雑感
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2002年04月01日(月) 平静と憎悪の間で

今年の復活祭連休は暖かい日になった。日中には初夏の陽気さえ
思わせる。
プラターのジョギングコースは直線で4.3キロ。道の両側はジョギング用
乗馬用、遊歩道に加えてひときわ広く自転車やスケート用の道路が
走っている。

祝日でお天気がよいせいか、人出も多い。黒いベルベットのベレー帽
をかぶり、黒いズボンに、白いシャツの男の子が嬉しそうに走りまわって
いる。お父さんは口ひげをはやし、黒ずくめの帽子と背広とズボン、
一見して伝統的なユダヤ人一家だとわかる。そこから、さほど離れていない
ところに、頭からスカーフをすっぽりと巻いた女性、子ども達、男達の
アラブ系やイスラム教徒の大家族がベンチに座ってくつろいでいる。

今年に入ってから、特に2月の下旬からのパレスチナとイスラエルの
紛争は日に日に激しさを増してきた。圧倒的な武力をもつイスラエル軍
に対して、パレスチナは自爆テロで対抗し、双方で毎日死傷者を出して
いる。中東情勢が伝えられるごとに、欧州からは何と近いところで
爆弾が炸裂しているんだろうと痛ましい。ウィーンからだと飛行機で
3時間ほどのところ。

イスラエルのシャロン首相はテロに対して徹底抗戦をすると宣言した。
去年のアメリカのアフガニスタンへのスローガンと同じ大義名分を
もって、パレスチナへの攻撃の手を強めていくのだろう。

今日はパリでシナゴーグが爆破された。明日はウィーンのシナゴーグが
狙われても不思議ではない。
今日出会った男の子も、あの伝統的な服装では、いつかとばっちりを
くうかもしれないと思うと、紛争の無益なことを思い知らされる。

ウィーンは大きな事件も少なく、街も小さく平和に見えるけれど、
アメリカやイスラエル、トルコの大使館、シナゴーグの前を通ると
そこだけ戒厳令のように、自動小銃を持った警察の特殊部隊が厳重な
警備をしている。

プラターでの平和な風景が各地に伝染すればいいなと、私はまた走り
出した。


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