「硝子の月」
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いつも強気なそれが、一瞬らしくない揺れ方をしたのは気のせいではない。 しかし先の二人が思わず顔を見合わせると、彼女はすぐに吹き出した。 「そんな顔しないでよ。今は『気分がいい』って言ってるじゃない」 その笑い声はいつもの彼女のもので、仲間達はほっとする。 「それに、そんなのあたしだけじゃないだろうし。ね、『賢者様』」 「そうだな」 話を振られて苦笑する青年の瞳は雪花石膏で、それは確かに紅よりも珍しい。 「どちらにしても」 声と同じくらい穏やかに青金石(の瞳が皆を見る。 「綺麗だよ」 臆面もなく言ってのけた青年こそが、生まれも育ちも性格もばらばらの英雄達を繋ぐ人物だった。 目を丸くしての沈黙の後に、大男と細身の青年が声を上げて笑う。 「何だよ」 「いや」 少年のように頬を膨らませる青い眼の青年に、賢者は苦笑にも似た――しかしそれよりも優しい笑みを向ける。その言葉を引き継いだのは紅い瞳の少女だった。 「そこがあんたのいいところよ、アルバート」
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