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Darling(5)SD・流×彩?
2001年11月02日(金)

 1ヶ月まともにあいてしまいましたねえ(汗)。お久しぶりの更新です。少しはラブコメみたいな展開にしたいんですけど、さてどんなことになるやら。
 ところで、先日「流川と承太郎は無言実行型」と書きましたが、他にも共通点がありましたね、この2人。
「女性にはミョーに冷たいところ」・・・まあ、必要最低限の礼儀は知ってるみたいですが、承太郎なんて「実の娘に対する態度がなっちゃいねえ」ってどこかのHPで読んだ記憶があるし(第5部から読んでないんですってば☆)、流川の女嫌いっぽいところは、言うまでもないです。でも、そーゆーところが逆にトキメキを感じる、とか言ったら・・・もはや重症ですな(汗)。

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 試合も後半戦に差し掛かる頃には、既に富ヶ岡中の勝利は確定的になっていた。
 それほどの点数差を稼ぎ出したスーパールーキー・流川楓。彼のプレイの1つ1つが、自分たちの視線を釘付けにしてしまっていることを、観客はみな気づいている。


「とはいえ・・・流川の奴、前半戦から比べればパワーが落ちたわね。それに、ディフェンスが今1つってところもあるし」
 スコアブックをつけながら、彩子は後輩の弱点をすばやく分析している。
 しかし、それはたいしたことではない。弱点は人間、誰にでもあることだし、既に完成され尽くしてしまった選手ほど、見ていて痛々しいものはない。
 流川は違う。これからの特訓如何で、どれだけでも伸びる可能性がある選手だ。
「ま、それには、あいつが自分の弱点を素直に認めるかどうか、にかかってるみたいだけど」
 自分の弱さを認めたがらず、無茶な練習をした挙句、故障したり挫折した選手が、一体何人いることか。
 流川には、そうはなってほしくないものだけれど・・・。彩子がそう、呟いた時である。

「メンバーチェンジ!」

 主審の声に、我に返る。
 チェンジアップを済ませた選手の代わりに、フラフラな足取りでベンチへ戻って来たのは・・・。
「流川!?」
「・・・・・」
 彩子は慌てて流川に駆け寄る。そして彼が目で、ふ、と、彩子を認めるやいなや、膝からガクッと倒れ掛かる。
「危ない!」
 とっさに支えると、ずっしりとした重みを感じると共に肩の辺りで、流川の息遣いと囁きが聞こえた。
「・・・・・スミマセン・・・」
「! ああ、ああ、いいから! さっさとベンチに座る!」

 口調がぶっきらぼうになるのは、彼女らしからぬ挙動だ。が、彩子にしてみれば、流川に抱きつかれた格好になった自分を自覚するに、動揺せずにはいられないのだ。
「流川、後は俺たちに任せとけ」
 ベンチに座った流川に、二階堂がそう声をかける。
 ふ、と流川の意識がそちらへそれて、残念なような、ほっとしたような気持ちにさせられる彩子だった。

 男の子、なんだなあ・・・。
 あたしとそんなに身長とか、変わらないのに。
 手の大きさとか、肩幅とか、腕の筋肉とか全然違う・・・。
 ちょっとだけ・・・くやしいな。

 まるでバスケをやるために生まれてきたような彼の体に、少しどぎまぎしながらも、彩子は刹那、嫉妬も感ぜずにはいられない。

 ───だから尚更、この発展途上中の後輩にはこの先もずっと、伸びて行って欲しい。
 その思いが、彩子にキツイ口をきかせたのだろう。
「どうしてあんたが、交代させられたんだと思う? 流川」
 流川は即答しなかった。息を整える事で精一杯なのか、と思いきや、彼はこちらをじっと睨むように見つめ返して来ている。聞こえなかったわけではなさそうだ。
「・・・どうしてそんな分かりきった事を聞くんだ、って思ってるの?」
 何となく思い当たった考えに、頷く流川。
「だって、心の中でただ思ってることと、口に実際出してしまうって、全然違う事でしょ? 言葉にして吐き出すのって、それを自分の考えとして認めた上でないと、出来ない事じゃない。他人が聞いてるわけだしさ。・・・つまりあたしが言いたいのは、あんたが自分のプレイヤーとしての欠陥を、ちゃんと自分のこととして認めることが出来るのかしら、ってことなの」
「・・・体力が、ないってことスか」
 苦々しい流川のその口調は、常日頃彼が気にしていることの表れだろう。

「まあ、体力不足もその1つよね。でもまだまだ技術不足とか、ディフェンスがなってないとか、傍から見てると色々見えてくるものなのよ。ただ・・・今日の場合、あんた体力配分ってもの、してなかったように思えるのよね」
「?」
「・・・あんた、結構ムキになる性格でしょ?」
「!」
 何故か流川は目を見開いた。何で分かるんだ、と言いたげに。
「だってさ、向こうの3年にブロックされた時、後で自分にボールが渡ったらまたその選手に挑もうとしてたじゃない。あー言うのって、相手の思うつぼだと思うんだけど」
「・・・もう1回やれば負けねー、そう・・・思ったから・・・」
 負けず嫌いのセリフに、ついつい彩子も苦笑を誘われる。
「気持ちは分かるけどねえ。それじゃあ攻撃パターンが相手に読まれちゃうわよ。今度対戦する時にまで、リベンジはお預けにしておきなさい。必ずしも試合中に決着をつける必要は、ないと思うわ。・・・だからキャプテンも交代させたんじゃないかしら。あんたの頭を冷やすためにね」
「・・・そースか・・・」
 流川はそう応えただけだったが、多分彼の心の中にはいろいろな葛藤が入り混じっている最中なのだろう。そう思って彩子は、それ以上彼に話し掛けようとはしなかった。
 あとは、彼がどうするか、の問題なのだから。


 結局、富ヶ岡中は点差をあれ以上縮められることなく、競り勝つことができた。塚本が出場できないと分かった時は沈んでいた空気も、今は明るいものになっている。
 彼なしでも自分たちはやれるんだ───そう、自信づけられたから。
 そしてその最大の功労者は、と言うと、送迎バスの一番後ろの席で、こっくりこっくりと舟を漕いでいた。彩子の肩にもたれかけながら。

「・・・ご苦労さん」
 その屈託のない寝顔を見ているうちに、いつの間にか眠りに誘われてしまう自分を感じる彩子。

 ちょっとだけ、ね。
 またすぐに、起きるから・・・・。

 そのまま流川の肩に寄りかかるように、彩子は静かに目を閉じた。

≪続≫




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