雑感
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2001年11月01日(木) 脱獄に必要なもの

塩野七生の「サイレント・マイノリティ」に「ある脱獄記」という
文章がある。17世紀前のローマで、ある知識人が見に覚えのない罪で
投獄された。ピニャータという名前の、この知識人はいつか身の潔白が
証明されて出獄できる希望をもちながら、平行して脱獄の準備を始める。
彼は独房の中で足腰の鍛錬をし、机のうえに漆喰のかけらでチェンバロの
鍵盤を描き、知っている限りの曲を奏でて、頭の衰えを防いだ。そのうち
こっそりと小刀を手に入れ、独房の壁を少しづつ削り取っていった。
作業開始から一年後、彼は脱獄に成功した。

アレクサンドル・デュマの「モンテ・クリスト伯」は、主人公の
エドモン・ダンテスが謀られて監獄に入れられ、14年もの歳月を
かけて脱獄に成功する19世紀の長編小説である。(文庫で7巻くらいの
長さ。でも、いっきに読める)ダンテスも、囚人仲間の老人から学問
の薫陶を受け、知性をみがき、体力をつけ脱獄の機会をねらっていた。
ピニャータは希望を、生きる糧としたのに対し、ダンテスは強烈な
復讐心で独房生活を耐えた。

スティーブン・キング原作の映画「シャーシェンクの空」にも無実の銀行家
が投獄され、自由への強烈な欲求を糧として、着々と脱獄計画を立てて
いく。少しづつ壁にトンネルを掘る一方で、刑務所長の脱税に力を貸し
信用を得ていく。彼が脱獄に成功したのは、20年ほど経った頃だった。

脱獄に必要なものは、一に希望(自由への強烈な欲求や復讐心)、二に
体力、三に、知力、四に壁を削るグッズといったところだろうか。
それにつけても、いつか外にでてやるぞ!といった強烈な希望がとにかく
大事なのだろう。待っているうちに力尽きた人達はたくさんいるのだから。


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