ちゃんちゃん☆のショート創作

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過ぎし夢 来たる朝(3)外法帖・天戒×女主?
2002年02月28日(木)

※「過ぎし夢 来たる朝」は1)〜2)までの話だけなら、別に女主人公ものにすることもないんですよねえ、このSSは。それがどうして、あえて女主人公ものになったか。今回はそれがテーマみたいなものです(笑)。女主人公ものが許せない、って人は、読まない方が無難だと思います。
 って言うか、一度はやってみたかったネタの1つなんです。ただ「剣風帖」の男性キャラだと、ちゃんちゃん☆ の解釈ではちょっと無理なんじゃないか、と。もっとも、こーいう少し茶目っ気のある御屋形様は御屋形様じゃない! と言う方は遠慮して下さいね。
 今回、ぜひとも天戒さんに言って欲しかったセリフは、「ほんの座興のつもりだったのだ・・・許せ」であります。ははは・・・☆

*************************

過ぎし夢 来たる朝(3)外法帖・天戒×女主?

 明け方に見る夢は、正夢になるという・・・。

「人が・・・殺されるんです。オレの目の前で、何人も。なすすべもなく・・・」


 思い出すのも辛いと見える。龍斗は自分で酒を盃に注ぐと一気に飲み干し、ほとんど吐き出すように告白した。
 そのくらい勢いがつかないと、話す事が出来ないのだろう。

「・・・夢の中でオレは、誰か数人の親しい人間と一緒にいるんです。それが突然、何者かに襲われて、斬って捨てられる・・・」
「・・・・・」
「オレは必死に動こうとするのに、体が石になったみたいにピクリとも動かなくて。そうこうするうちに、次々に仲間たちはオレの目の前で血まみれになって、倒れていく・・・。そしてその場に生きているのが、オレだけになるところで目が・・・覚めるんです・・・」

�犹Δ垢福△笋瓩蹇∋Δ気覆い任�れ��

�爛�レノ、大切ナ仲間ヲ、殺サナイデ───!��

<───桔梗が聞いたうわ言は、そういう意味だったのか・・・>

 天戒の呟きは苦い。
 桔梗から報告を受けた時、もともと変だとは思っていたのだ。

 龍斗は確かに穏やかで静かな性格ではあるが、殺されかけたからと言って見苦しくも、命乞いをする人間ではない。
 傲慢、と言うのとは違う。そうなる前に何とか現状を打開しようと、足掻いてみせる方なのだ。他人に言わせてみれば武士らしくない、と言うことになるだろうが、天戒は決して彼女のようなやりようを嫌ってなどいなかった。
 鬼道衆たちも、そうやって生きてきたのだから。

 ───ただし、龍斗が命乞いをしないと言っても、それはあくまでも自分の身に危険が及んだ時、に限られる。
 社交的なわけではない彼女は、それでも人との繋がりをそれは大切にしている。そして自分が心を許した人間を、全力を持って守ろうとするのだ。万が一、例えば天戒が殺されそうになったとして、彼の助かる条件に彼女の命を、と言われれば、ただちに自分の首を掻き切りかねない。
 そんな彼女が、たとえ夢であっても助命を請ういとまも与えられず、仲間が殺されるのを手をこまねいて見届ける、などという事態に陥っていたとは・・・。
<日に日にやつれていっても、無理はない話だな・・・>

 ───そこまで考えて、天戒はあることに気がついた。
 龍斗の言う『夢の中の仲間』とは、どうやら自分たちではないらしい。まあ夢ならば、見たことも会ったこともない人間と知り合いだという設定も、よくあることではあるが。

「誰か、親しい人間、と言ったな、龍斗。それはお前の知り合いなのか?」
「違う・・・と言いたいところなんですけど・・・」
 曖昧な返事に天戒は首を傾げたが、黙って先を促す。
「・・・こう何度も見ていると、本当に赤の他人なのか? って気がして。会ったことのない人間のはずなのに・・・。夢の中では彼らの顔も良く見えないんですけど、だんだん見知っている人間の顔のような気が、してきて・・・」
「雰囲気が違うだけで、実は夢の中で殺され続けているのは俺たち鬼道衆じゃないか、と思うようになった───違うか?」

 論点をぴしりと突いてやると、龍斗は押し黙った。それは無言の肯定を意味する。
 彼女の、盃を持つ手が震えているのを見て取り、天戒はそっと自分の手を添え、畳の上に盃を置かせた。
 そして自然、見詰め合う格好となった眼差しのまま、彼女に告げる。

