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茂保衛門様 快刀乱麻!(9)後編 外法帖
2002年07月22日(月)

※ああ、またしても前後編・・・。何とかコンパクトにまとめることは、ちゃんちゃん☆ には不可能なのでしょうか??
 とにかく、本文をどうぞv

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茂保衛門様 快刀乱麻!(9)後編




「・・・もういいよ、九桐。あたしから正直に話すから・・・」
 媚びているようで、その実意志のはっきりとした切れ長の目をした桔梗は、辛そうな顔を伏せたまま話を始めた。
「あんたたちの言う、勇之介を利用できないかって企んだ人間って言うのは・・・他ならぬあたしさ」
「なっ!?」
「けど、彼らを利用しようとしたんじゃないんだ。言い訳にしか聞こえないかもしれないけど。あたしはあの子があまりに不憫だったから・・・。姉さんを止められなかったことを、姉さんを助けることが出来なかったことを、悔やんで悲しんでたあのコの無念を晴らしてあげたくって・・・」

 そこまで言ったところで、桔梗はキッ、と顔を上げた。

「あんまりじゃないか、あの姉弟たちは一生懸命支え合って生きて来たって言うのに。自分たちの目先の欲にかられた連中に、見殺しにされた挙げ句に言い訳もできないなんて! 弱い人間は何をされても、たとえ殺されても泣き寝入りするしかないなんて、一体誰が決めたって言うんだよ?
・・・だから、だからあたしはあたしの力をあの子に貸してやったんだ。おろくと勇之介の味わった灼熱地獄の苦しみを、他人にも味合わせてやる力をっ・・・!」

 パン・・・ッ!

 自分の感傷に浸ってる女の言葉なんて、これ以上聞いていたくなくて。
 ・・・気が付けばあたしは、桔梗に平手打ちを見舞っていた。
 仕返しされるとか、あたしも呪殺されるんじゃないかとか、そんなことはその時はこれっぽっちも考えずに。
「あんたは・・・あんたは何てことしでかしてくれたのよ? 灼熱地獄を味合わせるですって? 襲われた2人の男に関しては、確かに自業自得かもしれないわ。だけど勇之介が付けた火が、もし何の関係もない人間に燃え移りでもしてたらどうするのよ!? あんたは第二、第三の勇之介を作るつもりなわけ!?」
「それは・・・」
 桔梗の顔色が目に見えて悪くなるのが分かっても、あたしの糾弾は止まりはしない。
「いくら泣き寝入りが嫌だったからって、どうしてそっちの方面でしか力を貸す事が出来なかったのよ? 勇之介の声が他人にも聞こえるように、おろくの火付けを見て見ぬふりをした男たちを糾弾できるようにすることだって、できたはずじゃないっ!」
「・・・・・・・」
 黙りこくった桔梗の代わりに、あたしたちの間に割って入ったのは血の気の多い風祭。

「何言ってやがるんだよ。大体お前らお役人が不甲斐ないから、おろくも勇之介も苦しむ羽目になったんじゃねえかっ。糾弾するくらいで勇之介の無念が晴らせるかよ? 糾弾したからって、火あぶりにされたおろくが生き返るのかよっ」
「勇之介は極楽浄土へ行けるでありましょうか───おろくはそう言ってたのよっ、火あぶりにされる前にねっ!」
「・・・っ!」
「おろくはねえ、自分のしでかした罪を悔いながらも、死した勇之介の身を案じていたの。・・・分かる!? あんたたちが余計なことをしたお陰で、可哀想な勇之介は極楽浄土にすらいけなくなったのよ? あんたたちはおろくの優しい姉心も踏みにじった挙げ句、あるいは勇之介ですら望んでいなかったかもしれない復讐を、強いたかも知れないってことじゃないっ。
・・・見損なったわ《鬼道衆》。あんたたちはやっぱり、鬼でしかないのよっ!」
 さしもの風祭も言葉を失い。
「分かってるよ・・・あたしのやらかしたことがどんなに一人よがりなことだって事は、嫌ってほど分かってるさ。・・・だから今、止めにきたんじゃないかっ」
 涙の交じった声で桔梗が呟くのを、あたしはなかば歯ぎしりしながら聞いていた。
 ったく! だから女って奴は嫌いなのよ。すぐ感情で揉め事起こして、周りなんて見えてやしないんだからっ!

