若い日本人が、イラクで客死した。
『自分探し』に出掛けたのだという。 無気力とも憔悴とも諦観とも取れる表情だったが、
「日本にもう一度帰りたいです」言った。
彼は、退避勧告が出ている国に、出遭った人たちに繰り返し止められたにも関わらず、僅かな所持金で、恐らくは、観光目的で、入国した。
蛮勇である。 迂闊で、無謀としか言いようがない。 が、その罰として、死は重過ぎる。
彼は、イラクに対して、テロリストに対して、なにをしたわけではない。
彼に相応しい罰は、家族に泣きながら殴られ、マスコミのカメラのフラッシュを浴び、友達と行った居酒屋で、あのビデオの物真似で揶揄され、道で子供に、「あ、イラクのお兄ちゃんだー」と指差される程度のものだと思う。
2004年10月27日(水) |
今やってるって、おい。 |
朝、工務店から電話。
「トイレの中の手洗いですが、こないだショウルームで見たのでよろしいでしょうか?今、水道屋さんが来て、配管やってるんですが」
「今?今日やってるんですか?」
「はい。早急に決めていただきたいんですが」
「いつまでに?」
「早急に」
とりあえず、夕方電話くれ、と言って、夜勤前で家にいたのランディと相談。
今日やってるというならしょうがない。 見積通りなら安いし、それにしてもらうか、ということで、電話を待つまでもなく、こちらから電話した。
「あの、今水道工事やってるんですよね?」
「はい」
「じゃあ、もういいです。こないだので」
「あ、いや、今トイレをつけてるというんじゃなく、配管をしてるんです。他のをつけることも可能です」
そう言われたって、工期が押してると言われてて、今、配管の人来てるのに、あれは嫌だから別のにしろ、とかは、やっぱり言えない。 「これがいい!」というのはないし、別に見積通りでも嫌ってわけじゃないし。
でも、こないだキッチン決めたときに、洗面所も決めたのに、なんでトイレの中の手洗いの話を出さんのだ。
とりあえず、色は選べるというのを確認したのでよしとするか。
キッチンを選んだ。 最終的な見積が提示されれば、完全に決定することになるだろう。
これの答えは、一応出たことになるのだろうか。
わたしにとって、キッチンとは、妥協であった。
と、いうのは余りにも、キッチンのメーカーに失礼だし、欲しくないものに金を払うわけでもないので、
「キッチンは折り合いである」
と言っておこう。
デザインとか、機能とか、手入れのしやすさとか、価格(やっぱこれが一番重要だった)とか、アフターサービスとかを総合的に判断したら、結局、「間を取る」ことになった。 国産の、名前の通ったメーカーの製品で、是非とも欲しかった食洗器と、オーブンレンジ、IHヒーターをビルトインでつける代わりに、キャビネットの組み合わせは安く抑え、吊り棚は余り使わないと思われたので買わないことにした。 もし、調理器具や食器が納まりきらなければ、収納力のある食器棚を買おう。
大富豪でもない限り、完全な満足を得られるキッチンなど買えないに違いない。 本当に、負け惜しみでなく、「特に不満はない」程度のキッチンになるだろうと思う。
そして、大事に使うつもりではあるけれど、きっと、これが最後のキッチンというわけでもないだろう。
2004年10月14日(木) |
リベンジの日は来るか。 |
昨日の夕方、魚屋の前を通ったら、型の良い鱧が、物凄く安かった。 丸ごと一匹千円。
安っ!
ということで、買おうとしたら、魚屋のおっちゃんに止められた。
「これねー、ほんとは十倍くらいするもんなんだよ。でも、捌くのは捌いてあげるけど、骨があるからね。素人には無理だよ」
そういえば、鱧を使った料理のレシピには、大抵、「骨切りしたものを買ってくる」とある。 と、いうか、駅前の商店街の魚屋で、なんで素人には扱えないようなものを置くんだ。 じゃあ、ネットで調べる、と、食い下がったのだが、
「骨切りは大変だよ。包丁がボロボロになっちゃう」
と売ってくれない。 だから、だったら置くなよ、そんなもん。
その代わりにと、黒鯛一匹を500円に負けてくれたので、それを買って帰った。
「アラは味噌汁にね。捨てちゃだめだよ」
うるさい。 どうしようと勝手じゃ。
ムカついたので、鯛茶漬けを作り、お茶ではなく、昆布とアラで取った出汁をかけて食した。 残った出汁は、翌日雑炊にした。 美味しかった。ざまーみろ。
検索したら、鱧の捌き方と骨切りの仕方が出て来た。 いつか来るかもしれないその日のために、近々、出刃包丁を買って、備えることにした。
建設中の新居の様子を見に行ったら、もうドアや窓がついていた。 職人さんが、電話で
「あー、もう、工期押しちゃってさー」
などと話していた。 台風は来るし、去った後も長雨がつづくし、だったもんなぁ。 雑談で手を止めては申し訳ないので、おやつ置いてさっさと帰った。
出来れば、出かけたくなかったのだが、よんどころない用事があったので出かけた。
玄関を出た瞬間から、凄い風だったので、壊れてもいいようにと、壊れかけのビニール傘を差した。 これが間違いだった。 帰りがけ、突風により、瀕死。 ずぶぬれで、必死で骨を支えたが、指を挟まれる。 駅に着いた時点で完璧傘は息絶えた。 その辺の薬屋で、やっすい傘を買い、死んだ傘の供養をお願いし、コロッケ買って駅を出たら―― 前が見えないほどの雨が横殴り。 討ち死にした傘が、何本も、冠水した道路で車に轢かれつつ、辛うじて原型をとどめている。 ランディに電話をしても熟睡してて出やがらないので、歩いて十五分の自宅まで、はじめてバスを使って帰った。
2004年10月02日(土) |
やっぱり必要ないんじゃないか? |
最近、ランディが言うのである。
「……眠れねーんだ」
はぁ? 毎日、仕事から帰ってきて、即、ホッピーの栓を抜き、飯を喰いつつ、テレビ観て、喰い終わったら即ゲーム。 十分もしない間に、畳にごろ寝したまま、コントローラー握りしめてうとうとしてる人間がなにを?
「おめーには、わかんねーんだよ。眠りが浅くてさー」
あ、それは、確かに本人にしか判らないかもしれない。 睡眠は、時間より質、とも言うしな。
「最近、なんか規制緩和かなんかで、薬局で、睡眠薬とか、前より簡単に買えるじゃん?買って来てくれよー」
しかし、休日ともなれば、二十時間連続で眠りつづける人間に、そんなもんが必要とはどうしても思えない。 不眠症というより睡眠不足というべきだろう。
と、いうことで、これを買ってきた。 詳しいことは判らないが、寝呆けた牛から絞ったミルクを飲むと、よく眠れるんだそうな。 で、温めた方がより効果的であるらしい。
「やだ。冷たいのがいい」
とかなんとか言ってたが、この「ネムー」は、まだ冷蔵庫の中にある。 この飲みものの存在を忘れて、ランディが熟睡していたからである。
品質保持期限は60日だから、今日明日中に飲まなければ腐るというようなものでもないのだが……
……これでさえ、ランディには必要ないものであるように思える。
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