「よく、打ち明けてくれたな、龍斗」
「え・・・・?」
「お前は心底、俺たちを心配してくれているのだな・・・仲間として」
 ひどく誇らしげな気分と共に、天戒は笑い返した。

「天戒殿・・・」
「不吉な夢を告げたと言うのに、どうして・・・と言う顔だな。だがこうは考えられないか? お前は、俺に鬼道衆の危機を教えるためにそんな夢を見たのだ、と」
「え・・・?」
「夢と言うものは、その者の心の迷いや、焦りをも具現化すると言う。お前はきっと、俺たちのこれからの戦いに危ういものを感じているのではないか? 嵐王辺りが聞けば、きっと甘いだの弱気なことを言うなだのと、言うだろうが・・・」
「・・・・・」
「龍斗、俺はお前には感謝しているのだぞ?」

 酒の勢いが言わせたのだろう。天戒は、いつもの鬼哭村の長としてならまず口にしない言葉を、唇に上らせた。
「他人には言いにくいことも、控えめながら進言してくれる。俺を特別扱いになどせず、1人の人間として接してくれる。だから・・・お前の言葉に、俺はどんなにか救われたか分からない・・・」
「・・・天戒殿」
「だから今回もそうなのではないかと、俺は思うのだ。お前の夢は、俺たちに告げてくれているのだと。───自分の力に奢り高ぶってばかりいれば、きっと待っているのは破滅だけだ、と言うことをな」
「・・・・・」
「悪夢は確かに不快だろう。だが、来たる未来に本物の悪夢が来ないよう、何かが俺たちに警告をしてくれているのだ───そう思えば、そんなに悪いものでもあるまい?
だが・・・お前には悪いことをした。1人だけ、そのような苦しみを味わっていようとは。龍斗、すまなかったな・・・」

 ───静かに天戒が言うのを聞くうち。
 龍斗の視線がだんだんうつろになっていくのが、傍目からも分かる。
 天戒に諭されるうちに不安が癒され、今までの睡眠不足もあいまって、一気に気が緩んだのだろう。

 コトッ・・・。

 畳に置かれていた盃だけは、危うく押しのけはしたものの。
 龍斗はまるで気を失うがごとく、睡魔のためにその場に倒れ伏した。


<・・・ここまで正体を無くすぐらいに、眠り込むとは・・・>
 傍らに敷かれた自分の布団へと寝かせてやりながら、複雑な心境で溜め息を漏らす天戒。
 いつもの、特に戦闘中の隙のない彼女を見慣れているだけに、今の無防備ぶりが信じられない。それだけ、連日の悪夢と寝不足がたたった、ということなのだろうが───。

<もっとも・・・龍斗、お前の見た夢と言うのには、別の意味に解釈できないことはないのだが・・・>
 手酌で酒を注ぎ、天戒は苦いものを1人飲み干す。
<お前が近い将来、俺たち鬼道衆とは違う者たちと仲間になる、と言う、な・・・。お前は優しいし、その思いやりを貫き通す強さもある。だから、俺たち以外の人間から好かれても、決しておかしくはないだろう・・・>
 だがその場合、龍斗の仲間たちを斬って捨てるのはあるいは、自分たち鬼道衆と言うことになりかねない。天戒が自説を決して彼女に打ち明けなかったのは、そのためである。
 ───そうでなくても、鬼哭村にいながら幕府への怨みを特に抱いていない、と言う龍斗は、どこかしら他の仲間に気兼ねをしている。だから鬼道衆以外の仲間が出来る、などと口にすれば、今まで以上に気に病むに違いないではないか。

 そこまで考えはしたが、天戒は軽く頭を振って悪い気分を振り払った。
 夢は所詮夢だ、現実とは違う。そんなに深刻に考えていては、こちらの身が持たない。
 どうせ考えるなら、前向きに捕らえようではないか。そう、さっき自分で言ったように「俺に鬼道衆の危機を教えるためにそんな夢を見た」と言う風に・・・。

<とにかく今は、じっくりと休め龍斗。苦しむお前は桔梗同様、俺も見たくはないのだ・・・>

 安らかな寝息が、朝近い室内に聞こえる・・・・・。

***********************


 早朝、いつものように目が覚めた九桐尚雲は、たらい桶で顔を洗いながらも少しだけ違和感を感じていた。
 別に体の調子が悪いわけでもない。村に不穏な空気が流れているのでも。
 ───では一体何故、と考えた時に、やっと彼は思い至った。
 いつもなら、自分より先に起きていたらしい龍斗と顔を会わせるのに、今朝はまだ一度も彼女を見掛けていないのだ、と・・・。

