衛澤のどーでもよさげ。
2009年12月25日(金) 過程。

降誕節に関係なく我が家に蜜柑が集中しすぎて(御国柄)食べきらんので半分割りにして手で搾ってジュースをつくったら利き手がすっかり蜜柑色になった衛澤です。こんなに手が黄色くなったのは小学二年生のときに肝炎を患って(黄疸が出ると白目まで黄色くなるヨ!)以来ですよ。

さて、少し以前から或るSNS内に出まわっていた「小説執筆過程バトン」、まさかの御指名を頂きまして、回答申し上げました。その回答をこちらにも転載させて頂きます。よ。
何だか偉そうな感じがしないでもないのですが、多めに見てやってください。一応商業誌に書いたりなんかすることもある人の回答です。

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■小説執筆過程バトン■

■書くならパソコン?携帯?パソコンなら使っているツールを教えて下さい
・ラフや設定やコンテを書くとき
*行きつけの書店で貰った○川書店ノベルティのシャープペンシル
芯は0.5mm、HB。20年使用(壊れないんだもん)。シャープペンシルは高級なものより貰いものの単純な機構のものの方が書きやすい気がします。
*A4判の、少なくとも片面が真っ白の紙(ミスコピーの裏など。なければ新しいコピー用紙)
紙は高級な紙より多少安くて紙面が粗いものの方がシャープペンシルの引っ掛かりがよくて書きやすいように思います(高級な紙はシャープペンシルの芯が上すべりして薄ーい字しか書けない)。

・原稿を書くとき
パイロット FP-50R-B-EF(習字用万年筆)
「一番書きやすくて字が濃い」という理由で一時ロットリング0.3(製図用ペン)で書いていたこともありましたが、それより更に書きやすくインクも入手しやすくリーズナブルなのがこの万年筆でした。15年くらい使っています。インクはカートン買いします。切らしたら仕事ができなくなるので。
コクヨ ケ−35 原稿用紙(400字詰50枚綴)
本来は縦長に置いて横書きに使う原稿用紙ですが、これを横長に置いて縦書きに使っています。枠線が淡い緑で目にやさしいのと、前半200字と後半200字の間の折りしろがないので文章の流れをぶった切られずに済むのとで、気に入って使い続けています。問屋さんでは10冊一ト組だそうで、10冊ずつ購入しています。
手紙を書くときにも便箋代わりに使います。御作法の本等を見てみても失礼に当たらないらしいので。

・原稿清書〜仕上げ
*PC(WinXP…Vistaは動作が重すぎて厭)
TeraPad(テキストエディタ/フリーウェア)
プレーンテキストで納稿の場合はこれ。HTMLソースを書くときもこれ。それぞれモード切替で行番号が付いたりタグに色が付いたりしてくれるので編集しやすいです。
*DreamweaverMX(HTMLオーサリングソフト)
稀れに「HTMLファイルで納稿」と指定されることもあるので、その場合はこれを使用します。テキストエディタでもできる作業ですが、エディタでやると文章の修正をするときに間違ってタグを削ったりしてしまうのが怖いので、Dreamweaverで。
OpenOffice Writer(MS Wordによく似たフリーウェア)
「Word形式(docファイルもしくはrttファイル)で納稿」という指定がくることもあるのですが、現在使用しているPCは自作機でMS Officeが入っていないので(購入すると馬鹿高い)、ほぼ共通のファイル形式を扱えるフリーウェアOpenOfficeを使っています。
*ViaVoice(音声認識ソフト)
清書するだけなら手入力より早いかもしれないので、試しに次の原稿で使ってみようと思案中です。

・基本的に原稿にはデジタル技術を用いません。
・画面の中にある字、横に並んでいる字を読むのが上手でないので、文章はできる限り紙に書かれたもしくは印刷された(できれば縦書きの)ものを読みたいです。
・原稿の、「ちょっと前に書いた部分」と「いま書いている部分」を突き合わせたりするときに紙原稿は便利です。デジタル原稿でもできるのかもしれませんが、二枚のファイルを突き合わせてスクロールさせたりアクティブに切り替えたりしているうちにきっと眼精疲労やそこからくる頭痛で仕事どころではない状態になりそうなので、避けています。
・少なくとも第3稿くらいまで、気になる部分があったり納得いかなかったりしたら第6稿くらいまでは、紙と万年筆でつくります。「概ね、こんなもんか!」というところまできたら、パソコンでテキストデータに直します。
・原稿のデータ化作業が外出先でもできるように一時はsigmarion IIIを使っていました。割りと使い勝手はよかったのですが、キイの小ささとソフトウェアの不自由さがネックです。ポメラに乗り換えようかどうしようか思案中。

