||〜*…clover…*〜||
There are all in one.
◆cloverに出てくる人々◇|*|◇エンピツ書きに48の質問◆
穴を埋めたら 来年までまたさようなら。
さよならあたし。 世界を描くのは生きていくには不都合で さよならあたし。 隣の客はよく柿食う客だ。
最初に闇があった? ここには最初から何もなかった。 強いて言うなら ここには最初から音があった。
カウントカウント羊を数え 物語を消費する宵闇に ありふれない現実だけを叩きつけ
きょうもまた 何事もなかったかのように。
いや、私は確かに手紙を届けなかったはずだしその証拠にポケットの中には確かに封筒の感触があるわけで。
だとすれば彼が持つそれは偽物の他に相違なく、
たとえそれが偽物であるならば、にせものであるということは、 彼はその手紙を
窃盗し 開封し 複写した。
ということに他ならないんじゃないのだろうか。
歌う魚ー 馬鹿みたいに歌う魚ー
KJ:郵便局伝統配達部の配達員。ものずき。 ニク:KJのサポーター。タクシーの無線みたいなもの。使いこなせていない。 ニゴリ:元配達員志望。
「はいわかりました確かにお預かり……」 「だから何度言えばわかるんですあなた馬鹿ですか馬鹿ですね定型外の荷物は受け取ってはダメだとあれほど」 「だ、だってどうせこのまま戻るんだから直接リロに渡せば」 「余計に悪いですよさっさとDGに連絡して…」 「……うう、わかったよ…。ごめんね、お嬢ちゃん。この荷物は受け取れない…」 「なんであなたの方が落ち込んでるんですかだらしない。全くなんであなたみたいなのが」
うん、僕も本当にそう思うな!!!
「馬鹿なあんたに忠告しておいてあげるわ、6時と0時にあの町にいくのは止めなさい後悔するわよ」 とニゴリは言った。 確かにいったし、僕も確かにそれを聞いた。
が。
「KJあなた馬鹿ですか馬鹿でしょう。」 耳元でぶんぶんと煩く罵声を浴びせるニクを半ば無視しながら少年は赤い自転車を引きながらゆるゆると歩を進めている。 「待ってよニク、この辺なんだ。道がわからなくなるから話し掛けないで集中できなく」 「だからあなたは馬鹿ですかと言ってるんですよいいから今すぐ思い出しなさい彼女何ていってました?」 間髪入れずにそう耳元でまくしたてられては集中も何もあったものではない。 仕方なく少年は地図との睨めっこを諦めると己の記憶をひっぱりだす。 ええとたしか、 「6時と0時は近づくな?」 「で?今は何時だと」 まさか時計が読めなくなったわけではないでしょうねと言われてさすがにそこまで馬鹿ではないことを証明してやろうと時計を見る 「ええと、五時五十五分。あ。」 全くもうすぐ6時であるこの事態。ニクはとうとうあからさまにため息を吐いた。 「人間のくせに鳥頭ですか3歩歩いたら忘れるんですかこの前だって」 「ううう」 そうだった。でも過ぎたことは仕方がないじゃないか。 この前配達に行くときも、ニゴリに忠告されたのだ。 「大体夕方すぎたら町に入るななんて非常識もいいところじゃないか…」 「その非常識に従わなかった結果、あなたかっきり一週間寝込んだんですよ。その間の郵便は全部遅れてあの時は半年の減俸処ぶ」 「わかった、わかったから」 ニゴリもニゴリだ。どうせ忠告するなら理由まできっちり教えてほしい。 「でも今からじゃもうどうしようもないだろ、それに自転車壊れて直してたんだから時間が」 「だからあなたは配達員として未熟なんですよ商売道具の手入れぐらい毎日したらどうです」 手入れしたら画鋲を踏まなくなるのだろうか。 しかしのどかな町並みには、決して多くはないが夕時の買い物袋を下げた女性が歩いていたり、リボンをつけた少女が走り回っている。 「でもほら、この感じだとこの前みたいなことはないんじゃないかなー」 へらへらと少年は笑っ