 彼女の体調がすこぶる悪いのは、風祭に言われるまでもなく気がついていた。どうやら夜、眠れないでいるのだとも聞いている。
 そのくせ本人は律義にも、朝早く起きてくるのだ。もう少し横になっていても誰も咎めはしまいに・・・内心懸念していただけに、彼は安堵に胸をなで下ろす。
 多分昨夜、きちんと眠る事が出来た証拠だろう───そう解釈した彼は、同じく彼女の珍しい不在に「様子を見てくる」と言い出した風祭を慌てて制するのだった。

「大体彼女も、ああいう格好をしているとはいえ女人だぞ、風祭。深い仲でもない女の寝起きの顔を見るのは、礼儀を失すると言うものだ」
 廊下を歩きながら、九桐は後から歩いて来る風祭にそう言い含める。
「何でだよ? 大体、あいつが女だって分かるまでは、俺もあいつと同じ部屋で寝起きしていたんだぞ。今更寝起きの顔ったって・・・」
「女は特に、身だしなみに気を払うからな。自分がだらしない、と思っている姿は他人には見せたくないのだろう」
「・・・何かやけに詳しくないか? 九桐。坊主って、女とは無縁でいなきゃいけないんじゃなかったのかよ」
「ははは、俺は破戒僧だからなあ」
「それを言うなら生臭坊主だろ・・・」

 言い合いながら2人が辿りついたのは、天戒の部屋の前である。珍しく天戒も、今朝はまだ起きて来ていなかったためだ。
 ───ここで九桐が、天戒と龍斗が「2人揃って」起きて来なかった、と言う点に思い至らなかったのは、あるいは迂闊だったかもしれない。自分で風祭に言っておきながら、龍斗が異性なのだと特に意識していなかったのは、実は彼自身だったとも言える。

「若、そろそろお起きになられませんと・・・」
 ───ともあれ。
 彼はまず外から声をかけてから、静かに部屋の襖を開けたのだが・・・唐突に動作が停止した。
「?」
 相棒の異変に気づいた風祭が、まずは九桐に、それから天戒の部屋の中へと視線を転じ───やはり硬直した。
「た、たたたたたた・・・・・・・・・」
 そう言ったきり、耳まで真っ赤になった風祭の前にいたのは。
 「誰かに」腕枕をしてやっているような体勢で寝入っているこの部屋の主・天戒と。
 その横で、どうやらやっと事の次第を把握したらしく、風祭に負けず劣らず真っ赤になっている龍斗が。
 同じ布団の中にいる姿であった。


「た、龍斗、お前何時の間に御屋形様とっ・・・」
 風祭は動揺のまま大声で叫びそうになったが、そこで我に返った九桐に口をふさがれる。
「むごむごむごっ!」
「声が大きいぞ、風祭。まずは落ち着け」
 小声で諭され、渋々風祭は黙り込む。それを見守ってから、九桐はコホンと咳払いの後、静かに呟いた。
「お前が若の部屋にいると言うことは・・・龍斗、お前が夜這いに忍んで来たのか? いつものお前らしからぬ大胆さだな・・・」
「ち、ちちち、違うって」
 龍斗の顔色は今や、真っ青になっている。
「仮にも桔梗を差し置いて・・・じゃなくて、天戒殿の同意も得ないのにそんなこと・・・でもなくって、ええと、違うんだ、そうじゃないんだ・・・」
 彼女がわたわたと慌てふためく様を見ながら、さしもの九桐も自分の顔が強張っているのを自覚せずにはいられない。
 しかし、いくら天戒も龍斗もちゃんと着物は身に付けているとは言え、このような風景を目の当たりにしては他に解釈の仕様がないではないか。
 龍斗が、天戒と、昨夜、同衾した、と言う状況以外には!


 が。
「・・・・・・・・・・・・・っ」
「?」
「くっ・・・くっくっくっ・・・・・・」
 その時、緊迫の場には不似合いな忍び笑いが、九桐の耳を打った。
 その声を辿れば、さっきまで寝入っていたはずの天戒の肩が、かすかに震えているのが見える。
「・・・・・・・・・・・若・・・・・・・」
 押し殺したような九桐の声に、ついにこらえきれなくなったのだろう。
「ははははははははははっ! こ、こうも、うまく引っかかるとは思わなんだぞ・・・」
 風祭と九桐、そして傍らの龍斗は、世にも珍しい九角天戒の、涙を目の端ににじませて豪快に笑い続ける姿、と言うものを目撃する羽目になった。

