雑感
DiaryINDEXpastwill


2001年08月22日(水) 東海林さだおは在外邦人の救世主

東海林さだおのファンのランクでいえばまだまだ幕下付けだし
デビューから一向に番付けが上がらない力士みたいなものだけど・・

丸かじりシリーズはずいぶんたくさん持っている。といっても
20冊くらいだろうか。とにかく食べ物のことばかり書いてある。
ピンは秋の味覚松茸にはじまりキリはもやしにいたるまで扱う
食材は何でもござれ、文章のいきがいい。文体が要を得て簡潔。
改行の妙。エッセイの始まりのつかみが上手いし、最後は必ず
オチをつけてくれる。

こと食べ物に関しては丸かじりシリーズを読んで、なつかしい
料理をまるで目の前で味わっているかのように感じることができ
る。日本食の手に入りにくい地域にとっては、つかの間の砂漠の
オアシスのようだ。
東海林さだおは、食べることに関する観察眼のものすごくするどい
人である。ほんのちょっとした事でも見逃さず、深く追求してくる。

「とんかつの丸かじり」の中に、中華食堂のお品書きを眺めて
長大な物語を想像するなんて普通の人はしないし、思いもよらない。
貧から身を起こしたラーメン族から炒飯の飯族へ、さらにチンジャオ
ロースーや酢豚の新興貴族へと成り上がっていく栄華物語にしたたて
いる。

ふたをテーマに原稿用紙17枚も書ける作家はちょっとお目にかか
らない。東海林さだおは、安打製造機のイチローみたいに
食材をネタに質の高い文章を提供してくれる。食材に向ける眼差し
は暖かく、読む者のこころをぐっとつかんでいる。


Aqu |MAIL

My追加