のづ随想録 〜風をあつめて〜
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【のづ写日記 ADVANCE】

2003年08月06日(水) 充実の新幹線移動

 このノートパソコンを手に入れたのはやはり正解だった、とこういうときにつくづく思う。
 コンビニの小さめの弁当大、といったら分かりやすいか(いや、普通にB5サイズと言うべきだった)。カバンの中に入れてもさして邪魔にならず、今日のような出張のときでも是非持ち歩きたい、という気分にすらさせてくれるサイズ。実に満足。
 というわけで、またまた外出先からの『のづ随想録』の更新である。「で、今回はどこから?」と思ったあなたは”話の流れ”ってものを理解されておられる。
 今、私は京都へ向かう新幹線の中だ。今日から金曜日まで、以前長期出張生活を強いられていた滋賀県へ再び足を運ぶこととなった。出張生活時代の仕事の残務処理的なことを急遽言い渡され、本日の残業も中途半端なまま発車20秒前のひかり245号にヘッドスライディング、という次第。目的地の滋賀県草津市までは、新幹線でひとまず京都まで飛び、そこから在来線に揺られ草津まで戻ってくる、という道程をたどることになっているのだが、まあ明日の夜にでも、あの旨いうどん屋でたらふくうどんを食おう――などとどうでもいいことを今から考えている。


 京都までの約2時間半の移動時間、これは最近の俺にしてみれば魅惑の時間となっている。
 昨日確認できなかったメールのチェック、友人に連絡しなければならないことのメール送信、金曜までのスケジュールの確認と調整、読みかけの文庫本を読む、耳そうじ(ホントにやった)、ぼーっとする……。
 日常はゆっくりと出来ないことが、この移動時間に誰に邪魔されることなくのんびりとやってしまえることはなんと気持ちのよいことか。

 久しぶりに新幹線に乗った。
 世の中は夏休みだということをすっかり失念していて、チケットなんぞその場で買えばいいんじゃ、と思って東京駅のみどりの窓口にたどりついたら、すでに普通席は満席。やむを得ずグリーン席を購入しました。
 さすがグリーン席という感じで、座席は広いし静かだし空いてるし、穏やかな気分でこうして与えられた自由な時間を過ごすにはもってこいである。
 通路を挟んだ、ちょうど俺の反対側の窓際に座る男のケータイが鳴った。『まさか席に座ったまま喋りだしたりしないだろうな…』と警戒していたら、男は迷いもなくどっしりと背もたれに寄りかかったまま、「ああ、もしもし」
 まったく、マナーのない奴め。聞くともなしに、男の会話がこちらに断片的に聞こえてくる。男は最後にこう言って電話を切った。

「ああ。いいから。オペは俺が承認するから」

 おおおおお医者様でおられますか、となぜか一瞬ひるんでしまいました。この新幹線で、今、万が一のことがあって、女性乗務員が「お客様の中でどなたかお医者様はいらっしゃいませんか!」と引きつった表情で現れたとしたら、この男はおそらくそっと手を挙げて立ち上がるのだろうか。
 なにより、日常の中で”オペ”というコトバは、実はそう耳にすることはない。“俺が承認する”なんていうあたりは、見た感じは俺と同い年くらいの若さなのに医局長かなんかをやっているのだろうか……実際のところ『医局長』がオペをする役割があるのかどうかということは俺には分からなかったけれど、そんなさまざまなことを想像しながら男を見遣った。
 ケータイを尻のポケットに押し込んだ男は、ちょうどひざの上にひろげたままにしていた雑誌に戻ろうとしていた。『アサヒ芸能』の表紙が見えた。
 この雑誌がどうのこうのではないが、少なくとも俺が手術室に入らなければならない時があったときは、なるべく『アサヒ芸能』を愛読する医者には世話にならないようにしよう、と思った。

 出張という非日常があれば、こんなネタにも出会うことが出来るンですね。


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