「・・・天戒殿・・・☆」
「済まぬな、龍斗。ほんの座興のつもりだったのだ・・・許せ」
 謝りつつも、未だ天戒の笑いは止まりそうにない。
「つまり・・・わざと俺たちが誤解するように仕向けたと言うわけなのですな? 若」
「そういうことになるな。・・・断っておくが、俺はさっきまでずっと、龍斗の寝顔を肴に酒を飲んでいたのだ。だが尚雲たちがこちらに来る気配に気づいて、少しからかってやろうととっさに、龍斗が眠っていた布団に潜り込んだと言うわけだ」
「え? え? え?」
「だから澳継、俺はまだ龍斗には手を出しておらんぞ。安心したか?」
「な、なななんで俺が安心なんてっ!!」
「しかし、澳継と龍斗の反応は予想しておったが、尚雲までもがああも動揺するとはな。朝から珍しいものを見せてもらったぞ」
「若・・・お戯れも大概になさいませんと・・・」

************************

 大騒ぎをする風祭と、苦い顔を主に向ける九桐を尻目に、龍斗はようやっと冷静さを取り戻しつつある。
 しかし───龍斗はふと、先ほどまでの自分を省みた。
 とにかく動揺せずにはいられなかったのだ。静かに意識が覚醒してみれば、自分はこともあろうに、天戒に腕枕をされて眠っていると来る。しかも自室ではなく、天戒の部屋で。さすがにあの時は、まだ寝足りないと言う気分が一気に吹き飛んでしまった。
 一体どうしてこんなことに、と思っていたら九桐の声が聞こえ、隠れようとするいとまも与えられずに襖が開けられ───あれだけ血の気が引いたと感じた瞬間は、一生をおいて他にないだろう。
 それがよもや、天戒のたわいない悪戯だったとは。
<まあ・・・何もなかったってことだし・・・覚えもないし、いいか。何だかんだ言っても、天戒殿には一晩酒に付き合ってもらったわけだ。このくらいの戯れ言、お礼だと思えば・・・>

 その場で安堵の長嘆息を漏らす龍斗を横目で見ながら、主従の会話は続く。
「・・・そう言われれば、かなり酒の匂いがなさいますぞ若。一体どのくらい嗜まれたのやら」
「そう言うな尚雲。龍斗と差し向かえで呑む機会はめったにないし、おまけに龍斗は真夜中に水浴びをしていてな。冷え切った唇まで暖めるのには、かなりの酒が必要だったのだ。・・・それに俺が飲まないと、どうせ遠慮して盃が進まないのは分かりきっておったし」
「済みませぬ。そういうお心づかいでしたか、天戒殿」
「・・・と言うのは、俺が深酒をする口実に過ぎん。気に病むな」
 そう笑う天戒を、龍斗は今までよりずっと眩しく見つめていたのだが。

「ところで、悪夢は見なかったのか? 龍斗」

 言われて我に返る。
 今までぐっすりと寝入っていて、夢など見た記憶はない。
「・・・ええ、おかげさまで」
「そうか。明け方に見る夢は正夢となると言うからな。悪い夢でないのは幸いだ。・・・さあ、身支度をしてこい、朝餉の時刻になる」
 遠まわしに退室を命じられ、龍斗は軽く頭を下げて自室へと引き上げることにした。


 自室で身支度を整えている時───ふと。
 見ていなかったはずの今朝の夢が、脳裏に蘇る。
 だがそれは、彼女が恐れていた恐ろしい夢とは程遠いものだった。

 大勢の人がいて。
 場所は何故か、ここ鬼哭村以外の外の世界で。
 鬼道衆の皆がいて。鬼道衆以外の人間も、いて。
 皆それは嬉しそうに、笑いながら酒を飲み交わしている、夢・・・。


<明け方に見る夢は、正夢、か・・・>

 切ないような、懐かしいような気持ちで龍斗は、緩やかに微笑んだのであった。


 悪い夢も楽しい夢も、夢は夢。いつかは覚める。
 けれど、そうありたい、と願う「夢」は・・・・。


《終》



<おまけ>

「ところで若、さきほど『冷え切った唇まで暖める』と申されたようですが・・・どうやってそれを確かめられたのです?」
「それを聞くのは野暮だと言うものだぞ、尚雲。良いではないか。安眠の見返りにそのくらいの、役得をもらってもな」
「・・・何言ってんだ? 九桐。御屋形さまも、一体どう言う意味なんですかー?」

