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雄でもなく雌でもなく
そんな存在に 生まれたかった そんな存在に 生まれればよかった
きみを救いたくて でも その術がわからなかった
ただ 話を聞いてあげるだけで ただ 傍にいるだけで
きみが少しでも楽になるって言うのなら
きっと 迷いなく そうするんだろうな
それは ただ 単純に きみの事が好きだから
でも この胸には 不穏な風が水面を揺らしたみたいに 幾重も重なった不安が起ちこめているんだ
もし きみがこちらを 本能の導く目で 想うようになってしまったら
もし こちらがきみを 本能の導く目で 想うようになってしまったら
どうしよう と
過去に犯した過ちを悔やむ きみならば
その恐怖の生まれない どこまでも 無の存在で きみを 包み込みたいんだ
いつまでも きみが安心できる場所ならば
性別も本能も いらない
でも 自分が 雄か雌であるかぎり
今望んでいる均衡は 手に入らないんじゃないか そんな風に思えてしまう
きみは すきだ と 言ってくれた
きみのことすきだよ と 答えた
無 であってほしい
どうか
いつまでも 自分の存在を求めて ただ寄り添っていて欲しくて ただ話を聞いて欲しくて ただ傍にいて欲しくて
「きみに そうしていて欲しい」
そう言ってくれるのなら その場所にいつでも行ける存在になりたいんだ
欲張りだろう?
でもね 本当に そう 思うんだ
雄でもなく雌でもなく
そんな存在に 生まれたかった そんな存在に 生まれればよかった
どちらでもなく いっそ 無 で
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