日々是迷々之記
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いつも通りリハビリメニューをこなして、ダンナさんと待ち合わせることにした。待ち合わせは病院のある駅より2駅先、リハビリが終わった丁度1時間半後に待ち合わせだったので、歩いて行くことに。
日差しはだいぶ弱まったけれども、やはり気温が高い。歩く方角の関係で、背中がじわじわと照らされて、汗が流れてくる。日陰を求めて、のんびり歩く。
普段も見ていたんだろうけど、気づいていなかった物が目に入ってくる。たわわに実ったイチジクの木、そして大ぶりの芙蓉の花が影を落とす。国道はトラックや自動車が我先と疾走して行く。ほんの少し、速度を落とすだけで、見える物は変わるのだ。
杖で歩き出した頃の事をふと思い出す。普通なら行って帰って7分ほどのパン屋さん。杖をつき、歩いて行くとそうは行かない。信号は青になったとたんに歩き出さないと渡りきれなく怖い思いをした。パン屋さんではトレーとトングが持てないので、口で言って店員さんにお願いして取ってもらう。周りとの関わり方が変わってくるのだ。
いわゆる体の不自由な人に対してどれだけ余裕を持って接することができるか?そこにその人の資質みたいなものが見え隠れする。あからさまに動揺している人、子供に言うみたいに過剰に世話する人、「かわいそう」と言っておけばいい人になれると思っている人。もちろん普通に接する人もいる。
違う速度で歩いている人には、自分には見えない物が見えていることを知らずにいる。きっとそれはつまらないことだ。 イチジクの実が熟す頃、またその道を歩こうと思う。
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