雑感
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2001年11月02日(金) 星新一のすごさ

小学5年の頃、文庫本は大人の読むものだと思っていた。
そんなとき、弟から星新一の「ボッコちゃん」を教えてもらった。
中学生になって、共通の本棚に星新一の本がずらっと並ぶことになった。

今手元にあるのは、「妄想銀行」の1冊だけ。昭和42年の刊行。
21世紀の今読み返しても、氏のショートショートの構成の妙には
脱帽する。内容がちっとも古くない。氏の未来を読む眼力の鋭さは、
文明が進歩するにつれて証明されていくだろう。

「住宅問題」を読む。家賃無料のアパートに住む、エヌ氏は家に帰ると
何だか疲れる。ドアを開けたとたん、部屋がお喋りを始めるのだ。
「お帰りなさいませ。プーポ印のワインはお買いになったでしょうか。」
壁を見ると、コマーシャルフィルムが流れる。部屋にいる限りコマーシャル
が途切れることがない。ある日、郊外に破格の一軒家を購入して、現地
を訪れると、そこには品種改良された小鳥が企業の名前をさえずったり、
花壇の花は企業のロゴマークの花びらをつけている・・・

「陰謀団ミダス」には、消費をあおるためなら、戦争以外何をしても
許されると大義を掲げて、政府や企業やマスコミがぐるになって、
予定された犯罪をしかける。小さな事件を煽って、消費者の不安心理を
煽り、消費を拡大させていくプロジェクトは、今の時代への痛烈な
批判がこめられている。

当時ですでに800編近いショートショートを書いたのに圧倒されるが、
内容が、いま読んでも違和感を感じないのは、感じさせないように
する氏の技法によるものだろう。人物や背景はできるだけ現実味を
与えないようにする。ゆえに、いつの時代にも、幅広い読者を獲得でき
るのだと思う。氏の作品が翻訳されていないのは残念。


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