| moonshine エミ |
| 2007年02月07日(水) キッチン。 | ||||
| 今が普通の状態じゃないのか、あるいは自分にとって常態に戻ったのかはわからない。ただ、書きたいから書こう。ブログもご一緒にどうぞ。 仕事が忙しくて、なんとか急ぎのことを終えただけで積み残して帰ってきて、ビールを飲んでほろ酔いで『キッチン』(吉本ばなな)を読み始めた。 もう100回くらい読んでる気がする。そうすると当然、「なんでこんなに好きなの?」と考える。 最初に読んだのは、デビュー作であるこの作品が本になったときだった。私はまだ小学生で、5歳年上の姉が買ったものを読ませてもらった。そのときに既にいっちょまえに感銘を受けて、お気に入りになった。姉がいち早く社会人になって実家を出てから、自分で新たにこの本を入手した。それからももちろん何十回も読んで、ハードカバーだけ持っているとベッドで読みにくいので、結局、文庫本も買った。 こんなことは、ほかの小説に対しては、ほとんどない。それだけ、私はこの人の書く小説、とりわけ「キッチン」が好きなのだ。 出版当時に評されたように、今では普遍のベストセラーでも、当時は、異形のものである。あまりに淡々としていて、過度な表現を避けられている分、つるんとしてて滑らかだ。だからこそ、小学生だった私にも、読めたのだと思う。確かにそのころは、「みなしごになっても、人の好意を受けて、なんとかなる人生。」みたいなふうに感じていた。心のきれいな人たちの綾なす物語、のようにとらえていた。 それが、20年近く、何十回と読み返すにしたがって、その奥にある人生の理不尽さ、宿命的な悲しみや、人間の根源的な孤独、みたいなのを感じるようになった。これは、私が大人になったからそう読める、というのもあるだろうが、この、センチメンタリズムに流されない淡い印象の長くない物語に、もともとそれだけの奥行きがあったからだと思う。もちろん、私が作者のその意図に、同時代の人間として共感できる素地をもっていたからだとも思う。 そして、私がこの短い小説を好きで何度も何十度も読み返すのは、あまりに感受性が豊かな少女の頃から親しんでいた、とか、普遍的な人間の状況が示されているから、とか、っていうだけではなく、淡々としているからこそ実はとっても絶望的な状況から、確かに希望へと向かう道しるべを描こうとしてるからだと思う。しかも、その道しるべというのが、「キッチン」という名が示すとおり、人間が生きるために必要な、「食べること」を源としてるからだと思う。 いま、途中まで読んだんだけど、長くないお話なので、これから続きを最後まで読んで、寝ようね。 |
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