雑感
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早く目が覚めた朝は純粋に美しいシンフォニーやピアノ曲を聴いて、 仕事に出かけるようにしています。いい日となるようにと願いを こめて、軽くてきれいなメロディの曲を選びます。
夜、運動して疲れた身体には何がいいかしらと思って、見つけたのが マリア・カラスアリア集でした。La Divina 3の冒頭は、大好きな 「アンドレア・シェニエ」(ジョルダーノ作)の「ママは死んだ」 で始まります。カラスの声は、主人公になりきって、もの哀しく、 聴いていくうちに、心の琴線に触れ、うっかり涙が落ちそうになります。 フランス革命で、家も親も失った貴族の娘が、革命軍の指導者に身体 を求められたときに歌ったアリアです。
このアリア、トム・ハンクス主演のエイズを題材にした映画 「フィラデルフィア」で主人公が、独白する場面で流れます。余命 幾ばくもない、主人公が、最後の力をふりしぼって、アリアの中の 神様がささやく言葉を繰り返します。 I am divine, I am life, I am the God....I will stay by your side and support you
マリア・カラスは20世紀で最高のソプラノ歌手でしょう。天性の芸術家 で、彼女を取りまく環境ではさまざまな軋轢がありましたが、彼女の歌唱 は、時に魂をゆさぶられます。決して美しい声ではありませんが、 主人公に成りきって、出し惜しみすることなく、舞台に全力投球しました。
それが、声帯の衰えを早め、オペラの女王であった期間は10年ほどだ ったのですが、オペラ史上屈指の歌手であったと、カラスの録音を聴いて 思うのです。ヘビー級の声が必要とされる、ワーグナーのブリュンヒルデ を歌いながら、軽くてよく転がる超技巧を要求される「ランメルモ―アの ルチア」役などを同時期に歌い常に全力を尽くしたので、引退を早めたと 言われています。
晩年は、富豪のオナシスとも別れ、1977年、パリで孤独の死を 迎えました。享年53歳。
オペラやクラシック音楽は、ときに沈みがちな気分に、頑張れと手を 差し伸べてくれます。その時々の気分に合った、「この一枚」という べきレパートリーを増やせば、日々の生活がほんのり色づくかも しれませんね。
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