***********************

*ぬわんでこれを、女主人公で書いたか、理由は分かりましたね? そう、全ては「同衾誤解ネタ」を書きたいがため!! 男同士で寝ていても、よほどの雰囲気でない限りはそういう誤解はされないもーん(笑)。
 良かったら、HOMEの方の掲示板にでも感想下さいませv
 そのうちこれも、加筆訂正の上、編集してHOMEの方にUPしたいです。でもいつになるやら・・・☆




過ぎし夢 来たる朝(2)外法帖・天戒×女主?
2002年02月24日(日)

*ちゃんちゃん ☆は「外法帖」のPLAY順は「陽→陰→邪」でした。ですからこのSSは、そういう話の展開が前提になっています。よもや「陽」ラストがあのような衝撃シーンだとは思わなくて、当時は「やめてくれええええっ!」と心の中で叫びまくってました。・・・それが、この物語を書くきっかけになっていると言っても過言ではないでしょう。
もしこれから「陰→陽→邪」でPLAYするとすれば、また違った話が思い付くのかもしれません。でもこの話は、どうやら天戒サン相手でないと出来ないと思います。
 ・・・全くの余談ですが、今回魔人用語を登録していないPCで「外法帖」と入れようとしたところ、「下包丁」と言うおマヌケな変換をしてくれました。ああ・・・殺伐としているようなほのぼのしてるような・・・☆

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過ぎし夢 来たる朝(2)外法帖・天戒×女主?


 明け方に見る夢は、正夢になるという・・・。


「悪夢・・・?」
「ええ。・・・天戒殿には確かに感謝してます。具合の悪いオレを気にかけてくださって、桔梗にも色々と言って下さってたみたいで。・・・だけど、所詮は夢の話ですから、オレ自身でさえどうしようもないんですよ。どうやら呪詛とか、そんな類のものでもなさそうですし」
「・・・呪詛されるような覚えでもあるのか? 龍斗」
「もののたとえですよ。まあ・・・オレの知らないところで、変な怨みぐらいは買ってるのかもしれないけど」
 だから、もう気にしないで下さい───そう、言外に宣告しているのが分かるから、天戒の胸は痛む。


 ───不意に思い出す記憶。
 昨日、用があって桔梗を屋敷へ呼んだ時、たまたま龍斗は席を外していた。
 それ故だろう。桔梗は声を潜めて天戒に報告したのである。

『あたしも昨夜、いえ、今朝方気がついたんですけどね。どうやら龍斗は夜な夜な、嫌な夢に魘されているらしいんですよ、天戒様』

 女同士と言うことで、彼女と龍斗の寝室を同じ部屋にしておいたのだが、今回は功を奏したようだ。

『それもかなり悲惨な夢みたいで、今朝もそれであたしも目が覚めたほどなんです』
『・・・どのような夢なのか、分かるか?』
『断片的には。誰かに殺されそうになってるみたいことを、口走ってましたよ。�犹Δ垢福△笋瓩蹇∋Δ気覆い任�れ�瓠ΑΑΔ修Α�泣きながら叫んで。
・・・あんな声、できたらもう、龍斗の口から聞きたくないですよ・・・』


 確かに、龍斗が今し方見た夢がそれと同じなら、彼女が日に日にやつれて行く理由も分かる。悪夢の気配を少しでも拭い去りたいと、水を浴びに那智滝へ赴いたのも。
 ───それなら尚更、捨て置くわけにはいかないではないか。

 その思いが。
「じゃあ、これで失礼します」と立ち去ろうとする龍斗の腕を、思わず掴ませていたらしい。
「天戒殿?」
「まだ手は冷えているようだな。氷のようだ・・・これではなかなか眠れまい?」
 多分龍斗は、嫌な夢を見るくらいならと、朝まで起きているつもりなのだろう。そうと気づいて天戒は、1つの提案を持ち出すことにした。
「実は俺も、目が冴えて眠れぬのだ。よければ、酒など付き合わぬか?」

**************************

 いつもの龍斗なら、おそらくは恐縮してこのような誘いには乗らなかっただろう。
 ただ、今の彼女には眠れないと言う、深刻な自覚がある。体調が最悪だと言うことは、いざと言う時に機敏に動けないことを意味するのだ。そのような人間が、果たして鬼道衆にいてもいいのだろうか───? 律義な彼女のことだ、そのくらいは考えているに違いない。
 それに、自分の行動で天戒の安眠を邪魔して悪かった、と言う思いもあったのかも知れぬ。
 とにかく天戒は、初めて夜の自室に龍斗を招き入れることになった。

