ここでのパロ小説を書いているうち、気がついた事があります。 「流×彩も康一話も、何で無口なキャラがメインなんだ〜!?」 流×彩では言わずと知れた流川。JOJOでは空条承太郎氏・第4部仕様。まあこの2人、実に喋らない。無言実行型を地で行くんだもんなあ。まあ流川は「めんどくさいから喋らない」で、承太郎の場合は「話さなくても他人には自分の思ってる事は分かると思ってる」で、全然違うキャラですが。 で今回、本来なら無口な承太郎が喋りまくります。そしてこれこそが、ちゃんちゃん☆が康一に言ってあげたかった事でも、あります。でわ! ******************** 本当に馬鹿げた話だと思う。「もしも」なんて仮定が、未来の事ならまだしも、もう過ぎ去ってしまった過去の話だなんて。 だけど、時々情けなくなる気持ちはどうしようもない。「もしも」スタンド能力がなかったら、僕と友人付き合いをする人はそんなにいなかったんじゃないか、って。 だってそれって、スタンドしか僕の取り柄がない、ってことと同意語だから。 「・・・康一くん」 承太郎さんが口を開いた。 その表情からは、もう困惑は消えている。強いて言えば、何かを強く決心した表情に見えるのは、僕の気のせいだろうか? 「仗助が・・・以前私に話した事がある。君の事だ」 「・・・僕の?」 何だろう? 恥ずかしい事だったら、ヤだな。 「虹村形兆と君たちが対決したことがあった。『弓と矢』を巡って。とりあえずケリがついた時、君はあいつに言ったそうだな。 『弓と矢はどうするの?』と」 そう言えばそんなことがあったっけ。 「仗助はその時、一刻も早く屋敷を逃げようと考えていた。まあ当然だろう。刑兆にやられたダメージがあったからな。だから今は放っておこうとしたが・・・君は断固反対した。『弓と矢』をそのままにしておけば、この街でまた誰かが死ぬ事になるから・・・そう言って、自分1人で屋敷内を捜索しようとした、と」 「・・・?」 今度は僕が、承太郎さんの言いたい事を理解できなくなる番みたいだ。何とも相槌の打ちようもなくって、馬鹿みたいに口を開けたままにしてたんだけど。 次に承太郎さんが言ったセリフに、耳を疑った。 「仗助は・・・あいつはその時、君にはかなわない、そう思ったと言っていた」 ・・・何、それ? 仗助くんが僕にはかなわない、って一体・・・。 「私も・・・正直言ってあいつの言いたい事が分からなかった。だが、仗助が続けてこういった時、やっと理解する事が出来たんだ。 『いくら怪我をしてたからって、俺はスタンドが使える。なのに何もしようとしなかった。あいつはスタンドを使えないまでも、何とかしようとしたのに。情けねえ・・・そう恥じていたら、不思議に怪我だらけの体なのに力が湧いた』と」 ───仗助くんがそんな風に思っていたなんて、知らなかった。 あの時僕と一緒に『弓と矢』を探してくれたのはてっきり、僕が頼りなくて見てられなかったからだと思ってたから・・・。 「仗助は、君が1人でも探すと言ったからこそ、手を貸したんだ。これは決して、スタンドの力じゃあない。君本来の、魂の力だ」 「・・・承太郎さん・・・」 「君はもっと、自分を誇りに思ってもいい。私はそう思っている」 魂の力・・・。 すごく良い言葉だ。 心の底から勇気がにじみ出てくるような、そんな力強い響き。 「・・・コーヒーのお代わりはいるか?」 唐突に承太郎さんが聞いてきて、僕は慌ててカップを差し出した。 コーヒーの香りが、部屋中を満たして行く。 承太郎さんは僕にコーヒー入りのカップを返してから、傍らの椅子に腰掛けたんだけど・・・どこか疲れているように見える。 「・・・康一くん」 「はい?」 「私は・・・昔、スタンド能力を身につけた時、自分を呪わしいと思った事がある」 ・・・何だか今日は、承太郎さんの言葉に驚かされっぱなしのような気がするなあ・・・。 