 ───と言っても、これ以上感情論をぶつけ合ったところで、問題が解決するわけじゃない。
「・・・・・」
 無理矢理怒りを噛み潰し、あたしは御厨さんに視線で合図を送った。
 頷いた御厨さんは、心得たように桔梗への質問を続行する。あたしの代わりに。


 今下手に口を開いたら、あたしが桔梗を罵倒し続けるのは疑いない。それも、半ば八つ当たりの形で。
 ・・・悔しいけど、さっき風祭が指摘したことは確かに当たってるのよ。あたしたち火附盗賊改がしっかりしてなかったから、おろくの火付けに隠されたもう1つの陰謀に気づかなかった、って辺りはね。
 笹屋・久兵衛と岸井屋・又之助が火事の後挙動不審だったのは、分かっていたはずなのだ。でもおろくが自分の罪を名乗り出たため、彼らへの尋問はそれ以上行われなかった。ここで面倒がらずに追及の手をゆるめずにいれば、あるいは勇之介の凶行を防げたかもしれないのに・・・。
 それを自覚していたから、あたしは自分で桔梗に相対するのはやめにしたのである。今は時間が惜しい。とにかく冷静に事に当たらないと。


「・・・それで? これ以上の被害者を出さないために勇之介を説得しに来た、と言ったな。勇之介が狙う人間に心当たりがあると言うわけか? 一体誰なのだ?」
「それが・・・名前は全然聞いていないんだよ。勇之介自身、相手が誰か知らなかったみたいだし」
「ったく、狙われてる人間が誰なのか知ってるなら、俺たちがわざわざここへ来るはずねえだろ? 勇之介の終焉の場所ぐらいしか、他にあいつが行く場所なんて見当がつかねえんだよ」
「一言多いぞ、風祭。喧嘩腰になるな。・・・八丁堀、さっき榊殿は勇之介の手にかかって男が2人死んだ、と言っていたな。本当なのか? それは」
 一同の中では一番冷静な九桐が、風祭たちの押し問答を見かねて口を挟んで来る。
 話していいものか判断に迷い、視線を送って来た御厨さんの要望にあたしは答えてあげることにした。
 少しだけど、冷静な心が戻りつつある。

「・・・半分本当で、半分は嘘ですよ。1人は確かに、あたしの目の前で燃え上がって絶命いたしましたけれど、もう1人は未だに生きています。もっとも、半ば廃人と化していますがね」
「焼き死んだのを、目の前で目撃したと言うわけか・・・なるほど、わざわざ火附盗賊改の貴殿らが出張ってくるわけだ」
「感心していないで、話を元に戻しましょうか。あんたたちは死せる勇之介と話をしたわけでしょう? 彼が狙う人間の特徴とか何か、聞いていないの?」
 勇之介が、自分を害した人間の名前を知らないとなれば。
 じかに勇之介から話を聞いたらしい桔梗の証言だけが、あたしたちにとっては頼りの綱だわ。

 皆の注目の中、桔梗は懸命に自分の記憶を呼び起こそうとする。
「誰が実際に呪殺されたのかは知らないけど・・・確か勇之介を殴ったのは、巾着袋を凶器代りに使った気の弱そうな男で。勇之介は裏口に捨て置こうとしたもう1人の男に必死に抵抗して、顎の辺りを爪で思い切り引っかいた、って言ってたっけ」
「・・・榊さん・・・」
「あたしの推理力の正確さに、目眩がしますよ全く☆」
 間違いない。気の弱そうな男って言うのが、廃人と化した笹屋・久兵衛。そして顎の辺りに引っ掻き傷を作っていたって言うのが、こんがりおこげをあたしの目の前でご披露してくれた、岸井屋・又之助だわ。

「その2人ならとっくに襲撃された後ですよ。けど・・・今のあんたたちの言い草じゃ、ここに第三者が挟まる余地はないように思えるんだけど。一体どんな人間なわけ?」
 あたしの質問に、桔梗は苦り切った表情を見せる。
「それが・・・どうやら行商人らしいって言うんだよ。それも勇之介が小津屋へ急いでいた時、道を尋ねたって話で・・・」
「・・・行商人?」

 何かが、あたしの頭の中に引っ掛かる。

「たったそれだけのことで、どうして勇之介が怨むと言うのだ?」
 御厨さんも疑問に思ったらしい。鋭く突っ込んで来る。
「あたしもそう思ったんだけど、さっき言った男2人はその行商人から、勇之介の身柄を預かったって話なんだ」
「預かる?」

 ああ、また何かが・・・。

「そう。つまり、その行商人に小津屋まで連れて行ってもらおうとしたところで、声をかけて来たんだって。
『小津屋がどうのと話をしていたようだが、ちょうど今から我々が行くところなんだ。よかったら案内しようか』って親切ごかして。だから・・・その、もしその行商人のおじさんが最後まで自分について来てくれていたら、あの2人も自分を殺そうとしなかったんじゃないか、って・・・」
「おいおい、それはちょっと逆恨みっぽくねえのか? ・・・・ってえっ☆ 何で蹴飛ばすんだよ、九桐」
「口を慎め、風祭。今はそんなことを言っている場合じゃないだろう。それで、それ以外に何か特徴は聞いてないのか? 桔梗」
「う・・・ん、それがあんまり・・・でも、そう言えば、その男は首から何かぶら下げてたって、聞いたような・・・」

 ・・・・・・・!?

