「硝子の月」
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「……は?」 青年の口から、思わず間の抜けた声が漏れた。 「無論、儂には国がある。常に行動を共にすることは出来んが、カサネが儂の目となり耳となって働いてくれよう」 王の言葉にカサネが無言で頷き、グレンは表情を険しくした。 「何故わざわざそんなことを言う? 今までだって、今ここで俺がそれを拒否したところで、こいつはあんたに事の次第を報告し続けて、あんたの為に働くんだろ?」 ちらりと視線を向けた女は声にしては何も言わない。ただその淡いようでいてはっきりとした意志も感じられる不可思議な笑みが、言葉よりも雄弁にそれを語っていた。 「妬きもちかね」 「ばっ……!」
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