月と散歩 )
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幸か 不幸か、わからない。
多くの日本人がそうであるように、僕には信仰する神がない。 でも、本当に信じるべきは何か は、心得ているつもり。
『二日目�供�
ムー大陸博物館。 そんな名前を見たら恐らく誰もが、『秘宝館』な雰囲気むんむんの奇しげなモノを想像するだろう。
僕もそうだった。 金持ちが道楽でやってるような、トンデモ博物館。 そんなのを見て、単調なドライブに笑いが生まれりゃいいや、くらいの気持ちだった。
…それが甘かった…。
建物は 小高い山の上にあった。 「へー。けっこうカネかけてんなー…」
この土地を買うだけでも相当なものだろう。 駐車場も、無駄に広い。
悪趣味な門の傍らに 受付らしき小窓。
「すみませーん。なか、見たいんですけど」
「はい。それでは拝観料の代わりに『御志(オココロザシ)』ということで…そちらのお賽銭箱に…」
「?…はぁ…で、普通は如何ほど…?」
「はい。以前はお一人300円いただいていたのですが、いまは『御志』ということで…」
「んじゃ、300円でいいんスね」
…なぜ賽銭箱?と思いながら二人分、投げ入れる。 パンフレットを貰って、門をくぐる。 …やけに広い。 目指す建物は、まだ見えない。 そして、なんだか雰囲気がおかしい。 それはさっきの受付といわず、道端に無造作に放置された工事機械といわず、すべてを取り巻く空気から感じ取れた。 なんだかわからないけど、イヤな感じ。 …目にみえない『悪意』。
パンフレットもおかしい。 仏典やら聖書やら日本神話やら、いろんな宗教の話を混ぜこぜにして、むりやり自らを正当化しようとしてる。 「この地は『浄妙国土』、『エデンの東の園』、『高天原』にあたり、すべての神仏発祥と人類の文明誕生の謎が秘められた…(パンフより抜粋)」 …おいおい、ナニ教だよ(苦笑)。
そのうち、売店に辿り着いた。 でも、そこもなんかおかしい。 商売っ気が全くなく、妙な視線ばかり痛いほど感じる。 入り組んだ構造。 ついたての向こうに続く、廊下の先。 どう見ても倉庫や住宅ではない、そこは一体なんですか?
連れが真っ青な顔して、具合が悪いと言い出した。 僕も気味が悪いので、目的の建物だけみて早々に立ち去ろうとなった。
『展示館』に入る。
意外にも新しいその中は、やはり人気がなく 効き過ぎのクーラーが気味悪さに拍車を掛ける。
あちこちに付いている監視カメラも気になる。
お目当ての『ムー大陸博物展』は期待通りに『秘宝館』なものだったけど、とても笑える空気ではなかった。
どうやら、この宗教(?)のメインがコレらしい。 大陸が存在した証拠という、発泡スチロールで作ったようなドグウも 石版も、大真面目なのだ。
別に、信仰を否定はしない。 それにしても、これはあまりにも子供だましだ。
けど、それを信じるひとがいるから成り立っている。 なんだか『拉致』とか『監禁』とかいう熟語がちらついた。 いや、ホントに(苦笑)。 だって、行きは階段なのに帰路だけエレベータ。 しかもやたら矢印で誘ってる。 「こ…これは罠か…?」 逃げるように(実際、逃げたんだけど)来た道を戻り足早に門をくぐる。
…と。
ちょうど、バスで到着した信者らしき御一行と 鉢合わせ。
まあ、もちろん何事もなかったんだけど…。
車に乗り込み ふとバックミラーを見ると、老若男女数十人がこっちに向かって合掌してる…!
………
信仰を持っている人は、きっと強いんだろう。 弱くなった時、すがる気持ちもわかる。 だけど、ここは間違っている気がする。
けど、ここを選んでしまう程 追い詰められた気持ちを思うと、やりきれなくなる。
そういえば、ここの看板には『世界平和』をうたってあったけど。
祈っただけで訪れる平和なんて僕はゴメンだ。
………
結局 しばらく車の中は重い話題が続いた。
鹿児島に一泊して、また日常に戻る。
………
いまでもときどき、あの中にいた高校生や、親に手を引かれた小さな子の瞳を思う。
僕は『ここ』で良かったと、エゴを剥き出しにして。
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