「硝子の月」
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(そう言えば) 今更ながらに思う。 (あの女のことはほとんど知らねぇな) どこで生まれ、どこでどのように育ったのか。この『第一王国』の出身でないことは感じ取っていた。日常生活の中で時折違和感を感じる。それに、肌の色。オリーブの肌はこの国では珍しい。 そんなことは大きな問題ではないとしても、何故漆黒のルリハヤブサを連れているのか、何をしにこの国へ来たのか。 わからないことだらけだ。 (ルリハヤブサって言やぁ、ティオがアニスを連れてる理由も訊いたことがなかったな)。 考えてみればみる程、自分が旅の仲間達のことを知らないことに気付く。それこそ、会ってまだ三日目のカサネのことと大差ない。 知っておくべきだったのだろうか。あの生意気でどこか脆いようにも見える少年や、勝ち気で何も恐れるものなど無さそうな少女のことを。 奇妙な胸騒ぎがするのは、祭の熱気に当てられたのか。
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