ふと気が付くと、

ずっとあってほしいと思っていたものと

ずっと縛られていないといけないと思っていたものに

ひびが入っていた。


壁に固定されていた鎖を軽くひっぱったら

あっさりと抜けた。


何の警報もならない。

何が起こったのかわからないけど、

外に出ていいようだ。


こわれやすいものがいくつか。

もって出ることができるのは一つだけ。


どれも壊したくない。


仕方ないから、

それぞれの破片を少しずつポケットにしまって、

出口に向かおうと思う。


最上階にいたから、あと何段降りれば

地上につけるのかわからないし、

目や脚もまだ歩くということになれていない。

だから、少しずつ降りていこうと思う。


歓迎してくれる人もいないのに

思い描いたものは存在しないのに

外に出てどうするのか、と何度も声がする。


行くあてがあっても、

ずっとそこにいられないことくらいわかっている。

でも今は、そんな不安よりも、

疲れや暑さと空腹で頭が回らない。

外に出たらのたれ死にするしかないのだとしても、

場所を自分で選べるのであれば今はそれで満足だ。


今は何も考えずに、

とりあえず前に進むことだけを考えようと思う。

考えても考えなくても

あまり幸せになれないのなら、

余計なことは考えないほうがいいだろう。


四角い窓からしかずっと見てこなかったから、

地上に降りたら、空が見たいなあ。


本当の空は、あの窓何枚分なんだろうか？


BGM : Gathering sky - Pat Metheny