2002年03月17日(日) |
ばかなことをやったもんだ <其の四> |
後になって分かる、ということはずいぶん沢山あるものだけれど、やはり学生時代というものは、そうとは知らずに“時間”が有り余る程にあった。いや、そう言えるのは俺だけで、他の正しい学生時代を過ごした人は、勉強にアルバイトにデートにと『時間がいくらあっても足りない!』と悲鳴をあげている人もいたのかも知れない。 まあ、俺もそれなりに学生時代はアレコレと手を出して忙しい日々を過ごしていたようにも思えるが、実際振り返ってみると、『あんなこと、よっぽど暇じゃなきゃやらねーよなあ……』ということを幾つもやってきた(その“暇じゃなきゃやらない(莫迦な)”ことを振り返っているのがこの『ばかなことをやったもんだ』シリーズなのだが)。
例えばサークルやゼミで、春・夏・冬の長期休暇になると、なにかにかこつけてメンバー揃って遊びに出かけることがあるじゃないですか。それも宿泊がらみで。まあ、全てが遊びではないにしてもどこかしら“遊び”の要素も否定できなかったりする。 大抵、『合宿』という名目ですね。 普段は学校もバラバラだが、なにかにつけて集まる地元の仲間達で、俺達も『合宿』をやろうじゃないか、と言う話が持ち上がった。もう、この時点でばか。どうせ普段から集まったとしても、飲み食いして冗談ばかり言っているだけなのになにが『合宿』か。 俺達のお決まりで、その企画にも大仰なタイトルが冠せられた。
『春の強化合宿』
俺達の何を強化しなければならないのか、などということは誰も考えなかった。“強化”という響きが嬉しいだけだった。内容はと言えば、メンバーのひとりの親御さんが持っている建てたばかりの新築アパートで一泊して飲み食いする、というだけ。こんな莫迦な企画に女性も含めて10人近くが参加しているのだからどうかしている。ばか。みんな、ばか。 食料を買い込み、冗談を言い、みんなで飲み食いし、冗談を言い、一晩中トランプに興じ、冗談を言い、朝から『黒ヒゲ危機一発ゲーム』をやり、冗談を言い……。普段集まってやっていることと何ひとつ代わりはなかった。兎に角、誰に遠慮をするわけでもないので、確かにそれぞれのテンションは高かった。こんな風にちょっとだけ環境が変わることで普段見ることのない仲間の表情を見ることが出来る、明日の時間を気にせずにばか騒ぎが出来るということは実にエキサイティングな時間だった。 今から思えば、夢のような時間だった。
翌年はさすがにメンバーの都合が合わず、日帰りのドライブとなってしまったが『春の強化訓練』と称して、前年と同じ銚子方面へ土砂降りの中のドライブを敢行した。 何も強化することの出来ない時間だが、俺は春になると、また何かを“強化”するために仲間とふらりと出かけてみたい衝動に駆られるのだ。
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