雑感
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大学生の頃、京都のドイツ文化センターで、あるドイツ人の都市開発に ついての講演を聴いたことがあった。 その中で、講演者は「日本の町並みの混沌が羨ましい。家の向きなど好き 勝手に作れますね」と言ったことがずっと頭に残っていた。
その後、ウィーンに移り住んでこの意味するところが痛いほどよく わかった。 アパートを借りて部屋の間取りを変えるのにさえ、建築警察の許可がない と何もできない。何度も図面を引きなおして日参し、ようやく許可がおり るまでには1ヶ月くらいかかった。内部でさえ、そうだから、外側から 見える部分はもっと厳しい。外壁の色から窓わくの種類まで細かに申告 しなくてならないし、建物の入り口をどこにつけるかというのはさらに 厳しいはずだ。通りの番地にかかわってくるのだから。
ドイツもオーストリアも第二次世界大戦で空爆を受け、ウィーンの町も 相当破壊された。日本も壊滅状態だったが、昔ながらの建物とは決別して 国が一丸となって新しい入れ物を建設した。一方、ドイツ、オーストリア は昔あった建物を復元することに力を入れた。戦後10数年へて、国立 オペラ座を復元したときはウィーン市民は喜んだという。 旅行していて、ヨーロッパの町並みが揃っているのは、そういう努力を してきたし、頑として新しいものをいれないようにしているからである。 (ただ、ウィーンだけは、どんな奇抜な建物が建てられても、町の中に しっくりと溶けこんでいるのはおもしろい。)
以前、倉敷を訪ねたことがあった。 美観地区は昔ながらの町並みで、大原美術館前の橋から見える風景は 素晴らしい。 近くのアイビースクエアーも赤レンガの建物が美観地区の黒い瓦と白壁と 調和している。建築の規制が厳しいたまもので、関西有数の観光地区と なったのだろう。
ウィーンに観光客が訪れるのは、町並みが古く、100年くらい前に タイムスリップできるからだと思う。鹿鳴館時代の衣装をきて歩いても ぴたっとくる。大河ドラマの撮影現場みたいだ。 美観という秩序を守ることで、観光が発展し、お金が転がり込む。 混沌を選ぶことで、人の生活する自由が謳歌できる。はたして21世紀は どちらに軍配が上がるのだろうか。
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