本当に」
流行の形、赤い革の洒落たバッグは全体的にくったりと疲れてしまったように見える。手放してからほんの数日なのにと彼女は呟き、溜息をついてホームへの階段を下る。


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