この零と壱で構成された電子の世界の中でだけ確立される居場所は紛れもなく己のための物である。 現実という三次元で物理的な居場所を得られない、口下手で要領も頭も悪くてうまく人間と付き合えない現代人である僕らのための場所。 孤独を失うのは不可能である。 それ故僕らは足りないピースをなんとか埋めようと必死になる。 所詮何の役にもたたないのだ。形に惑わされて己を見失うこと勿。 キィを通した言葉はこんなにも流暢なのに、情報を限界まで排除した言葉はこんなにも意味であふれているのに、只一つ生身であるだけでデータが濁る。 死した言葉はこれほどに雄弁なのに生きた流れは其れを覆い隠してしまうのか。 所詮、壊れた過去としか向かい合う事が出来ないのか。今生きているのに。
ガッシャーン。 願いどおりにそれは止まった。ただし、川に突っ込んだ状態で。
「うう……いったぁ…」 「こういうときはブレーキかけるんダヨ!ブレーキっ!」 「そっ、そうか、ブレーキ!」
ぽたぽたと全身から雫を垂らして彼は立ち上がった。川に漬かった赤い自転車をなんとか立てようと苦戦し、……しかしその力のかけ方はド下手糞である。 自転車が斜めに持ち上がったもののバランスを崩し、再び彼は川の中へとリターンズ。その瞬間、ついに彼女は動いた。 とっさに反動をつけて立ち上がると、スニーカーが濡れるのもかまわず浅瀬へと立ち入る。細い手首に似つかわしくないほどの力で彼の人物の襟を掴みあげ、彼女は、言った。
「何やってんのこのばか!!いいから早く立ちなさい!」 「ぐぇ」 「ぐぇじゃないわよばか!手紙が濡れるでしょうが!」 「ぞっ…ぞうがてがmぐえげほ」 「ぐえげほじゃなくて!!」
「……あのーまずは貴女がその手を離さないと」 そんな光景に水をさしたのは、ニクである。 おそらくこの事態を一番冷静に眺めていると思われる。
「……そ、それもそうね」
そこで彼女は手を離し、
「ぐぎゅ」
ばしゃーん。 おやくそくどおり、彼は三度川の中へ。
「何やってんのよばかああああ」
文字というものは非常に不安定で一面的である。 紙という一枚の白に、筆跡、言葉、行間という情報が散りばめられ、ただしそれ以上にそれを書いた人物の気持ちを知る由はない。 在る者は大切な人を思い 在る者は遠き日を思い 在る者はまだ見ぬ明日を願い 其々の思いを込めて、人々は、誰かに伝えるために文字を綴る。
そして、誰かに伝えるためのその文字を、誰かに伝えるために持ち主から宛名の主へ。
届けるのが、Flappers"ユウビンヤサン"――ぼくらの仕事です。
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郵便、というのは遥か昔から親しまれてきた伝達手段である。 というのも昔の話。
カカン暦、827年。 世の中は発達していた。
ロボットは往来を行き来し、新しいエネルギーが開発され、通信手段は安全安泰安心を売りとした機械が主流の新時代。 それでも、白い機械に染められた市街地を道路3本も離れてしまえば一昔前の柔らかな色合いを残した風景が未だ形を残している。 例えば、川の流れ。 例えば、風の香り。 街中の喧騒とは対照的な穏やかな風景。まだ日の昇りきらぬ川沿いを年端の行かぬ少女と、その親の親―あるいは更にその親―と思しき老女が朗らかに散歩している様子は自然にその中に溶け込んでいると彼女は思う。 少女が跳ねる。老女が声をかけ、少女が其れに答えて笑う。 その和やかな雰囲気は半分眠りかけた耳には子守唄よりも心地よく、ただでさえ半開きだった眼は更に細くなる。
(んー・・・ねむ・・・……ん?)
もはや眠りの淵に落ちかけた彼女の耳が何かを捕らえたのはその時だった。 此の雰囲気には5cmも似合いそうにないノイズが何か近づいて来る。 ような気がする。 耳が捉える周波数は徐々に強くなる独特の振動。 そう、これは。
「ど、どいてどいてどいてどいてええええええええええ!!!!」 (何かきたーーーー!?)
予測どおりフェードインしてきたのは奇声とも言うべき悲鳴で、しかし予想外にも彼女めがけて突っ込んできた悲鳴に、半開きだった目は通常の5割増に見開かれた。 むしろ眠気なんて吹っ飛んだ。 だが幸いにも悲鳴は土手に寝転がっていた彼女を直撃することはなく、耳先をかすめるとそのまま川に向かって転がっていく。 「おねがいだからとまってーーー!!!ぎゃー!!」
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