本来の康一って、きっとこんなに悩んでないんだと思います。ただ、承太郎や仗助に色々と康一の事を話して欲しくって、こういう話にしたとゆー。・・・いいんかいな?? *****************: 「おーい、康一ぃ」 放課後。 手早く帰る用意をしていた僕を呼びとめたのは、億泰くんだった。すぐ横に、仗助くんも来ている。 「一緒に帰ろうぜえ? 今日『レインボー』に新しいアイス出るんだってよお」 「悪いけど僕、今日は早く帰らないと」 「何だよ何だよ? 『彼女』とデートかあ? つきあい悪ィなあ」 「ち、違うよ。承太郎さんと会う約束があるんだ」 何気なく僕は答えたんだけど、それは仗助くんに大声をあげさせるにはじゅうぶんだったみたいだ。 「なあにい! 承太郎さん来てるのかよお!? 聞いてねえぞ、俺はよお」 あれ? ひょっとして承太郎さんが杜王町に来るの、内緒だったりするのかな? でも、仗助くんに内緒にする理由なんて・・・? ちょっとマズかったかな、と思いつつも、僕はふと思いついてこう返したんだ。 「ふーん、やっぱり仗助くんもそう思うんだ?」 「・・・どう言う意味だよ?」 「だって仗助くん、時々承太郎さんと会ってるって話じゃない。ジョースターさんとも。人目があるから杜王町で、じゃないけどさ」 まあ、それ自身は何の不思議もないんだけどね。親戚同士なわけだし。(ジョースターさんとなんて、親子だし) 「なのに、一度だって教えてくれなかったじゃない。僕だって会いたかったのにさ。でもこれで、僕たちの心境ってものも分かってくれただろ? よかったじゃない」 「うっ☆」 仗助くんは苦い顔をして押し黙る。少しは悪かったと思ったんだろうなあ、きっと。 「けど、一体何の用なんだろうな? 承太郎さん。俺は頭ワリイから分かんねえけどよ」 「さあ? 頼みたいことがある、って言ってたけど」 億泰くんじゃないけど、承太郎さんの用件がどんなものかなんて、想像できない。大体、普段から無口な人だから、行動パターンはともかくも、思考パターンていうのは全然、分からない人なんだよね。 「ちぇっ、何で俺は蚊帳の外なんだよ。仮にも『叔父』だぜ? 俺は。『甥』として、もうちょっと頼ってくれたっていいじゃねえか、承太郎さん」 ・・・ブツブツと拗ねてる仗助くんの言葉に、僕は思わず笑ってしまった。 そうなんだよな。仗助くんはジョースターさんの息子だから、ジョースターさんの孫に当たる承太郎さんは甥、ってことになるんだ。それは分かってるんだけど・・・。 何だか、こうやって拗ねてる仗助くんを見てると、逆なんじゃないの? とか思っちゃっても、無理ないよねえ? 「承太郎さんは別に、仗助くんのことを信頼してないわけじゃないと思うよ? ほら以前話してくれた『狩り』の時、連れて行ったの仗助くんだけだったじゃないか」 「それはそうなんだけどよ・・・」 「とにかく、僕もう帰るね〜。また明日〜!」 これ以上遅刻するのはよくない。そう思って、僕はさっさと話を切り上げて教室を後にした。 「後で話、聞かせろよ〜」 「わざわざすまないな、康一くん」 杜王グランドホテルのロビーで、僕は承太郎さんと再会を果たした。 「それは構わないんですけど・・・承太郎さん、杜王町に来る事仗助くんには話してなかったんですね」 立ち話も何だしと、そのまま予約してある部屋まで一緒に歩く。 「・・・仗助に、話したのか?」 「・・・いけなかったですか? ひょっとして」 「いや、別に構わないが・・・ただ、これから依頼する用件に関しては、なるべく他言無用に願いたい。頼む」 何か・・・かなり難しい用件なんじゃないの? 「分かりました」 でも僕には、こう答えるしかなかったけどね。 部屋に通され、2人きりになってから承太郎さんに頼まれたことというのは、ちょっと意外なことだった。 イタリア在住のとある少年を探し出し、本人には知られないように『皮膚の一部』を採取してくること。何でもスピードワゴン社に送って、体質を調べたいって言うんだ。 旅費は全額負担してくれるって言うし、別に危険なことでもないって話だったから、僕は引き受けることにしたんだけど・・・。 「姉さんが不思議がってましたよ。僕の交友関係どうなってるのか、って」 承太郎さんが煎れてくれたコーヒーを飲みながら、僕は何となくそう話し出した。 「?」 「昨日、承太郎さんからの電話、受けたの姉さんだったもんで」 「ああ・・・」 「普通、歳の離れてる人たちと友達づきあいなんてしないじゃない、って。・・・そうなんですよね。承太郎さんに露伴先生、トニオさんに玉美さん・・・こうやって考えるとみんな、スタンド絡みで知り合った人たちばっかって言うのが、不思議って言うか・・・」 ───承太郎さんが怪訝そうな顔をしているのが分かる。僕が何を言いたいのか、理解できないんだろう。 僕も、どうしてこんなことを話題にしたのか、自分でも分からなかったんだ。 「僕って仗助くん以外、スタンド使い関連じゃないと友達になれないのかな、って思っちゃって」 そう、口にするまで・・・。 「・・・」 承太郎さんは何か言いかけ、やめた。彼にしてみれば珍しく、困惑しているのが丸分かりだ。 「あ、別にイヤとかそう言うんじゃないんです。みんな、イイ人ばっかだし。知り合えたからこそ、吉良の野望を止める事も出来たんだし。・・・ただ・・・」 大きなため息と共に、僕は本心を吐露する。 「ただ・・・僕がスタンド使いになったのは、本当に偶然だったから・・・。もし、なんて過程は無意味だとは思うんだけど・・・もしスタンド使いになってなかったら・・・」 「・・・」 「こんなに友達、出来てなかったんじゃないかな、って思っちゃって」 ≪続≫
|