 皆が寝静まっているので、給仕を誰かにやらせると言うわけにもいかない。それで、こっそりと台所から酒を持ち込んでの酒盛りと、相成る。

「子供の頃を思い出すな・・・」
 知らず知らず、天戒の口元が笑みで緩む。
「子供の頃、ですか?」
 なみなみと注がれた盃の酒を舐めながら、龍斗が尋ねた。
「ああ。よく尚雲と夜中に、腹が空いたと台所で食い物を探してな。誰にも分からないようにしたつもりだったのだが、所詮子供のすることだ。すぐに露見して、2人して嵐王に・・・先代の嵐王に、叱られたものだ」
 気楽な子供時代を思い出し、切なさと共に懐かしさをよぎらせる。
「・・・龍斗、お前はどうなのだ? 子供の頃ならではのたわいない思い出など、ないのか?」
「さあ・・・どうでしょう」
「ふっ、ごまかしたな。俺にばかり話させるとは、ずるいと思わぬか?」
 酒が進むにつれ、滑らかになって行く言葉。

 ひとしきり無難な世間話などした後で、頃合いを見計らって天戒は静かに切り出した。
「・・・さっきの夢の話なのだがな・・・」
「・・・・・!?」
 ほろ酔い気分で穏やかになっていた龍斗の雰囲気が、一瞬にして張り詰めたが、気づかぬフリをする。

「桔梗に聞いた。何やら物騒な夢に魘されているらしい、と」
「・・・桔梗には、迷惑をかけて済まないと感じているのですが・・・」
「責めているのではない。ただ、俺も何かの力になれないものか、と思ったのだ」
「・・・・・」
 俯く龍斗の様子を眺めながら、また1杯と盃を傾ける天戒。

「・・・お前はさっき、『所詮は夢の話ですから、どうしようもない』と言っていたが、俺はそうでもないと考えている。夢はそれこそ所詮、人の心が見せるものではないのか?」
「・・・?」
「よく、無意識のうちの心配事があったりすると、その事柄を夢に見るようなことがあるだろう。それと同じだ。・・・お前がそのような夢を見るようになったのにも、それ相応の理由があるのかも知れぬ」
「理由・・・」
「ひょっとしたらその理由とやらが、俺がお前をこの鬼哭村へ連れて来てしまったこと、自体にあったとしても・・・大しておかしくはないな」

 時々、天戒は想像してしまうのだ。鬼道衆の戦力になれば、と龍斗をこの村へ連れて来てしまったが、それは彼女にとっては良かったことなのだろうか、と。
 穏やかで静かな性格の彼女を、徳川幕府転覆などと言う大それた野望に巻き込んでしまったのは、自分の我が侭ではないのか、と・・・。

「・・・それは違うと思いますけどね・・・」
 天戒の危惧を、緩やかな口調で龍斗は否定する。控えめに笑みながら。
「オレが天戒殿について来たのは、オレ自身の意志からですよ。戦っているのもね。そのこと自身には、後悔もしてません。・・・こういう言い方は酷いかもしれないけれど、オレがここにこうしていることに天戒殿が変に責任を感じるのは、オレという人間への侮辱かも、知れませんよ?」
 いつもの龍斗なら、まず口にしない種類の言葉。酒が彼女を饒舌にしているのだろう。
 だが今の天戒にとって、この言葉は何よりの賛辞だったし、救いにもなり得た。

 龍斗は盃の酒を呷ると、ぽつぽつと言葉を繋げる。
「・・・第一、オレがこの村へ来た当初は、そんなに酷い夢は見なかったんです。あの夢を見るようになったのは、ここ最近のことで・・・」
「あの夢、ということは・・・まさかいつも、同じ内容の夢なのか?」
「・・・ええ」
「なら尚更、何か理由があるとしか思えぬがな。どんな夢を見ると言うのだ?」
「・・・・・」
「人に話せないほどに惨(むご)い夢、なのか・・・? それなら無理にとは言わぬが」
 天戒の気遣いに、龍斗はかぶりを振って答える。

「惨い夢では、ありますけどね・・・それ以上に、自分の無力さを目の当たりにさせられているようで・・・目が覚める度何も出来ない自分が、苦しくてやりきれなくなるんです」
「やりきれない?」
 桔梗の話では、龍斗を悩まし続ける夢と言うのは、彼女が殺されそうになる内容だと聞いているのだが。

 怪訝に思う天戒の前で、前髪をかき上げ辛そうに目を伏せて、龍斗は打ち明けた。
「人が・・・殺されるんです。オレの目の前で、何人も。なすすべもなく・・・」


《続》

 多分、次で終わります。



過ぎし夢 来たる朝(1)外法帖・天戒×女主?
2002年02月23日(土)

