||〜*…clover…*〜||
There are all in one.
◆cloverに出てくる人々◇|*|◇エンピツ書きに48の質問◆
彼女が何と戦っているのかなんてもはや俺には理解できない。 ただ、彼女が何れにせよ墜ちる心算なのは間違いなく、それを止める勇気を今の俺は持たなかった。
死にたいのだと彼女は言う。 壊れている、と俺は思う。 壊れているのは今に始まった話ではなく、もうずっと前からで、ただ、徒に一周回って正気なのだと彼女は言う。 往きすぎた正気が凶器になっているのだ、と俺は思う。
いずれにせよ、裏表。
どちらが良いか悪いかなんてひたすらに愚問で、
しいていうなら
彼女は最初から生きているふりをして死んでいた。 なぜなら 自分のための生き方なんてとっくの昔に見失っていたから。
それでも
世界は美しいのだと 人は愛くるしいのだと 凡ては素敵なのだと
彼女は嘘をつけない だから彼女は 嘘を真にする 彼女自身がそう思い込む以上 それは嘘ではなく それゆえに
本音は常に造られて 真実なんてどこかに消えた
2013年05月28日(火) |
all free 0% |
わかりきった事象というのはよくある話だ。
その日は普段めったなことをしない隣の馬鹿が何を思ったか日頃あれだけ忌っているベランダからやってきて、そのうえご丁寧に缶チューハイなど土産てきた。
「ん」 「・・・いらない。どーも」
断ったことにたいして気を悪くすることもなく、プシッと景気のよい音が聞こえる。とどのつまり、アシカショー。そいつは手土産を自分で消費するつもりらしかった。
そうして、次にそいつが口を開くより早く、あたしは釘を刺す。
「あと少しだから」 「そうか」
何がとは言わなかった。 そんなことは暗黙の了解過ぎて。 それが互いの、否、世界のルールだった。
いつか互いが必要となり、その果てに必要なくなるのだ。
これは、ギャンブルではない。 戦いなのだ。
これは、ギャンブルなのだと彼女は言った。 最後には何も残らない、賭けを装った不毛な浪費なのだと。
ただ、終るまでは終わらないというただ一点でその浪費は彼女にとって必要不可欠な消費であった。
だから止めることはできないのだと、俺は知っていた。 彼女が言葉とは裏腹に、有りとあらゆる贖罪の方法を抑し込めているのだということも。
「・・・・それでも」
絞り出すようなその言葉が、彼女を彼女足らしめ、同時に、奪っているのだと言うことも。
全てが彼女にとっては救いで 全てが彼女にとっては毒で
とっくに どうしようもできないことを悔いた俺は
壁を殴った。
2013年05月27日(月) |
dip blue in the city |
わかりきった事象というのはよくある話だ。
その日めずらしく玄関からやって来た隣人が、そのくせ一切こちらをみずに胸ぐらを掴みあげ(のびる)一言も発しなかったとしても、何一つ不思議ではなかった。
だから、その果てに絞り出すように発せられたぶつ切りの接続詞も、その続きを問うに値しなかった。
そのまま彼女は愛もかわらず俺への配慮などガン無視で何事もなかったかのように部屋へと戻っていき、だから俺は普段彼女がそうするようにベランダ越しでその排社的な要塞へと乗り込んだ。
2、3会話を交わして、それが俺と隣人とのやり取りのすべてだった。
今はまた、これ以上踏み込むべきではなかったから。
その日、夜が更けても隣室は普段通りで、俺は壁を殴った。 窓の外には星屑が散らばっていて、町並みは無言の檻だった。
毒されているのは、俺も、隣人も、同じで大差ないのだという主観がどこかで未来を抉った気がした。
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