「硝子の月」
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オリーブの肌の女は人混みを縫ってすいすいと進んでいく。 「おい」 それを追うグレンは遅れがちである。 「待てって、おい!」 かつてスリを働いたこともあるだけに、身のこなしには多少の自信がある青年でも、『第一王国』建国祭のこの人波を自由に泳ぐことはままならないというのに。 (なんて女だよ) 自然と眉間に皺が寄る。ちらと振り返った彼女の口元に笑みが浮かぶ。 「『うふふ捕まえてごらんなさい』ってことか?」 呟いてから某懲りない青年を思い浮かべてしまい、疲れが増す。 (影響受けてるのか、俺) それはかなり嬉しくない。
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