■大体一話何文字程度?
大抵は字数或るいは枚数指定というものを受けて書くのですが、そうでない場合(つまり自分の都合で気ままに書いた場合)について回答します。
・短編:16000字前後(400字詰換算40枚前後)
・中編:36000字前後(400字詰換算90枚前後)
・長編:200000字程度(400字詰換算500枚程度)
字数やデータ容量でなく、常に400字詰原稿用紙換算で考えます。県の催しものか何かで10分間のスピーチを頼まれて「10分間というと原稿用紙5枚くらいですよね?」と訊ね返して担当者を黙らせたこともあります。駄目じゃん。
えー、こういう話はもの書きとして大変恥ずかしいのですが、だいたい短編を書こうとするときは400字詰原稿用紙30枚を、長編の際は400字詰300〜350枚辺りを目安に構成を考えながらコンテを切ります。しかし、実際に原稿を書きますと大抵それよりは長くなって、短編は40〜50枚に、長編は500枚程度になってしまうくせが、私にはあります。短いのが書けない手くせのようです。

■仕上がるまでの所要時間
依頼日から締切日までの時間に比例します。
最近の連載を例に引いてみますと、全12回月刊連載の各話が平均45枚程度、執筆期間は3週間程度です。但しこれは連載前に既に最終話までのコンテが切り終わっていて、あとは原稿を書くだけ、という状態になっていてのことです。平均して第5稿辺りが決定稿になっています。
締切なしの長編の場合は半年かかって500枚だったように記憶しています。
10年前の恥ずかしい初長編(衛澤名義)

■書くにあたって気をつけてること、自分ルールは?
・小説を書くこと。
私の本業は小説を書くことなので「小説を書いてください」という依頼を頂きます。だから随筆や説明文や論文ではなく、小説を書くように気を付けています。
・「描写と説明文とは違う」ということを失念するな。
小説の中に混じっている説明文を、読み手は決しておもしろいとは思わないということを、かつて読み手であり、いまも時折読み手である私は知っているはずです。それを忘れずに書き手として働けということです。
・自分だけがおもしろいと思っているものは書かない。
・自分がおもしろいと思えないものは書かない。
・鉤括弧(会話など)は4行以上続けない。
・できるだけ単文で。
・主語と述語はできるだけ近くに。
・原稿用紙1/2枚くらいごとに音読。
これは気を付けているのではなく、くせです。学生時代に授業で本読みしたときに、声に出して口に出して愉しい文章の方が読んでなお愉しいと思ったことを憶えているので、そのようなものになるように。
また、近い音の語が幾つも近い場所に配置されることがないように。読点の位置のバランスを見たりも。読点の場所は息継ぎの場所でもあるので、なさ過ぎたり多すぎたりせぬように。書いたものを実際に口に出してみるとだいたいこんな感じのことがチェックできます。
・閉じ鈎括弧直前の句点は省かない。
「ああ、そうでした。」←こんなやつ。
新聞などでは慣用として省くことになっていますが、国文法では書くことになっていますし、私に「書く」ということ、読むことの愉しさを教えてくだすった恩師はやはり省かないで書くと教えてくださいましたので、これを守っています。
[ 余談 ]
この恩師は「句読点を丁寧に書かない人は文章が巧くならない」ということも教えてくださいました。なるほど確かに何度書き直しても納得いくものが書けないときというのは句点も読点も乱暴に書いています。句点が○じゃなくて△に見えるようなものや閉じていない○になっていたり、読点がゝや, になっていたり。そういうときは書写で構わないので原稿を書き直します。するとよくない点が判ることも多いです。
巧く行っているときの原稿というのは、大抵一字一字、楷書で丁寧に書いてあります。自分でも吃驚。

■年齢制限はありますか
私は「衛澤蒼」という筆名で書くときと「三条裕」という筆名で書くときとがあります。
衛澤が書くものは特に制限は設けませんが、三条が書くものはすべて成年指定です。というのも、三条が書くものはすべて性行為を題材にしているからです(早い話が三条はエロ作家です。しかもちょっと特殊な)。
衛澤名義では対象年齢を15歳以上と定めていますが、どのような内容であれ制限は設けない考えです。しかし版元が勝手にR指定を入れたりもします。思わぬジャンル分けをされてしまうことも。

■貴方の考える年齢制限の基準を簡単に
ヒトの生殖器そのものの俗称(場合によっては学名)が複数回出てくるか否か。
エロ(実際は読み手による「使用」)を目的とした作品の場合、これは必要なので連呼と言えるほどの頻度で出します。出す必要があるのです。それが必要でない作品の場合は複数回は出すようなことはありません。
ですから、性描写があるかないかは問題ではありません。同程度の性描写があるとして、衛澤名義で書くものにはそれでも年令制限を設けない考えです(版元次第)。

■シリアスかギャグなど、得意なものはなんですか
恥ずかしながら、得意なものはありません。
中でも恋愛を主題としたもの、ギャグもの、女性一人称は苦手です。

■キャラ書き分けの方法ってどうやってます?
キャラクタの細部というのは書きはじめるときに既に判っている(設定されている)はずなので、地の文を使った描写の中に意識的に折り込んでおきます。名前や人称代名詞なしにその人を読み手に判らせなければならない場面までにそれが充分にできていれば、特に気にしなければならないことはないはずです。
会話文が長く続く場合(私はこれを避けるように気を付けてはいますが)は、本人の一人称、特殊な語尾等の話しくせ、他者からの呼びかけや三人称、思考パターン等を適宜くどくならない程度に組み合わせて会話文の中に混ぜて馴染ませておくという方法を取ると思います。

