「硝子の月」
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「行こうってお前…」 「ぴぃ」 「無事だったかのか」と言うよりも早く相棒が頭上で鳴いた。くるりと旋回して飛ぶ先に同じ影がいる。漆黒のルリハヤブサ。 「グレン」 地上では、行方不明になっていた青年が知らない女と一緒に駆けてくるのが見えた。 「無事だったか」 合流するが早いか、青年は立ち止まるよりも先に笑ってティオの頭をくしゃくしゃと撫でる。 「やめろって」 そんな風にされることに慣れていない少年は嫌そうにその腕を押しのける。 「貴女は?」 じゃれる二人は放っておいて、ルウファが訪ねる。 「カサネという。その男の情人だ」 平然とした答えに、「その男」と示されたほうが「ぶっ」と吹き出した。 「戻って来ないと思ったらそういうことか」 「案外やり手よねぇ」 少年少女はジト目で青年を見る。 「ぐ……お前が変な言い方するから」 恨めし気な視線を向けられても、カサネに堪(えた様子はない。 「嘘は言っていないつもりだが?」 却ってからかうような眼差しでそう言った。
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