*えーと、スラムダ○クの「るあや」や、銀英伝のポプ○ン&ビッテ○フェルトものの続きをまっておられる方々へ。スミマセン、今某・ゲームをPLAY中のため、更新はおそらく早くても(汗)1ヶ月後になるかと思われます。何とぞご容赦下さい。
 で、今回の更新は・・・ここではなるべくUPすまい! と思っていた、某・ゲームこと東京魔人學園外法帖ネタであります。それも女主人公モノ・・・☆
 とりあえずここに何かをUPしておきたかったためもあります。そんなの見たかないや! とか、未PLAYでネタバレはイヤだ、と言う方は遠慮してくださいませ。
(注意:『外法帖』および東京魔人學園シリーズを知らない方へ。これはPSで発表されているゲームでありますが、女主人公と言うものは実はゲームでは存在しません。言って見れば女性ユーザーの煩悩のなれの果てで、ネット上ではかなりの数存在するものです。ウチのHOMEも何を隠そう、女主人公メインです☆)
・
・
・
↑の注意書きをお読みになりましたね? では、どうぞ!
ちなみにこの話は、公式HPでの「あったらよかった!こんなシーン」掲示板でちゃんちゃん☆ がした「フラッシュバック」案「の」元になっております。念のため。

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過ぎし夢 来たる朝(1)外法帖・天戒×女主?


 明け方に見る夢は、正夢になるという・・・。


「ん・・・?」

 真夜中だと言うのに、九角天戒はふとした気配に目を覚ました。

 敵襲の気配に布団を跳ね除けて飛び起きる事は、不本意ではあるがままある。ここは名を鬼哭村、と言う、徳川幕府に反旗を翻す人間達が隠れ住む村なのだから。
 そしてこの村の頭目である彼・天戒が駆けつけて、不埒な侵入者を斬って捨てる、ということも、致し方ない事だ。村人の不安を取り除いてやるためにも、それはせねばならないことである。
 だから彼はいつの間にか、眠りにつきながらも外の気配を探るすべを、身につけてしまっていた。

 だが・・・今宵の気配は違った。
 騒々しいものではない。むしろ、闇に紛れたささやかな気配。
 それも殺意や悪意を感じさせるものではなく、おまけにその気配は徐々に遠ざかって行くのだ。
 天戒はその、人目をはばかるように動く気配に、心当たりがあった。
「・・・・・」
 身支度を整え、念のために愛刀を腰に差すと、彼は人知れずそっと、屋敷を抜け出すことにした。

***********************

 ドドドドド・・・。

 真夜中でも尽きることのない、大いなる水が流れ落ちる音。
 気配を追っていた天戒は、村の外れにある那智滝のそばまで来ていた。
 ここは昼間でも澄みわたった空気の場所だが、日も落ち、月の光だけが頼りのこの時刻はことさら、神々しいばかりの雰囲気を覚える。

 ───水の清濁は人の世にも似ている、と天戒は思った。

 新しい水が流れるからこそ、滝の水は冷たくはあるが澄んでいる。そして流れるからこそ、それは滝と呼ばれるのだ。
 だが冷たさを忌避し、水を清めることを怠った時から、それは滝ではなくなる。淀んだ水はいつしか腐臭まで漂わせ始め、水面からはその底を窺い知ることすらできなくなってしまう。
 そして、そこに住む生き物さえ汚(けが)れて行く・・・。

 人はどうして考えないのだろうか? 今の徳川幕府が治める世が、まさにそのものだと言うことを。

 ピチャン。


 物思いにふける天戒の耳に、静かな水音が届いたのはその時だった。
 彼でなければ聞き逃していただろう。それは滝の音ではなく、何かが水の中へ入って行くような、ささやかなものだったから。
 慌てて目を凝らしたところ、滝壷へ目掛けて1つの人影が泳いで行くのが見える。
 それは紛れもない、彼がずっと気配を追って来た人物のものだった。

**********************

 ───名を緋勇龍斗、というその者は、男名でありながられっきとした女である。
 だがその事実を、外見だけで推し量ることは難しい。現に天戒たちも、つい先日までは彼女のことを男と思い、一緒に寝起きなどしていたほどだ。何せ動き易いように、旅の道中危険に遭わないようにと、彼女は男のなりをしていたし、涼やかでその実激しいものを秘めた目は、とても弱々しいものには見えなかったからだ。おまけに彼女がひとたび拳を振るえば、そこらの浪人など蹴散らしてしまうだろう。
 ───風貌こそ確かに、どこか中性的なものでありはしたが。

