雑感
DiaryINDEXpastwill


2002年02月05日(火) 漆の実のみのるとき

エアロバイクをこぎながら、藤沢周平の「漆の実のみのるとき」を
読んでいる。藤沢作品は、「蝉時雨」と「隠剣孤影抄」を読んだこと
があるが、穏やかな文体で、風景描写が素晴らしいので気に入っている。

舞台は、江戸時代後期の借金財政にあえぐ米沢藩を立て直そうと、藩主
とその執政たちが、自らも額に汗して藩政に取り組む物語である。
瀕死直前の藩なのに、改革をしぶる守旧派との争いが描かれている。
先祖代々のやり方を変えようとせず、現実を見ようとしない人たちは
いつの時代にもいる。
何だか今の、日本の政治を見ているようで、藤沢周平の悲痛な筆致が
感じられる。

オーストリアは2年前から、欧州があっと驚く極右政党と保守党が
連立政権を担当している。この政権、欧州からのひんしゅくを買って
いるけれど、よい部分もあって、政治の風通しがすこぶるよくなった。
30年間も、政権を担当してきた社会党の、不透明な部分がずいぶん
明らかになった。社会党政治家が、見入りのいいポジションを独占して
、労働組合のトップも特権にまみれていたことが暴露されたのは、政権
が替わったからに他ならない。

さらに、国営企業の民営化の促進を実行したことは特筆すべきだと思う。
国民に痛みをともなう政策を求める一方、公務員のリストラを断行した。
郵便貯金は民間の銀行に買収され、郵便局も不採算の田舎の支店は
閉鎖された。国有財産で売れそうなものを手放して、財政を健全化
しようと務めている。歳出もずいぶん削減し、財政赤字を0にしようと
苦心している。

日本の政治家は誰かの代理で、戦後ずっと生きてきた。アメリカの代理、
ソビエトの代理、中国の代理、労働者の代理、各種団体の代理・・・
利益調整が上手くいった時期は過ぎて、今はまさしく冬の時代。
何でもかんでも、先延ばしにしているのを見るにつけ、夜道の行灯の
火がいつかふっと消えて、パニックになるのではと、いやな予感がする。


Aqu |MAIL

My追加