月に二回程度、土曜日を利用して会社での勉強会がある。会社、というよりは俺が所属している『開発部』という部署の勉強会で、部長サマが講師となりアレコレと御教授を頂くありがたい(……)三時間である。 この勉強会、基本的には自主出勤。間違っても勤怠表に“休日出勤”などと記入することはできない。 で、今日もその勉強会があったのだが、事前のお達しの通り部長の講義は三十分程度で終了、上半期の納会という意味でのバーベキュー大会がかなり大袈裟に行われた。 第一に部長サマがこういうことが大好きで、春には“花見バーベキュー”を行った実績がある。部員全員参加で約三十数名、会社近くの公園に三々五々集まってきたオトコだけのかなり汗臭いバーベキュー大会であった。
「俺、キャッチボールやりたいんだよね」 先週、同僚達となんとなくこのバーベキューの話題になったときに、俺はこうひとりごちた。 ただ肉と魚と野菜を喰らい、ひたすら呑み続ける――これは正直ツラい。それでなくとも食材は余るほど調達されるはずであり、特に若手はそれをなかば強制的に食わされる。“ほどよく焼けた”というよりは殆ど“炭”と化した肉や野菜を食わされるのはもはや拷問以外のナニモノでもない。であれば、なんかこう、広い公園で笑ってキャッチボールなんてのもいいんじゃないか、というような話が盛り上がった。 こう、なんとなくやってみたいことってあるじゃないですか。そう言えば最近やってないよなあ、というようなこと。俺にとって、“キャッチボール”がそれだった。 休日にどこかグラウンドを借りて、道具を揃えて、まずはランニングから……そこまで本格的じゃなくて、俺はただ単純にボールを投げ合うだけの“キャッチボール”がやりたかった。男なら、『野球』と『キャッチボール』が、ある部分ではまったく別の次元のものであると言ったら、納得してもらえると思う。 ステーキ肉やイカの姿焼きや業者からタダで持ってこさせたビールなどをたらふく腹に収めた後、俺は後輩が持ってきたグラブを借りて、真っ白な軟球を手にした。 これ、この感触。 グローブのアブラとほこりの匂いと公園の芝生の匂いが相まって、俺はあっという間に“ガキ”に戻った。 雲間からのぞく青空の下を同僚と俺の間で白球が行ったり来たりする。お互いに「何年ぶりだろう!?」と笑いながら。桑田のフォームを真似てカーブのまね事をしたら、ちょいと酒が入っているせいかボールはまったく明後日の方向に飛んでいった。 「かんべんしてくださいよ!」 笑いながら同僚がボールを追いかける。 ユニクロのチノパンは泥だらけになり、相当汗まみれになったが、それでも気持ちの良い初秋の午後でありました。
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ありがとうM・K。君が感想メールを一番最初にくれた人だ。 (どうでもいいけど、イニシャルって、最近は名字を先にするんですか? ここではそうしてます)
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