雑感
DiaryINDEX|past|will
エアロバイクをこぎながら、藤沢周平の「漆の実のみのるとき」を 読んでいる。藤沢作品は、「蝉時雨」と「隠剣孤影抄」を読んだこと があるが、穏やかな文体で、風景描写が素晴らしいので気に入っている。
舞台は、江戸時代後期の借金財政にあえぐ米沢藩を立て直そうと、藩主 とその執政たちが、自らも額に汗して藩政に取り組む物語である。 瀕死直前の藩なのに、改革をしぶる守旧派との争いが描かれている。 先祖代々のやり方を変えようとせず、現実を見ようとしない人たちは いつの時代にもいる。 何だか今の、日本の政治を見ているようで、藤沢周平の悲痛な筆致が 感じられる。
オーストリアは2年前から、欧州があっと驚く極右政党と保守党が 連立政権を担当している。この政権、欧州からのひんしゅくを買って いるけれど、よい部分もあって、政治の風通しがすこぶるよくなった。 30年間も、政権を担当してきた社会党の、不透明な部分がずいぶん 明らかになった。社会党政治家が、見入りのいいポジションを独占して 、労働組合のトップも特権にまみれていたことが暴露されたのは、政権 が替わったからに他ならない。
さらに、国営企業の民営化の促進を実行したことは特筆すべきだと思う。 国民に痛みをともなう政策を求める一方、公務員のリストラを断行した。 郵便貯金は民間の銀行に買収され、郵便局も不採算の田舎の支店は 閉鎖された。国有財産で売れそうなものを手放して、財政を健全化 しようと務めている。歳出もずいぶん削減し、財政赤字を0にしようと 苦心している。
日本の政治家は誰かの代理で、戦後ずっと生きてきた。アメリカの代理、 ソビエトの代理、中国の代理、労働者の代理、各種団体の代理・・・ 利益調整が上手くいった時期は過ぎて、今はまさしく冬の時代。 何でもかんでも、先延ばしにしているのを見るにつけ、夜道の行灯の 火がいつかふっと消えて、パニックになるのではと、いやな予感がする。
|