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所詮はそんなモンなんだ。
ひとつのものをずっと大事に出来ないでいる僕は、 いつだって、それを手放すか失くしてしまうんだ。
ひとつの所にジッとしていられるなら、その場所を教えて欲しい。 いつか帰る場所が、どこか別の場所になる前に。
僕は、もう一度大きく息を吐いた。
「お前がどれだけのものになれるって言うんだ。」
そう耳の奥で木霊する声は、かつて父親に言われた台詞だった。 だけど、今は自問の言葉だ。
どれだけのものに?
そんなの、僕にも判らない。
ただ、ひたすらに求めているものが在って。 無言の内に、仮面の下に隠した声が今も尚、叫んでいる。
強くなりたい。
素直な気持ちを晒せる場所が、 この世の何処かにいる他人の心にあるのなら、必ず見つけ出したい。 その人に出会うまでの旅に耐えられる、強さが欲しい。 その人を護れるくらいの、強さが欲しい。
でも、その前に、僕にはやらなくてはいけないことがある。
ドアの向こうに聞こえる呼びかけやノックに安易に答えられなくなった僕は、自身で何かの病気だろう、と判決を下してしまった。
その日から動けないでいる。
鉛のように沈んだ足を動かせずにいて、 毒だらけの世界に出ることを拒み始めたのだ。
それでも間もない頃は、他者に想いを寄せた事もある。
だけれど、ずっと一緒にいたい、とは思えずにいる。
ただ、想うだけでいい。 僕が関わる事で、その人の持っていたものが崩れるのは嫌だ。
事物が変わっていくことは、嫌いじゃあない。 むしろ歓迎すべき事であって、そこから生まれる新しい発見は、 時として自分にとって貴重なものになる。
だけど。
変わるべきではなかったものまで、 いびつに歪んで行く様はもう見たくない。
僕が関わった事で、そうなってしまうのなら。
変わる事や別れる事を嫌って、出会いを避けるなんてナンセンスだ。
そう、過去の誰かが言っていたのを思い出す。
ループだ。
僕が一歩も踏み出せずにいる、その根底に対して。 そして、進みだそうとする僕に対して。
過去の様々な声が響く。
生意気な餓鬼でも、許してくれ、今はまだ。 何にも判っちゃいないんだと、いつだって気付く。 何も判っちゃいないんじゃないかと、いつだって再思考する。
でも、これだけは判ってるから。
僕が此処に立てているのは、一人だけの力じゃないってコト。
僕を生み、育ててくれた人。 愛してくれた人。 教え導いてくれた人。 支えてくれた人。 心を許してくれた人。
まだ、先に伸びる道は何処へ続いているのかも判らないけど。
ひとつでもいい。
どうかいつまでも、と本気で願えるものがあればいいんだ。
伏せがちな瞳が揺れて、僕と同じコトを叫ぶヒトよ。
強くなりたい。
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あひい。 近々また更新してえべさー!! 学校始まっちゃうヨー。笑
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