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おとなの隠れ家/日記
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2007年02月14日(水)
抱きしめてほしい。 【Love Story for Valentine's Day】



なにかと笑いに話を持っていってしまうクセは
好きな人の前でも同じだった。
照れや緊張感が真奈をそう仕向けているわけなんだが

「真奈ちゃんて面白いね」

なんて言われると

「ああ、またやっちゃったわ」

と遅まきながら気づく。
そこでブレーキをかけりゃいいものを
エッチな話となると、あけすけに語ってしまうのもまた
真奈のわるいクセとも言える。


「どうしてか、そうなっちゃうわけよ」

「そんなじゃ男も引くわな」

女同士での恋愛談義になるといつも
女性らしさや可愛げってもんが足りないと回りからお叱りを受ける真奈。

「だいたいさー いい歳して恋愛下手くそだよ」

「そうそう、真奈って行動力はあるけど、気持ちついていってないんじゃ?」

「そんなことないわよ。 気持ち無しで動けるわけないじゃない」

「そうかねぇ。 ならさ、好き♪ とかくちに出来る?」

「・・・・・」

「ほらー、そういうところがオンナとして足りない部分なわけよ」

「オンナは惚れさせてナンボなのよ」

「そんなじゃ、1回やったらポイね」


ポイするのかされるのかは、さておき
実際のところ、好き♪なんてもうずいぶんくちにしていない真奈。
友人の突っ込みに言葉が返せない。

「駆け引きもできないようじゃ、おこちゃまね」

オー マイ!
真奈にとって不利な展開が続く。


「で、最近はどうなのよ。 好きな人いるの?」

「うーん 気になる人なら」

「まあ! 誰、誰?」

「教えろー」

「えとね、林田さん」

「わお、そうきたか」

「彼はおとなーな感じだよね」

「あれ、真奈、林田さんとは何度か飲みに行ったりしてない?」

「うん、会社帰りに2回ほど」

「手ごたえは?」

「わかんないよー そんなの」

「真奈には、わかんないかもねぇ。飲み始めたら、どうせいつものように・・・・」


友人が言ったことは当たっていた。
飲んで、世間話して、エロ談義少々・・・
二人とも酔ってそこでバイバイというパターン。

「飲んで盛り上がってばかりいないでさ、甘えてみなさいよ」

「酔っちゃったみたい なーんて可愛く」

「なるほど」

「なるほどじゃないわよ、いまさら」



数日後。

「よ、真奈ちゃん 今帰り?」

「あ、林田さん こんばんは。うん 帰るところ」

「そうか、じゃ一杯いく? っていいたいところだけど、まだ仕事残っててさ」

「相変わらず忙しそうだね」

「あはは、まあね。 明日はどう?」

「うん いいよ」


嬉しいお誘いだ。
そういや明日ってバレンタイン・ディじゃない! きゃほっ
よし、オンナらしく可愛らしくの線でがんばるべ♪


********


「なんか今日はいつもよりおとなしいよね」

「え?」

「体調でもわるい? お酒もあまりすすんでいないようだし」

「いやいや、そんなことないよ。 今夜はオンナらしくしてようかと」

それを聞いた林田が笑った。

「そんなこと考えるなんて、らしくないなぁ。 まあ飲めよ、ほら」

らしくない? ふむ、確かに自分でもぎこちない。
というか、どうしていいのかわからない心地わるさがあった。
注がれたワインをひとくち飲んで真奈が言った。

「だよね、うんうん そだ。 わたしのキャラには合ってない、やーめたっと」

おいおい、そんなに簡単でいいのか?
と、思わなくもない真奈だったが
いつものようにはしゃいでいる真奈をみる林田も楽しそうにしているし
これでいいんだろうと。
本当のことを言えば、真奈はその林田の優しげな笑顔にとろけそうだった。

(ぎゅっと抱きしめられたら・・・・・)
(抱きしめて、なんて言えないしなぁ)
(もしかしてココが甘えてみるポイントなのか?)
(んー だめだ。 わたしには無理無理無理)



店を出て、駅に向かい並んで歩いた。

「今夜も飲んだなぁ」

「うん、またしても」

「楽しかったよ、また飲もうな」

「うん、だね、また」

「じゃあ、ここで」

立ち止まった林田の両腕は真奈をすっぽり包んだ。

「おやすみ」

林田の声が頭のてっぺんから真奈の体中に伝わった。
背中に広がる暖かさと
息が止まるかと思われるほどの胸の熱さを5秒ほど感じたあと
ようやく真奈のくちびるが動いた。

「お、おやすみ」

林田の腕から力が緩み、真奈の背中をポンポンと2度軽く叩いて
林田は向きを変えて歩いていった。
真奈はしばらくその後姿を眺めたあと、振り返り逆の方向に歩きだした。
すれ違う人が目をとめるほどの満面の笑みを浮かべながら。




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バレンタイン・ディに「とろりん日記」をと思ったけれど
今回は路線を変えてみました。 笑