雑感
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2006年01月26日(木) 下流社会とドラゴン桜

三浦展の「下流社会」を読む。
1990年代以前の中流意識を持っていた層が滑り落ちて、新たな
下流集団が出来上がった経緯を統計をふんだんに使って分析している。
著者の定義によれば、経済的な面だけでなく、何事に対しても意欲を
失いつつあるグループが特徴なのだという。
この層の年収は300万円以下といったところか。
統計グラフや数字が多用されていてちょっと読みづらいけれど、
著者の分析力はなかなか鋭い。
団塊ジュニア世代で、自分らしく、無理せずあるがままに生きようと
すればするほど経済的な下流社会に留まっていく傾向があるという。


著者は下流の下に、食べていくのにも事欠く層を、「下層」グループ
と名づけているが、東京と大阪の就学援助の割合が4人に1人と一昨年から
急増していることがニュースで報じられていて少なからぬショックを
受けた。義務教育の最前線では、下流どころかその下の貧困層が確実に
増え始めているようだ。
東京の足立区では就学援助率が40%を超えている。
授業で指定された学用品さえ持ってこない子供たちもいて、給食だけを
食べにくる子もいるという。
そういう子供たちに将来像を描ける元気はない。
欧州の移民の子供たちの状態に似ている。親がやっとこのこと食べていく
だけ稼ぐのがやっとで教育の機会もない。学校を出ても職に就けない
移民の子供たちは多い。

この本を読んでぐったりとしていたら、良質のまんがに出会った。
「ドラゴン桜」は年末に再放送されていたようだが、まんがの方が
おもしろい。偏差値30台から東大受験を目指す受験生と先生の
ドラマだ。やる気をなくしている中高生のカンフル剤になっている
のではないかな。
高校の数学ができずに悩んでいたとき、「数学は暗記だ、がんばれ!」って
言ってもらえたらずいぶん違った人生を歩んでいたかもしれない。
ドラゴン桜はどちらかと言うと大人がしっかり読むべきだろう。
受験テクニックは脇においても、社会の一員としての「生活の当たり前度」
―朝早く起きる、挨拶をするなど―を上げていくといくのが、戦略的な
合格へのテクニックだというのは本当にそうだと思った。

「下流社会」では、以前はひとくくりにされていた女性も、階層化が
顕著になっていることが述べられている。
上は年収1千万円以上のミリオネ―ゼ系から、お嬢系、OL、下のほうには
個性や自分らしさを追及するかまやつ系と階層化が進み、結婚相手も同じような
層で見つけることになる。
ドラゴン桜の桜木先生に言わせれば、「いい男つかまえたかったら、勉強しろ!」
ということなのだろ。

ついでに買った、2倍速、4倍速で聴くCDブックがいい。
サミュエル・スマイルズの「自助論」が刺激的だ。日本語も英語も
いささか古典調で文体も凝っているが、言いたいことはぐっと
心に突き刺さってくる。
いくら政治や社会が弱者を助けるための制度を整備しても、自分自身
が内側から何とかしようという気持ちが湧かなければ、その人を
本当に助けたことにはならない。
今の福祉の時代には、そぐわないかもしれないけれど、自分の人生は
自分で切り開いて行こうという気概をもたせてくれるいい論文だ。

ただ、とことん生きる勇気を失って、教会の配給する食事を命綱に
何もせずぼんやりと座り込んでいるホームレスを見るのはつらい。
机上の論文と現実の光景には大きな隔たりがあるなと感じた。


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