「硝子の月」
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2001年10月03日(水) <街にて> 朔也

「俺が小僧ならアンタはオッサンじゃん」
 あっさり肩をすくめ、小憎たらしくティオはせせら笑って見せた。
「人に名前を聞く時は、自分から名乗るのが礼儀ってモンだろ?」
 簡単に挑発に乗るほど馬鹿ではない。ひったくり如きに嘗められる気は毛頭ないのだ。
「おっさ…って、俺はまだ二十代だぞ!?」
 男が力んで反論した。二十代のいくつなのかを言わない辺りが微妙である。
「見た目がオッサンなんだよ」
「なんだとっ!? お前だってチビじゃねえか!!」
「俺はこれから伸び盛り。オッサンはこれから年取る一方」
「────ッ!!」
 ティオは素知らぬ顔でアニスに肉を切り分けてやる。
 男は怒鳴りつける一歩手前の顔で、ぐーっと果実酒を喉に流し込んで息を吐いた。
「───れん」
「…は?」
 低い声に聞き取り損ね、ティオは聞き返した。
「グレン・ダナスだ! しっかり覚えとけこのクソガキ!!」
 男は噛み付くように怒鳴った。


紗月 護 |MAILHomePage

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