■プロットはどんな風に立てますか
1)先ずは一文になるようにまとめます。
物語は大抵「○○が△△してから□□するまでの話」というかたちにまとまるので(まとまらない場合はその一連の構想が実は破綻している場合が多いです)、そのかたちにして、物語の「はじめ」と「終わり」を確認します。

2)人物票を書きます。
物語の中で動く人物の名前や身体の特徴や生い立ちや家族や住んでる場所や着ている服や持ちものや……とにかくすべて書き出して、一枚の紙にまとめます。私は「人物票」という履歴書のような書式を予めつくってあるので、手当たり次第に書いたものをその票に転記するか、そうでなければ最初から票を用意してそこに書き込みます。
これを登場人物の数だけ書きます。
人物だけでなく、必要なら小道具や場所(住んでる部屋とかよく散歩に行く公園とか)の設定やラフスケッチもこの段階で書きます。これをやっておくと、後々とても楽です。

3) 妄想 構想します。
大まかな物語と人物像ができたら、それ等材料をもとに、ぶつ切りで、飛び飛びでいいので、好きなだけいろいろな場面を思い描いて人物がどのように動くのか観察します。
そうすると、この過程でおおまかなストーリイラインができてしまうので、次の作業に移ります。この段階を入念にやっておくと、書き手が人物の動きを考える必要がなくなります(よく言う「キャラクタが勝手に動く」という状態に早い段階でなります)。

4)ストーリイをだいたい四ツくらいに分けて紙に書き出します。
「四ツ」というのは「起承転結」に沿って考えるための「四ツ」です。「序破急」で考えたい人は三ツでいいです。
四ツに分けられた場面を、更に細かく詳しく構想します。この作業は繰り返されます。更に詳細に構想されたものを、また更に詳細に……という風に。

5)とても細かいところまで御話ができてきたら、今度はコンテ作業です。
この段階まで来たら何章構成になるか、時制の行き来はあるか(現原対変など)、誰のどんな視点で話を動かすか等々、判っているはずなので、それを箱書きにします。物語をつくる勘のいい人なら4)とこの段階はすっ飛ばして直ぐに原稿執筆にかかれると思います。私は不器用で忘れっぽいのでこの作業をしておきます。
書き上がったコンテを見ながら原稿を書きます。

……と、ここまで書きましたが、「プロット」と呼べるのは1)の段階だけですね。4)や5)になると、これはプロットではなく「あらすじ」になります。
この辺り、投稿原稿では結構厳密に見られてしまうので、出版社主催の各賞に投稿しようという人は「プロット(梗概)」と「あらすじ」を明確に書き分けられるようになっておくのがいいと思います。
とか何とか偉そうに言っておきながら、私自身まだ梗概と粗筋の違いは判っていません。知っているのは「あらすじ」は結末を書いてはいけなくて、「梗概」は結末まで書く必要があるということです。

■試しにプロット見せてください
「柴田が雨のごみ集積所で×××を拾ってから秋風の中一人でピアノを弾きはじめるまでの話」。
これはいま書いている御話の原形です。「×××」は、いまは明かせないので伏せさせて頂いてます。「柴田」は主人公のおじさんの名前です。亜美さんとは関係ありません。
参考までにまだ書きかけのコンテの写真をどうぞ。



これはA4判の紙を縦長に使って継ぎ足し継ぎ足し書いたもので、10mちょっとの長さになっています。これで、やっと全体の約半分程度。これも400字詰原稿用紙300枚くらいに収めようと考えていながらこの様子では500枚くらいになりそうな感じです。

■ここだけの秘密、あのお話の裏設定
私が書いた御話を御存知の方はおられませんでしょうから表題を上げずに申し上げますが、衛澤名義で書いているものはすべて現代日本が舞台のようでいて、私たちが住んでいる日本での話ではありません。
とか言っても御話が判んなきゃつまんないよね。あははん。

■最後に今後書いてみたい設定など教えて下さい
恰好よくとも何ともないおじさんが主人公の御話を。
「恰好よくとも何ともない」ってところと「おじさん」というところが設定です。いま書いてるのがこれなんですが。
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次に回答する人を指定もできるようですが、回答したい人にお渡しします。御自由にどうぞ。
できれば、もの書きさんすべてに回答して頂きたいです。回答することで自分のスタイルやくせが判ることもあるので。

さて、降誕節ということで有難いこの動画を。

人が神の御前で平等であるのなら、神仏もまた人の前において平等でありましょう。仏式で降誕節を御祝いしても何ら差し支えないはず。きっと東京立川にバカンスでいらっしゃった御二方はおよろこびです。


エンピツユニオン


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