2002年01月12日(土) |
ばかなことをやったもんだ <其の弐> |
先日、ちょっと帰宅が遅くなった。平年よりは多少は暖かい一日とラジオなどでは言っていたが、寒がりの俺はやはり背中を丸め、「寒い寒い」と唸りながらの帰宅だった。 その日の晩御飯は『水炊き〜オット独り鍋バージョン』。 すでにツマは夕食を済ませており、俺の晩御飯用に小さな土鍋に一人前の水炊きが用意されていた。アツアツの鍋物、特にシンプルな水炊きは俺の冬場の大好物で、鳥肉・白菜・絹ごし豆腐というシンプルかつ強力なゴールデントリオが昆布出汁の中に静かに鎮座していた。 鍋物はいい。家族や仲間達とワイワイ言いあいながらつつく鍋はさらにその美味しさを増す。 そうだ。学生時代は地元の仲間達と毎年、クリスマス時期〜年末頃に集まっては鍋を楽しんだものだった――と俺は独り鍋の水炊きをつつきながら思いだしていた。
『きよしこの夜・闇鍋クリスマスパーティ』
――が、その企画のタイトルだった。ばかだ。 クリスマスらしくケーキなんかも用意して、参加メンバー10人前後がそれぞれプレゼントを持ち合って、ゲームなどをしながらプレゼント交換をしたりもするのだが、なんと言ってもメインは“闇鍋”。 “闇鍋”と聞けば、大概の人は『ああ、それぞれ持ち寄った鍋の具を鍋の中にナイショで入れる、アレでしょ』と見当はつくだろうが、実際に経験した人を俺は俺の仲間達以外に知らない。 部屋の中を真っ暗にし、一人ひとりが順番にコンロの上の土鍋の中にオノレが用意した“鍋の具”を投入してゆく。いろんなものが入っている“闇鍋”はちょっとスリリングで確かに楽しい。しかし、その“鍋”が食事に絶えうるものかどうかは、また別の話だった。 まあ“闇鍋”とは言ってもそこは良識ある男女が集っているわけだが、例えば『大根』や『鶏の手羽先』、ちょっとだけ奇をてらって『サイコロステーキ』など、普通に食える具を入れるヤツは実は若干名だった。仲間達はそれぞれ“鍋の具”でウケ狙いに走るので、それがエスカレートしてくるととんでもない鍋になる。 『しば漬け』『たくあん』『生ワカメ(切っていない長さ30センチくらいのもの)』『プチトマト』なんかはまだいいほうだ。記念すべき第1回目の“闇鍋”では、『インスタントラーメン』を一袋入れたばかやろうがいて、麺が鍋のダシ汁を殆ど吸ってしまい“おじや”のようになってしまった。 かなり笑えた具としては『カレーの王子様』。これはレトルトパックのまま入っていて、土鍋のフタを開けた瞬間みんな大爆笑だった。実際、カレー味の鍋にすることが出来て結果的に好評だったと記憶している。 妙にトロピカルな色合いの具が入っているな、と思ったら『ミカン』だった。これは食えない。豚ロース肉かと思って「これなら食べられるね」と口にしたら『スルメ』だった、ということもあったなあ。 『肉まん』『あんまん』『カレーまん』の3種類を入れたばかは、いまだに会えばその事を責められる、というくらい衝撃だった。鍋の底のほうに『あんまん』のアンコが沈んでいる姿は思い出したくもない。 俺はといえば、逆のウケを狙って一枚3000円位の高級ステーキ牛肉を入れたことがあった。一番の顰蹙だった具も俺が投入したもの。『チューインガム』。これはいけない。鍋全体がハミガキ粉みたいな味になって、とても食えたものではなかった。あの時に知ったんだけど、チューインガムは熱せられるとチーズみたいに伸びるんだよね。「ほらほら、チーズフォンデュみたい」とボケても誰も笑ってくれなかった。 仲間達も皆とうに三十路を過ぎているので、また“闇鍋”をやってみたいのだが。
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