「硝子の月」
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「俺が小僧ならアンタはオッサンじゃん」 あっさり肩をすくめ、小憎たらしくティオはせせら笑って見せた。 「人に名前を聞く時は、自分から名乗るのが礼儀ってモンだろ?」 簡単に挑発に乗るほど馬鹿ではない。ひったくり如きに嘗められる気は毛頭ないのだ。 「おっさ…って、俺はまだ二十代だぞ!?」 男が力んで反論した。二十代のいくつなのかを言わない辺りが微妙である。 「見た目がオッサンなんだよ」 「なんだとっ!? お前だってチビじゃねえか!!」 「俺はこれから伸び盛り。オッサンはこれから年取る一方」 「────ッ!!」 ティオは素知らぬ顔でアニスに肉を切り分けてやる。 男は怒鳴りつける一歩手前の顔で、ぐーっと果実酒を喉に流し込んで息を吐いた。 「───れん」 「…は?」 低い声に聞き取り損ね、ティオは聞き返した。 「グレン・ダナスだ! しっかり覚えとけこのクソガキ!!」 男は噛み付くように怒鳴った。
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