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| 2003年05月13日(火) |
Give your baby doll leave to go./Words of Liar |
- この赤ちゃん人形、すごくかわいい。 ずっと一緒。一緒にいてね。。。
- 僕、その人形で遊びたいなあ。
- 私も!
- 私も!
- いやよ。これは、私の人形だもん!
- みんなで一緒に遊びなさい。 お人形さんもみんなと遊びたがってるわ。
- でも。。。あっ!
- わーい。みんなで人形で遊ぼうぜー。
- ねえ、みんながお人形もってっちゃった。。。 あれは私だけの赤ちゃんなのに。。。
- ううん。お人形は、みんなにかわいがってもらいたいのよ。
- 違うわ。あれは、私がおこづかいをためて買った 私だけのお人形なのよ。
- そんなことは、関係ないの。
- どうして?
- あの人形は、おもちゃ屋さんの棚にあったものを 買ったのでしょう?
- うん。
- あの人形が棚にいたのは、誰でもいいから 手にとってほしかったからなの。 あなただけに見てほしかったからじゃないのよ。
- でも。。。
- 工場で作られて、店の人がおいたから たまたまあの棚にいた。それだけなの。
- でも、あの赤ちゃん人形なら、 私だけのお人形になってくれるんじゃないかって思えた。。。
- 本当にあなたのためだけに作られた赤ちゃん人形なら、 あなた以外の子が言葉をかけても 目を開かないでじっと目を閉じてるはずよ。 でもあの人形は、他の子といても目を開くし、 あやしたらうれしそうに笑ってるじゃない?
- ……私と一緒の時しかそんなことしてほしくないのに。。。
- 赤ちゃん人形は、たくさんの愛を望んでいるのよ。 回りもそれがわかるから、 あなたがどんなに手元においておきたくても、 そこにいるだけでみんなが欲しくなってしまうのよ。
箱に閉じ込めても、あの愛くるしい瞳と かわいらしい手で誰かを求めつづけるの。 そのうちあのかわいい足で、 誰かのもとによちよち歩いていってしまうわ。
どうしても手元においていきたいなら、 あの目をガムテープで閉じて、四肢をもがなければ いけなくなるわ。
- ……そんなのいや。
- そうしないと人形はどこかへいってしまうわよ。 でも四肢をもいでしまえば、みんな気持ち悪がって 手にとろうなんて思わなくなるわ。
- ……。
- 口もふさがないと、あなた以外の誰かの名前を 呼ぶかもしれないわね。
- それじゃ、ミルクをあげられないわ。
- どうする? 人形の形のままで、みんなと一緒に あのお人形で遊ぶか、手足をもいで自分だけのところに おいておくか。あのお人形は、どっちが寂しくないと思う?
- どっちもいや。。。
- じゃあ、あのお人形はみんなにあげてしまいなさい。
- ……私だけの人形は、どこかにある?
- ……たぶんないわ。どこにもね。 でも大人になれば、ずっと自分だけの人形じゃなくても、 たまに自分のところに戻ってくる人形で我慢できるようになるわ。
- ……そんな人形なら、いらないわ。
- でも、我慢できるようにならないと いくつお人形を手にいれても、ずっと同じことを繰り返すわ。
- 我慢なんてしない。そんな人形しかないなら、 人形なんてもういらない。
手をひかれてそこを去るときに、 一度だけみんなと遊んでいる人形のほうを振り返った。 みんなに抱かれているあの赤ちゃん人形が、 笑いながらこっちを見ているような気がした。
でも、内心ではほっとしていた。 あの人形から離れられなくなる日がくるのを、 心のどこかで恐れていたから。
できるだけ長く、きれいなままで、 誰も傷つけないでいてくれるなら、 誰もあの人形を一人にしないでいてくれるなら、 手元になくてもかまわない。
たとえあの人形の視線の先に 最初から私がいなかったとしても、 あの人形を見つけて手放すまでの間は 幸せだったことにはかわりはない。
その時間が心に刻まれている限り、 あの赤ちゃん人形にもう触れることができなくても 大丈夫なような気がした。
俺は愛の歌を歌うけど
きみ一人のために歌ってるわけじゃない
同情する歌も歌うけど
誰か特定の人がいるわけじゃない
今日会う予定になっているジェーンにだって
「愛してる」なんていったことはないし
母親が死んだって言うマイクには
電話すらかけちゃいない
あまりにもたくさんの歌を歌いすぎて
自分の気持ちがそこになくても平気になった
あまりにもたくさんの言葉を吐きすぎて
何が本当なのか自分でもわからなくなった
こんな俺を嘘つきと言って罵倒するかい?
でも、きみが何を言ったところで
しょせんそれはただの言葉でしかない
俺が俺ということにはかわりはない
嘘にしか思えないならそう思えばいい
本当だと思えるなら信じればいい
どちらにしろ
本当のところは誰にもわからない
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