「硝子の月」
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問題は、どうすればそれが出来るかだ。 汗が頬を伝い落ちた。 『考えてばかりいても時間が過ぎるばかりだよ』 「うるせぇっ!」 再び現れた気配に苛々と怒鳴る。 『緊迫感が足りないのかもしれないな』 「てめ…!」 その存在が何をしようとしているのか、考えるよりも先に感じ取れた。
時の流れを等しくしようとしている。
そんなことになったら、間違いなく閃光は人々を――ルウファを殺す。 (させるかよっ!) そう思ったかどうか、後で考えても覚えていない。 ただ閃光に手を伸ばした。 この空間と等価に流れようとする時間を捕まえる。右手で捕まえたそれを強く引き、左手を閃光の中に突き入れる。手の平に痛みを与えてきたものをしっかりと握り締めて思い切り引き抜いた。 『合格』 相変わらず感情も、関心も無さそうな声がそう言った。 『その感覚を忘れないように』 衝撃と、轟音。 (『合格』って、失敗してんじゃねぇかよ!) 憎まれ口を叩く間もなく、ティオの意識はまた一瞬途切れた。
「おかえり」 少女の声が耳に届いた。 それからわっと祭りの喧噪が飛び込んでくる。 「俺……」 「行こう」 笑みを浮かべる彼女に強く腕を引かれ、バランスを崩すように走り出す。
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