「何をぶら下げてたんだよ?」
「分からない。とにかく何かの弾みで、胸元からもそれが見えてたって」
「首からぶら下げるものか・・・手ぬぐいとかそんなものとは違うんだろうな。後は数珠とか、真那殿が持っているような首飾りとか。榊さんは何か心当たりは・・・」
「・・・・・榊殿?」
「榊さん!? どうなさったんですか? 顔が真っ青ですよ」

 九桐が怪訝がり、御厨さんが心配そうに覗き込んで来たけど、その時のあたしは他人を気にする余裕なんてなかった。
 血の気と言う血の気が引いてしまっている顔色を自覚していながら、どうしようも出来ずに立ちすくむのみ・・・。
 行商人。
 預かる。
 そして首から何かをぶら下げていた───それらの事柄はあたしに思い出させる。そう、詰所で報告させた時の与助の言葉を。


『赤いお守り袋を首から下げてる奴、とか言ってたなあ。とにかくそいつが、死んだ又之助につかみ掛かってたらしいっすよ。�牋貘里匹Δい�事なんだ�瓩箸��爐修鵑覆弔發蠅任△鵑燭僕造韻燭鵑犬磴覆�ったのに�瓩箸�、怒りまくっていたって話でさあ・・・・・』

 まさか・・・まさかあれは、そういう意味だったと言うの!?


「・・・戻りますよ、御厨さん」
「榊さん?」
「何をグズグズしてるんですか。早く行かないと・・・・・!」

 早く行かないと、間に合わない。

 ───その言葉を不自然に飲み込んで、あたしは小走りにその場を走り去ることにしたのであった。
 九桐たち《鬼道衆》に不審がられるのも、承知の上で。


《続》

※今回の話はむちゃくちゃ難産でした。ワンピに浮気したと言うことも確かに理由の1つなのですが(汗)、榊さんたちがどうやって九桐たちに真相を聞き出すかに、頭を悩ませてしまったんです。だって彼らにしてみれば、火附盗賊改相手で下手にバラせば身の破滅。《鬼道衆》の存亡にも繋がりますから、そう簡単に話すはずもない。あれでもない、これでもないと色々と書きなぐっていたのですが、ふと思い付いたことが。
「敵を欺くにはまず味方。そーだ、榊さんに見てくれ通りの小悪党を演じてもらおうっとv」
 ・・・そうでなくても陰ディスクでは榊さん、悲しいくらいにイイトコないですから。そんな彼しか知らない風祭たちなら逆に、きっと騙されるんじゃなかろうかと。
 しかし、ここで予想外だったのは御厨親分の行動。榊さんを殺そうとした風祭にまさか斬りかかろうとするとは、書く寸前まで思いもよらなかったです。ハイ(苦笑)。こう言うのをいわゆる「キャラが勝手に動いた」と言うんでしょうが・・・忠義者だなあホントに。(説明しても意味がなかったので書きませんでしたが、九桐があの場で槍を持ち出したのは、御厨さんの剣を止めるためもあったんです。もちろん風祭に、無用な殺生をさせない意味合いも込められてましたが)
 尚この事件は、陰ディスク「慟哭」後編の後の出来事、と言う設定になってます。又一郎とお政のアノ出来事があったから、桔梗は一時の感情にかられて勇之介に呪いの力を貸したことを、心底後悔しているわけでして・・・。でも、文中では榊さんに批判的な意見を言わせていますけど、ちゃんちゃん☆ は桔梗のあの行動に関しては肯定も、否定も出来ないです。多分自分が同じ目に遭っていたとしたら、そして桔梗のような力を持っていたとしたら、思わず手を差し伸べていたかもしれないですし。ただ、榊さんのような考え方も確かにあるのは事実ですから、あえて彼に語ってもらいました。例え結果論だとしても。後からなら何とでも言える、と言われても。
 ・・・・しかし、いくら難産だったとは言え、もう少しでタイムリミットの3ヶ月になるところで、正直焦りましたわ☆ このレンタル日記「エンピツ」は、3ヶ月以上書き込みがなかったら自然消滅する代物ですので。やれやれ、な気分です。




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