「悪霊だと、思っていたんだ。今にしてみれば、とんだ勘違いなんだが。周囲にはスタンド使いがいなかったからな。・・・祖父に教えられて初めて、スタンドと言うものの存在を知ったんだ。使い方も」 確かに・・・それはそうかもしれない。杜王町みたいに、歩けばスタンド使いに当たる、みたいな場所こそが異常なんだろう。 そういう考えにとらわれていた僕は、またもや承太郎さんの言葉に驚かされてしまったんだ。 「君は・・・そう思った事はないのか? 無理矢理、スタンド能力を引き出されたようなものだろう」 ・・・・・考えた事もなかったな。 それが、僕の本音。 だけどそれを、直接的に告げるのはためらわれて、僕は必死にふさわしい言葉を頭の中で探す。 承太郎さんの告白は、でもこれだけじゃあなかった。 「仗助が・・・君のことで気にしていた事がある。『弓と矢』に刺された君を不用意に治してしまった・・・そう言って」 「不用意って・・・」 何でそうなるんだろう? あの時仗助くんが『クレイジーダイヤモンド』で治してくれなかったら、確実に僕は死んでいたって言うのに。 僕の表情に、考えている事がまともに出ていたんだろう。承太郎さんは何度かためらったあと、静かにこう言ったんだ。 「『クレイジーダイヤモンド』で治さなければ、君がスタンド能力を身につける事はなかったんじゃないか・・・仗助はそう、思っているらしい」 つまり、承太郎さんは・・・って言うか、仗助くんはこう、言いたかったんだろう。 本来なら助かるはずもなかった命と引き換えに、僕はスタンド能力を身につけて『しまった』。それは、平凡な生活との決別の証しで、決して欲しい能力ではなかったのに。いっそあのまま、死なせてくれれば良かったのに。 ・・・そう、思わないか、と。 僕は・・・その質問には答えられそうになかった。 だから代わりに、こんな話をしたんだ。 「承太郎さんは、外国のテレビ映画ってよく見ます?」 「? いや。アメリカで生活しているくせに、おかしな話だが」 「僕の父、そう言うのが好きなんですよ。それも、警察ものに目がなくって」 「・・・刑事コロンボか?」 「それも嫌いじゃないらしいんだけど・・・父の一番のお気に入りは、白バイものだったんです。一昔前の。何度もビデオで見てたんで、僕の目にも時々入ったりして。その中に、ひどく心に残った話があったんです・・・」 1人の熱心な警官がいた。彼は余命幾ばくもない病に取り付かれていた。 同僚は、早く彼を入院させようとしたんだけど、彼はそれを拒んだ。 そして彼はそのまま、警官としての生活を続け・・・ある日、死んでしまった。事故に遭いそうになった一般人を、身を挺して庇ったのだ。 彼は死に際にこう、言い残した・・・。 『生きていればこうやって・・・人の命を助ける事だって出来る』 「僕・・・この話を見た時、人目もはばからず泣いちゃったんですよ」 その生きざまに、ショックと感動を覚えて。 「僕は別に病気じゃないし、身を挺して、なんてカッコイイことなんて出来ないと思う。だけど、さっき承太郎さんから仗助くんの話を聞いた時、ふっと思い出しちゃって」 生きているからこそ。 そう、あの時仗助くんに助けられて生き長らえたからこそ、できた事が僕にはいっぱいある。 ひょっとしたら将来、スタンド能力の事で悩んだりする事も、あるかもしれないけど。 「僕は今、じゅうぶんに幸せだって思いますよ? 承太郎さん」 「・・・そうか」 僕の言葉に、承太郎さんはそうとだけ答え。 ほんの少しだけ・・・笑った。 ≪続≫ 参考:白バイ野郎・ジョン&パンチ(セリフうろ覚えだけど・・・)
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