日々是迷々之記
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2005年10月10日(月) 国勢調査について考えてみた

玄関の呼び鈴が鳴る。うちに来るのは通信販売の配送屋さんか、物売りのどっちかで、通信販売の場合は来ることが予想されている。ので、予期せぬ呼び鈴には基本的に憮然と答えることになる。

国勢調査の回収であった。来たか…と思った。先日用紙を配布されたがまだ書いていない。家に鉛筆が見あたらない、という理由もあるのだけれど、私はこれに納得できないからだ。

総務省統計局のこのサイトでおおよそ突っ込まれそうなところはQ&Aで回答されている。虚偽の申告、申告の拒否は「六ヶ月以内の懲役または禁固、もしくは10万円以下の罰金」だそうな。で、最近注目の個人情報保護法は適用されないらしい。

今日回収しにきた人にまだ書けていない旨を伝えると、明日また回収しにくるという。なんならマンションの管理人に預けてもかまわないという。

この日記を続けて読んで頂いてる方ならわかると思うが、うちのマンションの管理人はかなりファッキン・クレージーなおっさんでとてもそんな大切なもの(私にとっては)を託せるタイプの人間ではない。そこで、インターネットでいろいろ調べてみたというわけだ。

結果、この国勢調査員(回収に来た人)の言ったことは正しかった。マンションの管理人には守秘義務があるので、調査票を託すに値するということである。ついでにこの守秘義務違反は「一年以下の懲役、もしくは10万円以下の罰金」が課せられるわけである。

この国勢調査は個人情報として見た場合、かなり価値があると思う。実際に「国勢調査」でグーグル検索してみると、右側の「スポンサー」部分に、「
無料で国勢調査閲覧。豊富な地域・経済動向データを用意。」とキャッチコピーの添えられた広告が表示される。すでに公表されたデータを元に加工して閲覧性をアップさせたものが商業ベースに乗っているのだ。(もちろん総務省の発表したデータだけなのだが。)

氏名、家族構成、生年月日、勤務先、電話番号、家の平米数、あとメールアドレスがあれば名簿のデータとしての価値は高いと思う。うちのマンションの場合、約500世帯が住んでいる。1世帯3人として1500人分の個人情報。それをエクセルに全部入力して、年齢別、性別などで整理し、名簿化すればどれだけのお金を生むことになるだろう。悪意さえあれば…。ナンボ漏洩させても罰金の上限は10万円なんだからたまらない。

この罰則を定めた統計法は昭和22年に制定されたようだ。60年前と今とでは10万円の価値は全然違う。嘘を言っても10万円、漏洩させても10万円なら罰則は無きに等しいのではないだろうか。私なら、「虚偽の申告」もしくは「申告の拒否」をして10万円の罰金を払う方を選ぶ。

そもそも国勢調査は「国内の人口や世帯の実態を明らかにするため」に行われるようだ。それならうちの母親のような病院で寝たきりの老人だとか、公園にテントを張って暮らしているホームレスのおっさんらだとか、放浪中の旅人だとかはどうやってカウントするのだろう。この時点で統計としての精度は低くなってしまうのではないだろうか。

住民票を数えればいいのではないかとも思うが、転居しても住民票を動かさない人がいるので、それでは正確な統計ではないというのが国勢調査を行う理由の一つらしい。そもそも、転居しても住民票を動かさなくても別に何の不都合もないようなシステムが破綻しているし、そもそもカナダなど住民票や戸籍自体がない国もある。

こんなローテクな国勢調査に調査員(非常勤の公務員扱いなので、公僕=税金で養っている)を雇うくらいなら、諸外国に学ぶ方が賢いのではないだろうか。多分カナダではソーシャルセキュリティナンバー(社会保険番号)でそのへんを管理していると思う。

というわけでわたしの結論はテキトーに書くことである。名前なんか一郎でも花子でもジェニファーでも何でもかまわないわけで。ただ、国としての年齢の構成比なんかは正確なところが分かった方がいいのは当たり前なので、生年、月は正確に書く。そして「調査書類整理用封筒」という封筒をもらって封をしてから渡そうと思う。前出のサイトでは全世帯に配られるものらしいが、うちはもらっていないのでもらわないといけないが。白紙で提出しないのは調査員と玄関先でもめるのが嫌だからである。

「赤信号みんなで渡れば怖くない。」ではないが、椎名誠さんの自伝的小説にも国勢調査を適当に書くくだりが堂々と綴られていた。当時、仲間うちでアパートの一室に住んでいた椎名さんたち4人組が、「おまえはいちばんしっかりしているから父親だな。」などと言いつつ、お父さん、お母さん、子供二人の適当な構成にしてガハハと笑っているのである。(「哀愁の町に霧が降るのだ。」に書いてあったと思う。)

ライフスタイル、個人の意識の多様化についていけてへんなぁというのが素朴な感想である。ついていけてないから大正9年からずっと続けているのだろう。大正9年て、アンタ…。どんだけ昔やねん!


nao-zo |MAIL

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