 仲間の1人・桔梗を通して彼女の実力を見て取り、鬼哭村へ連れてきたのが1ヶ月前。馴れ馴れしいとは程遠くも、やや消極的ではありながら極めて友好的な彼女の態度に、この頃村人も徐々に親しみを覚え始めた。
 どうしても封鎖的な村中にありながら、穏やかな光を感じさせる彼女の気質は人を惹き付ける。それは天戒たちも同様だった。いつしか龍斗は、昔からこの村にいた、必要不可欠な存在だったと言う錯覚まで感じていたものなのだが。

 ───その均衡が最近になって、少し崩れつつある。

 ここ数日、彼女は元気がなかった。何かすると考え込むようになり、深く溜め息を吐いている。ただそれだけなら単なる物憂いだと解釈しただろうが、顔色も悪くなり、どうやら夜も眠れないでいるらしいとなると、話は別だ。
 男相手なら話せないことも、あるいは同性相手になら───。桔梗にそう提案され、しばらく様子を見ていたものの、どうやらさしもの桔梗も悩みを打ち明けられる対象にはならなかったようで。龍斗の血色の悪さは、日に日にひどくなっているのが現状である。
 もともと線の細い印象を受ける龍斗だったが、最近は儚さまで伝わってくる。口の悪い風祭ですら、気に病んでいつものようには彼女に突っかからない始末だ。
 まるで今にも消え入りそうな気がする、と言って・・・。

************************

 ───そんな最悪の体調のはずの彼女が、着衣のままとは言えどうして水になど入るのか。天戒は気が気ではない。

<馬鹿な・・・今の季節はまだ、ここの水は切るように冷たい。それを日の出ている昼間ならともかく、こんな寒い真夜中に泳ぐなど自殺行為に等しいではないか!>

 ───そう思った時、天戒は自分の考えにぞっとなる。
<まさか・・・まさかここで死ぬつもりではあるまいな!?>

 水の中へ入ろうと、とっさに水辺に駆け込む天戒だったが。
「・・・・・?」
 激しく流れ落ちる水の下で、座禅を組むようにして座り込んだ彼女を見た時、一瞬にして不安は霧散した。


 龍斗は目を閉じて座っていた。明らかに、自らの意志で。
 今の彼女からは、確かにある種の痛々しさは感じられはする。だが、昼間感じる儚さは、微塵も伝わって来ない。
<何か・・・意味があるのか? この行為には・・・>
 今の龍斗には、他人の介入を受け付けさせないような、妙な迫力がある。そう、固い決意のような・・・。
「・・・・・」
 天戒は溜め息を1つつくと、彼女が滝の下から出てくるのを待つことにするのだった。
 むろん、体力的に無茶だと判断すれば、無理矢理にでも岸へ引っ張り上げるつもりで。


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 ───結局、龍斗が滝から岸へと上がってきたのは、天戒がそろそろ無理にでも・・・と動こうとした、まさにその時である。
 濡れた髪をかき上げながら岸へと戻って来た龍斗は、さすがに天戒の姿に驚いていたらしい。

「天戒殿・・・」
「待ちくたびれたぞ龍斗。真夜中にご苦労なことだな」
 緩やかに笑って迎えると、彼女もつられて笑みを漏らす。夜の闇もあいまって、どこかやはり儚い印象は受けたが。
「・・・すみません。皆を起こさないよう抜け出したつもりだったのですが、かえって気を遣わせてしまったようですね」
「いや、気に病むことはないぞ。たまたま目が覚めていただけだ」

 言いながら、自分の羽織っていた着物を龍斗にかけてやる。水に濡れた着物が、女人の肌を隠す役目をもはや果たし得ない、と言うこともあったが、何より今の彼女は儚く、痛々しいことこの上なかったから。
 唇は青褪め、体中の血色も悪く、おそらくは寒いのだろう・・・歯を食いしばっているものの、体の震えは隠しようがない。

「・・・一体何があったと言うのだ? この季節の水浴びなど、正気の沙汰ではないぞ。良かったら、何がお前をそうしているのか、話してはくれないか?」
 思い切って天戒はそう尋ねてみる。
 心配をかけた挙げ句に、着物まで貸してもらったとあれば、黙っているわけにもいかない───そう思ったのか、龍斗は何度かためらった後、困ったような笑みを浮かべてこう、告げた。

「大した意味はないのですよ、天戒殿。ただ・・・さきほど悪夢を見たものですから、夢の名残を少しでも消したいと、そう思っただけなのです」

<続>





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